11 過去編
「へ?」
お父様の辺境伯に呼ばれて私は間抜けな声をあげていた。
だって、フレデリック王太子が私を娶りたいって?
何かの間違いじゃないの?
「いやー、俺も「この娘でいいのか!? 早まるな!! 国を滅ぼす気か!!?」と本気で止めたのだが、どうしてもと言われてな……いや、絶対に止めておいた方がいいよなぁ」
フレデリック様が私のことを……?
「ちょっと待って!」
私とお父様が話しているところに、コンラートが入ってくる。
「辺境伯、俺とクララは……」
私はコンラートの耳を引っ張ってこっちを向かせた。
「誰が、私のせいで疲れてるって?」
フレデリック王太子が部屋から出てこない時に、『ドラゴンブレイカー』をコンラートに打とうとするような、私のせいで疲れてるんだとかなんとか言ってた!
「全然違うじゃない! 私と結婚したいって!」
「……どう考えたって、お前みたいなのと冒険させられたら嫌だろう」
「じゃあ、コンラート、あなたはなんのよ!」
「ただのもの好きだな」
コンラートが私を抱きしめた。
ってお父様の前なんだけど!
ドカっと、コンラートを蹴り飛ばした。
「痛いっ!?」
コンラートが声を上げるけど、
「辺境伯! 見ての通り、俺とクララは愛し合っています。すでに既成事実もあるので、俺の方をクララと結婚させて下さい!」
「は? 今のでどこが愛し合ってるって言うのよ」
既成事実はあるけど。
「クララは俺に甘えっぱなしだろう」
「甘えてない!」
お父様が口を挟む。
「コンラート公爵がもの好きだと、厄介払いができて助かるんだが、既成事実があってもフレデリック王太子は構わないと言うんだ……」
「は?」
コンラートが真顔になる。
「なんだ……フレデリックの奴。クララの事なんて興味ないどころか、嫌がってたくらいだろう……なんで急に……」
「……フレデリック様が私の事を好きなら、フレデリック様と結婚するわ! 王太子様だもの!」
「は!? 何言って……」
私はフレデリック王太子の元へ向かった。
フレデリック王太子が廊下の角で物思いに耽っていた。
「フレデリック様……! お父様から聞きました!」
私が近づくとフレデリック様が鋭い視線で私を睨んだ。
え……!
「……クララ、来てくれて嬉しいよ。僕が辺境伯に言った事は本当だから、僕の事はフレデリックと呼んでくれ」
「……はい! フレデリック!」
一瞬見えた鋭い視線は見間違い?
いつもの穏やかなフレデリックだった。
「それで、僕が君を娶る件だけど」
「もち……」
もちろん、お受けします! って言おうと思ったのに——
「クララ……!」
コンラートが追いついて来ていた。
振り向いた私の背中から、コンラートが私にキスした。
「フレデリック……! クララには興味ないはずだろう……!」
コンラートの問いにフレデリックが、ふっと笑う。
「それは君の方だよ、コンラート」
「……なんだそれ……ずっと俺たちを見てたら、俺がクララに興味しかないことは分かるだろう……」
フレデリックは笑っている。
「昨日の夜のクララにもか?」
ピクッとコンラートの身体が反応した。
そのままコンラートは私の腕を引っ張ってフレデリックに前から離れた。
「なんで、フレデリックの方に行ったんだ」
コンラートが私を壁に押し付けて、キスをする。
「ほら、クララはすぐこんな顔するくらい俺が好きだろう?」
「……でも、コンラートは私にプロポーズしてない」
「は? しただろう……」
「お父様に言っただけよ」
「ああ……」
思い当たる節があったらしい、けど、
「いや、だったらフレデリックもお前に直接はプロポーズしてないだろう」
「フレデリックは良いの。コンラートだけダメ!」
「なんだそれは!?」
「フレデリックと結婚するなら家同士のことだけど、コンラートとは違うもの。最悪だけど、私はコンラートが好きみたいなの」
コンラートが驚いている
「なんだそれは……」
けれど、嬉しそう。
「ずっと言ってるだろう? 俺はお前の事が大好きだって、それで、愛してる。……だから、結婚してくれ、クララ——」
「——はい」
私は王太子のフレデリックより、ずっとコンラートの方が大好きで、選んでる。
こうして、私とコンラートは結婚した。




