第三話:断頭台の雨と、震え上がる3人の魔将軍
【前書き】
お読みいただきありがとうございます!
今回は、捕らえられたマラコルの公開処刑、そしてそれを見た残りの将軍たちの反応を描きます。
国家の裏切り者に下される、総統ラインハルトの冷酷なる鉄槌をご覧ください。
ダーシアの中央広場に、巨大な黒い断頭台がそびえ立っていた。
冷たい雨が降りしきる中、広場を埋め尽くした何万もの魔族の群衆は、息を呑んでその光景を見つめている。
昨日まで、この国を絶対的な武力と恐怖で支配していた最高魔将軍の一人――マラコルが、両腕を後ろで縛られ、泥まみれの姿で引きずり出されてきたからだ。
「放せ! 放せッ! 私は最高将軍だぞ! 貴様ら下級兵士どもが、私に触れるなど許されん!」
かつての威厳は微塵もなく、マラコルは狂ったように叫び、暴れていた。
だが、彼を挟み込む『黒い親衛隊』の兵士たちは、仮面のような無表情のまま、彼を断頭台の台座へと押し付けた。
演壇の最上段から、その様子を見下ろす男がいた。
漆黒の総統服に身を包み、銀のドクロが刻まれた帽子を深く被った男――ラインハルトだ。
彼がゆっくりと手を上げると、広場を包んでいたざわめきが、一瞬で静まり返った。
「ダークサイトの同胞たちよ」
ラインハルトの声が、魔力拡声によって首都の空を震わせる。
「ここにいる男は、我らの飢えを救うべき食糧を敵国に売り飛ばし、前線の兵士たちの命をゾンビとして使い捨てた。これ以上の大罪が、この世にあるだろうか?」
群衆の中から、「人殺し!」「売国奴!」という怒号が沸き起こる。それはやがて、広場全体を揺るがす巨大な地鳴りのような叫びとなった。
「命乞いは受け付けん。法律に基づき、国家反逆罪の判決を執行する」
ラインハルトが冷酷に右手を振り下ろした。
「執行せよ」
――シュルルル、ストンッ。
鈍い音と共に、巨大な刃が落ちた。
かつて国を裏切った大将軍の首が、泥の中に転がった。
その瞬間、広場には割れんばかりの歓声が響き渡った。絶望に沈んでいた民衆が、初めて「正義」が下されたのを目撃したのだ。
ラインハルトは群衆の歓声を浴びながら、心の中で冷静に呟いた。
(これで、一人。だが、本当の戦いはここからだ……)
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同じ頃、宮殿の秘密会議室では、残された3人の魔将軍が冷や汗を流していた。
大将軍ベリアル、アザゼラ、そして総参謀長ゴルゴロス。
室内には、彼らが密かに集めた私設軍隊の報告書が散らばっている。
「マラコルが……あの男が、本当に処刑されただと……!?」
ベリアルが机を激しく叩いた。その顔は恐怖で青ざめている。
「ラインハルトの奴、本気だ。我々を傀儡にするどころか、一人残らず根絶やしにする気だぞ!」
魔導生物を操る女性将軍アザゼラが、震える声で言った。
「落ち着け」
総参謀長ゴルゴロスが、鋭い眼光で二人を睨みつけた。
「奴の手元にいるのは、前線の生き残り3 000人に過ぎん。対して、我らの私設軍隊を合わせれば数万人規模になる。力で押し潰せば、あのような若造、一瞬で灰にできる」
「しかし、ゴルゴロス。民衆は完全にラインハルトを『総統』と呼び、熱狂している。今、不用意に動けば、首都全体が暴動に包まれるぞ」
3人の将軍たちは、自分たちが作り出した「怪物」の大きさに、ようやく気付き始めていた。
泥の底から這い上がってきた若き復讐者は、すでに国の「法」と「民心」の双方を握ってしまっていたのだ。
「フン、ならば搦手で行く。人類の『七国同盟』の使節に連絡を取れ。ラインハルトが条約を破棄しようとしていると伝え、彼らの軍勢を呼び込む。国がどうなろうと知ったことか。あの生意気な若造を殺せるならな……」
ゴルゴロスは醜い笑みを浮かべ、闇の中に魔導通信の魔法を放った。
彼らは知らなかった。
その通信内容が、すでにラインハルトの親衛隊の「魔導盗聴班」によって、完全に傍受されているということを。
宮殿のバルコニーに立つラインハルトは、夜の闇を見つめながら静かに笑った。
「外敵と手を組んで、俺を排除するつもりか。……いいだろう、まとめて大粛清の餌食にしてやる」
【後書き】
第三話をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに一人目の魔将軍が処刑され、物語は「内戦」そして「外敵との戦い」へと加速していきます。
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