↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレークインたちの外交儀礼――素行不良の大尉が、妖精と女騎士に挟まれ、兵隊を率いて「ヒャッハー」したら……なぜか魔界との戦争が遠のいた  作者: Fughse
第12章 逆立ちカバを狙い撃ちで、ざまあw

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/108

第12章 逆立ちカバを狙い撃ちで、ざまあw 02/11

挿絵(By みてみん)

 武装蜂起した〝リーベルラント解放戦線〟は、帝国海軍が水上封鎖や臨検といった――軍事行動がとれない情勢を利用した。

 彼らは迅速な果断速攻に打って出た。

 まず、寺院や民間の輸送船や旅客船を拿捕。

 次は、大量に徴発した地元の漁船を盾に――帝国領に強襲上陸を敢行したのだ。

 現地の帝国軍守備兵力は、魔界連邦との講和交渉が始まったことで――大幅に戦力が縮小されており脆弱だった。

 彼らは敗走を余儀なくされ、帝国軍は大河の後方――10マイル地点まで後退したところで、再編成を行い、新たな防御線を構築中だ。

 統合参謀本部は、反攻作戦を練り直すことを強いられる。

 リーベルラントが魔界連邦から輸入したと見られる、新型の自走式対空砲が強力で――その対策に苦慮しているらしい。

 シニアが運転する、軍用車の助手席にいたミリアムが――このように現状をまとめた。

 後ろの席にいるヨハンは、例によって持ち込んだ――私物の真っ赤なラジカセを車両の外部入力端子に繋いでいる。


   バンジョーを抱っこして♪

   アラバマからやってきた♪

   ルイジアナへまっしぐら♪

   可愛い子ちゃんを探しに♪


   初日は雨に降られてても♪

   晴れたら空気が乾いてて♪

   凍え死にそうになっても♪

   可愛い娘は泣かないでよ♪


   おおー、スザンナちゃん♪

   泣いたりなんかしないで♪

   バンジョーを抱っこして♪

   アラバマからやってきた♪


 ハーレークイン小隊は、敵の射程外で飛竜から降りて――軍用車両とトラックに分乗した。

 陸路で味方の前線にたどり着いた。

 第26連隊が駐屯する前線基地は、戦時下の最前線とは思えないほど規律が緩みきっている。

「たかが小隊で援軍だとさ」

「おめでてぇ奴らだ――〝ハーレークイン〟だってよ。ってことは、あのお嬢ちゃんが白粉を塗ったくって、裸踊りでもすんのかね?」

「おい、妖精まで連れてんぞ――これじゃ軍隊じゃなくて、サーカスだ」

「本職は〝見世物小屋〟なんじゃねえの」

「……っ!」

 歩哨に立っている兵たちの嘲笑に、ミリアムが気色ばんだ。

「ちょい待ち」

 彼女が綱紀粛正に出ようと、前に進んだところを――ヨハンが止めた。

 2人の前には、既にシニアが立っている。

「口の利き方に気をつけろ! 伍長! 友軍の上官に対して礼節を欠くとは――貴様は、それでも栄えある帝国軍人か!」

 小隊軍曹が、これまで聞いたことがないほどの怒声を放った。

「それとも貴官らは、帝国陸軍最先任上級曹長の〝指導〟を受けたいか! 遠慮なく申し出ろ!」

 そう言った彼は、歩哨の襟首を掴んで――腕力だけで野戦装備を身に着けた兵士の足を地面から浮かせた。

 もう1人の方は、ローガンがすでに制圧していた。

「他のやつならいざしらず、シニアに舐めた口を利くとか――なーんか、ぴえんな予感がするなあ」

 ハーレークイン小隊は、無事――前線基地〝ヴィクトリー〟に到着した。

 小隊長は部下たちに大休止を指示して、シニアに指揮権を移譲した。

 彼はミリアムを伴って、基地司令に挨拶へ出向く。

 その直前になって命令を追加する。

「ローガンとメイソンに辺りを探らせといてくれ」

「お任せを――大尉」

「頼む」

「大尉! どうされましたかっ!?」

 ミリアムに呼ばれた彼は大股で歩き出した。


「ようこそ当基地に――と言いたいところだが、貴官らが着任することは通達が来ていない。目的を話せ、大尉」

 ヴィクトリー基地の責任者、コールマン少佐は言った。

 大隊の指揮官を務めるべき少佐が、なぜ連隊基地の指揮を執っているのか。

 どうやら、それにも〝ままならない〟事情があるようだ。

 だが、この場ではその話は出なかった。

「こちらをご確認ください――少佐」

 ヨハンは、背嚢から蝋を塗って防水処理した封筒に収めてある――統合参謀本部からの命令書を取り出した。

 ミリアムが丁寧な口調と発音で言う。

「統合参謀本部秘匿令第558―979―460号です――我ら第99連隊直属第1小隊は、これより深敵地に対するLRPを敢行いたします。つきましては、ヴィクトリー基地の司令であらせられる、コールマン少佐殿に、ご協力をいただければ幸いであります。また、情報と物資の提供をお願い申しあげます」

 文書には統合参謀本部議長、ドレイク元帥の署名がある。

 コールマン少佐はコーヒーを口に運びながら言う。

「……うーん、つまり貴官らは〝援軍〟ではない、と? いったい、統合参謀本部は何を考えておるのか。それに貴官らは、我々に協力を求めるが、それは公平性を欠く行為だとは思わないかね?」

「……は?」

「えぇ……?」

 ヨハンとミリアムは揃って瞬いた。

 こういった場合〝うちの仕事の邪魔をするな〟と釘を刺されることはある。

 それでも、別働隊の友軍に見返りを求めるようなことはしない。

 あるとしても、せいぜい賄賂を要求されるくらいだ。

「とにかく、小官では判断しかねる部分もある――軍議を要する事案だ。伝令、至急に士官と先任の下士官たちを召集せよ。スミス大尉と部下の諸君には、決定事項を追って通達するため、待機を命じるものとする。以上だ、さがりたまえ」

 なによりヨハンとミリアムを驚かせたのは、この指示だ。

 コールマン少佐の言葉を翻訳すると、

〝自分では決められないから部下の多数決をとる〟となった。

 およそ将校、指揮官とは思えない――情けない通達だ。

 嫌がらせにしても稚拙すぎる。

 こんな命令を受けたのは、ヨハンも初めてである。

「いやいやいや、お待ちを少佐――俺たち、なにか少佐殿のご不興を買いましたか? もしもそうであれば、謝罪をいたします。部下の不始末がありましたら、厳重に注意をし、今後は2度と起きないようにしますので」

「……? 何を言ってるのか、大尉は――これは貴官らの問題ではなく、あくまで当基地の規律の話である。レイノルズ中尉、彼らを案内せよ。完了次第、可及的速やかにこちらに戻って来るように」


「こちらへ――仮の幕営をご用意いたしました、大尉殿」

 ヨハンたちはヴィクトリー基地の西端に用意された幕営に移った。

 士官の2人には、それぞれ個人用の幕舎が割り当てられ――ソフィアはミリアムの幕舎に間借りする。

 下士官である兵たちは、大型の幕営を使うのだが――明らかに数が足りていない。

 そのことを尋ねると、案内役のレイノルズ中尉は、

「少佐からの追加のご命令です――ハーレークイン小隊は8名を選抜し、別命あるまで、西側の歩哨に立つようにとの由であります」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。