↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレークインたちの外交儀礼――素行不良の大尉が、妖精と女騎士に挟まれ、兵隊を率いて「ヒャッハー」したら……なぜか魔界との戦争が遠のいた  作者: Fughse
第10章 ハイジャックのチケットは片道切符

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/111

第10章 ハイジャックのチケットは片道切符 03/08

挿絵(By みてみん)

 今までにも何度か、こうした場面はあった。

 ソフィアがいなければ、このハーレークイン小隊は――即座に機能不全に陥るだろう。

 ヨハンは彼女を軍にスカウトしたときに、あるいは――ここまで見越していたのか。

 初対面のときに口では、

〝仕事は通信・分析担当の特務と、貴重なパンチラ要員だ♪〟と言っていたが。

 ミリアムとシニアから通信が入る。

《シエラ・ナイナーへ――ブラボー・チーム、準備よし。〝ゾディアック〟で待機中》

《チャーリー、同じく》

 この両チームは、ゴムボートで闇に紛れ――港湾を迂回して接近する予定だ。

《エコーは〝ローマ〟通過》

 ローガンたちは順調のようだ。

 それを合図に、

「シエラ・ナイナーより、ブラボーとチャーリーへ――移動開始せよ。目標〝ワシントン〟へ」とソフィアは指示した。

 そして間もなく、

《エコーは〝ワシントン〟到着――これより〝階段〟の工事にかかります》

《ブラボー、及びチャーリーは〝方舟〟まで残り半海里――速度は13ノット》

「エコー・チーム、急いで――残り2分」

《シエラ・ナイナーへ――エコーだ。2つめを設置している。確保まで90秒》

《シエラ・ナイナーへ――ブラボーとチャーリーは、到着まで500ヤード》

「全隊へ――残り1分」

 海の上を翔んでいる、ソフィアの耳にエンジン音が聞こえてきた。

 2艘の黒い小舟が、航跡をともなって――エリザベス号の船尾に向かう。

 当直の見張りには、既に目視で見つかっているだろう。

 もはや後戻りはできない。

《エコー、設置完了》

 報告を聞いたソフィアは、

「ブラボーとチャーリーへ――こちら、シエラ・ナイナー。接舷許可」と言った。

 2艘のゴムボートが、エリザベス号の船尾から船体の腹に沿って――所定の場所に近づく。

 目印として、ロープラダーに結びつけた――青く発光する蛍棒を目指して。

 2つの縄梯子を伝って、8人ずつに分かれたブラボーとチャーリー・チームが登ってくる。

 エリザベス号の第5デッキで待つ、ローガンのエコー・チームとミリアムとシニアたちが合流した。

 彼らはウェットスーツを着込んだ上から、飛竜の搭乗員が着用する――難燃繊維で仕立てられた、オリーブ色のツナギを纏う。

 これは、潜水服の生地が水に濡れると光沢を帯びて反射する――その欠点を補う、海軍の陸戦隊から生まれた戦訓を元にしている。

 また、首から胸の下には極小のガスボンベと直結した――緊急用のライフプリザーバーを、装具と合わせて身につける。

 頭に被るのは、黒い樹脂製のヘルメットで――銃撃への防具ではなく、転倒や事故の負傷予防のためだ。

 武装は全員、銃身を短くして先端にサイレンサーを装着した――改良型の自動小銃と拳銃を携行する。

 その他には、閃光音響手榴弾――少量の爆薬、破壊用の工具など。

 ローガンたちが作業服の上から、武器や装具を身につける間――第5デッキの右舷で前後を、ミリアムとシニアたちが守る。

《移動開始――〝サンティアゴ〟へ》

 準備が出来たらしく、ミリアムが言った。

 第5デッキを素早く移動し、所定の通路で彼らは船内に入る。

 ここからは、もう海上を翔ぶソフィアの位置からは目視できなくなる。

 仲間たちの連携に任せるしかない。

「全隊へ――シエラ・ナイナーは船尾側に移動。アルファ・チームの誘導準備にかかる」

《了解》

 船首側のエレベータが、次のチェックポイントだ。

《シエラ・ナイナーへ――こちら、ブラボーのセブン。間もなく〝ウプスラ〟到着》

 ミリアムが報告した。

「気をつけて――怪我しちゃ駄目」

《シエラ・ナイナーへ。エコーはこれより、下に降りる――〝ヴァレンシア〟へ》

「ん」



 ミリアムたちは船内を進む。

 先頭の1人が立ち止まり、曲がり角を押さえた。

 その横を通り過ぎるときに、

「最後尾だ」と先頭だった仲間の肩を叩いて、声をかけた。

 チームの全員が渡ったことを知らせるためだ。

 曲がり角や、死角を補い合うたびに――先頭が援護し、2番手が先頭に繰り上がる。

 そして、先頭で角を警戒していた人員が〝最後尾〟となる。

 よく訓練された特殊部隊は、全隊がひとつの生き物のように――有機的に機動する。

「コンタクト!」

 ブラボー・チームで先頭を歩く、部下が声を張った。

「撃ってきた――敵だ!」

 事前に定めた規定に則って、ミリアムは反撃を命じる。

「交戦を許可――応戦せよ!」

 エリザベス号は、世界最大の巨大旅客船だ。

 2千人の乗客、1000人の乗員を守るために――常駐している警備員は、武装が認められている。

 彼らは海運会社が業務委託する、民間の警備会社ではあるが――実態は実質的な傭兵派遣会社としても知られる。

 社員のほとんどは元軍人で、こうした警備業務以外の業務も担う。

 例えば、ギルドが〝看板〟にしたい――英雄的な冒険者に〝偉業〟を成さしめるための、露払いなど。

 また、魔界連邦との世界大戦中には――中立国である中洲の都市国家群に対し、帝国軍が直接的な軍事行動を封じられた際の〝切り札〟として運用された。

「チャーリーへ――こちら、ブラボーのセブンだ。第9デッキ〝トリポリ〟の手前で、敵と交戦中」

 ミリアムたちは艦橋を目指して移動中だった。

 そこで、吹き抜け階段に出たところで待ち伏せに遭った。

 かろうじて遮蔽物に身を隠したものの、敵が2箇所に設置した軽機関銃を間断なく掃射してくる。

 そのため身動きがとれなくなった。

 ブラボー・チームは、ミリアムを含めて8人いる。

 この場に数人残し、左舷側から迂回して敵の背後に周り込めるはずだ。

 後ろをとれれば〝敵〟を降伏させられるかもしれない。

 今、この船内で戦っている相手は立場こそ違えど――同胞だ。

 できれば――撃ちたくない。

 ミリアムの逡巡は短い間ではあった。

 しかし、その間にも事態は進行する。

 状況を打破するため、シニアが言う。

《チャーリーは右舷側を移動中――少尉。しばし、猶予を。横槍を突きます》

 これに対して別働隊として、第1デッキまで降りたはずの――ローガンが通信に割り込んでくる。

《ブレイク、ブレイク、ブレイク、ブラボーとチャーリーへ――エコー・チームです。そちらの照明を切ります、合図をください》

《エコー・チームへ――チャーリーのファイブだ。了解した――待機せよ》

「待て、上級曹長……!」

《ブリーチ・チャージ、セット! エコー! 照明を切れ!》

 床に書類を満載した箱を落としたような、短い音がして――ブレーカーが落ち、照明が切れた。

「……」

 闇が訪れた。

 直後に鋭い起爆装置の破裂音と、扉を爆破する鈍い轟音が立て続けに響く。

《ブリーチング! ブリーチング!》

 右舷側から、チャーリー・チームを率いるシニアたちが突入した。

 彼らは敵が闇に襲われたところを、自動小銃に固定した――フラッシュライトの閃光を目眩ましにして撃つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。