12 過去編
私とコンラートは結婚したんだけど、その前にフレデリックから妨害をされた。
王太子の権力を使って、王命で私と結婚しようとしたり、辺境と王国の取引での優遇措置を止めるように言ったり、私の『ドラゴンブレイカー』は国で保護すべきだと言ったり、私とコンラートの婚姻前の既成事実を問題化したり。
ただ、私の人となりを知られていくうちに、『暴れ馬』を王妃には絶対にさせられないという結論に達したらしく、コンラートが結婚したいならコンラートに押し付けようという事になったらしい。
『暴れ馬』ってなんでよっ!
私はハラハラして推移を見守っていたのに『暴れ馬』と呼ばれるし、コンラートにはこうなると思っていたと言われる。
「ちょっと待ってよ! 『暴れ馬』って呼ばれると思っていたの!?」
「的確な表現だよなぁ」
私はコンラートを蹴った。
「そういうところが可愛いよな」
コンラートに抱きしめられたけど……私が『暴れ馬』なら、コンラートはなんなのよ!
「王太子殿下と公爵様に取り合われるなんていいなぁ」
「私も『ドラゴンブレイカー』の練習しておけば良かった。ドラゴンが出るなんって思ってないし、人に向けて使うなんて危ないからやめたのよね」
「妹は常識があるんだな」
コンラートが感心してる。
「マティアス様も背後から急に攻撃されて驚いていたものね」
「……背後からだったのか……避けたマティアスすげーな」
コンラートは姉妹たちとも仲良くなったけど、ソフィーは風邪が治り切らずに、部屋にこもっていた。
結婚式をしたかったけど、フレデリックの妨害も続きそうだし、ソフィーには出席して貰えないだろうから、やらない事にした。
こうして、コンラートに出会って三ヶ月目で結婚して、私は王都の公爵家へ嫁入りした。
なのに——
その日から、コンラートは公爵家へ戻らずに、女の家を転々と渡り歩くようになった。
私が公爵家についた最初の日に、フレデリックに王宮に呼ばれて帰って来なかったコンラート。
それは、またフレデリックの妨害だと思った。
けれど、二日目も、三日目も、四日目も帰って来なかった——。
五日目に使用人たちが話していた。
「コンラート様は、今日は伯爵家の令嬢のところらしいわよ」
「昨日は侯爵家の令嬢のところだったんでしょう?」
はい? フレデリックのところじゃないの……?
は……っ!
どういう事よ、コンラート!
私が『暴れ馬』だって言ったのはあなたでしょう?
ちょっと、王都の中心で『ドラゴンブレイカー』をぶつけてあげるわ!
「奥様っ!! お待ちください!」
公爵家の執事やメイド、使用人たちがズラッと並んで床に頭を付けていた。
「クララ奥様の事はコンラート様から聞いております。すぐに手が出る『暴れ馬』のような方で、浮気などすればどんな事態になるのか、考えが及ばない旦那様ではありません。きっと何か事情があるのです。どうか、コンラート様が帰って来られて事情を説明するまでお待ちください!」
コンラートの為に必死に私を止める使用人たちを、薙ぎ倒して出て行くわけにはいかない。
そして、コンラートは一ヶ月後に帰って来た。
「コンラート!」
私は怒っていた事も忘れて、コンラートに抱きついた。
「会いたかった……」
「俺も会いたかった。愛してるよ、クララ」
コンラートが私にキスした。
コンラートが帰って来て、これでもう安心だと思ったのに。
「出て行った!? コンラートが!?」
私に何も言わずに、数分だけ戻って出て行ってしまう。
それから、一か月が経ち、二か月が経ち——。
私は離婚届を置いて、公爵家を出て行った。
◇
僕は彼女を救いたいだけなのに、『呪い』に全ての手を封じられてしまった。
——だから、もうこの手しかなかった。
これをすれば『呪い』は消滅する。
せめて、王都で新婚生活に胸を踊らされてるコンラートには、伝えておこうと思った。
「——なんでっ! なんでそんなことをしたんだ、フレデリックっ!?」
親友の悲痛な声が僕の部屋に響いた。
「彼女を救う為だ——!」
僕だって、親友の愛する人を消滅させるなんてしたくない。
でも、そうしなければ本物の彼女が死んでしまう……!
宴の夜に出会った、きらめく涙を流す、儚げなクララ——。
『——これで、呪いは永遠になる——!』
永遠に『呪い』に身体を乗っ取られてしまった彼女を、僕はどうやっても助けたい!
「——勝手なこと言うなっ!! 今のクララが『呪い』でも、俺が好きになった人だ!! 絶対に消滅させたりしない!!」
コンラートが僕の部屋を全速力で走って出て行く。
「絶対にクララは俺が守る——!!」
……それは、僕が守りたい『クララ』じゃないんだ、コンラート——。




