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ハーレークインたちの外交儀礼【隔日夜更新】  作者: Fughse
第6章 猫と風が吹けば桶屋がもうかる真相

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05

挿絵(By みてみん)

 妖精の少女は、

「……」無言で指先に光を集める。

 この場でヨハンの戦闘力を傷つけずに奪い取る――そのための即席の連携だ。

 武装を解除すれば、あるいは勝機が見えてくる。

「行けるか? エインセル准尉」

「ん」

 ミリアムが訊くと、ソフィアは親指を立てた。

 とはいえ油断は禁物だ。

 彼の格闘技は軍隊式を煮詰めたように、徹底して手段を選ばない。

 矛盾の寓話を格闘技教官に聞かされたとき、

〝盾で殴ればいい〟と反論して、懲罰で幼年学校の敷地を10周――20マイル走らされた逸話が、幼年学校では今でも語り継がれているほどだ。

 3人は向き合っている。

「せっかく覚悟を決めたのに、攻めてこねえのか――じゃあ、こうしよう」

 ヨハンは拳銃の弾倉を地面に落として、遊底を引いて薬室からも弾丸を抜き取った。

「いい機会だから、俺の超ウルトラ・スーパー・クールなチート・スキルを見せてやる――名付けて〝おねだり〟だ」

 彼はベルトに連結してあるポーチからも、予備弾倉を1本ずつ抜いて残らず捨てた。

「ほら」

 スライドが後退して、弾切れの拳銃を片手に――そのまま無造作に向かってくる。

 一見すると無防備だが。

「……」

 試しにソフィアが目くらましの光線を放つ。

「!」

 しかし、ヨハンは顎を引いて目の焦点をずらして避けた。

「メスガキちゃん――目線と筋肉の緊張で、狙いがバレバレだ♪」

「これならどう?」

 挑発を受けたソフィアはすぐに本気を出す。

 指先ではなく、背後に光線の発振用の魔法陣を浮かべて――連発した。

「やるじゃん! さあ、踊ろうぜ!」

 身を翻しながら、ダンスのステップを踏むように間合いを詰めてくる。

 この上官は、こういうときに必ず罠を張っている。

 コートの裾を翻しながら彼は言う。

「俺が勝ったら、前に聞きそびれた――追い詰められた〝女騎士のマントラ〟を唱えさせる! メスガキ妖精ちゃんは、ストリップの刑だ!」

 その不埒な物言いに、乙女たちは口々に言い返す。

「なんなんですかっ!? それ!」

「そんな安っぽい罰でいいの?」

 ヨハンが空の拳銃を握った手を伸ばす。

 ミリアムは反射的に、抜き身の剣でそれを払おうとする。

「!」

 鈍い金属音が響いて、剣を握る手首に痛みがはしった。

 よく見ると、拳銃から露出した銃身とスプリング・ガイドの間に、刀身が挟まっている。

 敢えて銃を撃てなくしたのは、剣を〝掴む〟ための布石だったのか。

「よっと」

 その気の抜けた声に合わせて拳銃を回転させると、手首を捻られたミリアムはたまらず――剣を取り落とした。

 緩やかに半回転して、地面に突き刺さる。

 ミリアムはやむを得ず、反対の手で腰から拳銃を抜こうとした。

 上半身を捻り、肩の関節の柔らかさが幸いして――彼女は苦もなくやってのけた。

 だが、一手だけ遅れた。

「これもーらった♪」

 ヨハンが見せたのは、ベルトに固定されていたポーチから盗んだ――予備弾倉だ。

 陸軍の支給品で、2人とも同じものを使っている。

「ほらな? これが超ウルトラ・スーパー・クールなチート・スキル〝おねだり〟だ」

 ソフィアが小さな頭を傾げて言う。

「スリの技?」

「ただの手癖の悪さでしょうっ!? それ!」

「だっから〝チート〟って言うんだ!」

 反射的に、彼らは言い合った。

 おそらく、この上官は最初からこれを狙っていたのだろう。

 一連の出来事は、相手の利き手を封じて――彼女が無理な姿勢で拳銃を抜かせるため。

 左の脇が開く、その隙を作るように仕向けたかったのだ。

 ヨハンが弾倉を装填して、スライドを前に戻すレバーを下げた。

 ミリアムが拳銃を握り直して構える――ほぼ同時だった。

「大尉! やめましょう!」

 互いに拳銃を向けたが、ミリアムはすぐに銃口をはずして指を伸ばした。

「なんでだ? ここからが面白いのに――じゃあ、ほら。言えよ」

「……なにをですか」

「だっからあ〝く〟で始まる、女騎士が追い詰められたときの台詞だって――なんたって、お前さんは今まさに追い詰められた女騎士じゃん?」

「っ……」

 ミリアムの頬が紅潮した。

「だめえ? じゃあ、もう少し攻めちゃうぞ――ぬへへ♪」

 そう言うなり、彼は自分の拳銃を捨てた。

「っ!?」

 地面に落ちる拳銃に視線を誘導された、その一瞬で膝を沈ませ――彼も地面に倒れていく。

 その勢いを利用して踏み込むと、一瞬で彼我の間合いが詰まる。

「姑息な技を!」

「ギグにアドリブはつきもんだ♪」

 ミリアムが拳銃を構え直すと、指が気味の悪い蛇のように手首に絡みついてきた。

「エインセル准尉! 今だ!」

 彼女は合図した。

 それと同時に、ソフィアは指を鳴らした。

「っ!?」

 両者、ヨハンとミリアムの間で光だけが爆発するように――眩しく輝いた。

 空気中の水分を集め、発振させた複数の光線を束ねて乱反射させ――大きな光源を作り出したようだ。

「……っ」

 それを予想していたミリアムは薄目でヨハンの挙動を見極めた。

 一時的に視力を失った上官は、手探りで手首を掴んできた。

 格闘技の訓練で同じ技を見たことがある。

 手首や肘といった場所を捕られて〝力〟と体重の逃げ道を失うと――軽い打撃でも恐ろしい威力になる。

 特に体重を乗せた肘を急所に打ち込まれると、子どもの筋力でも大人を悶絶させられるほどだ。

 手首を引っ張られるのを、ミリアムは感じた。

「!」

 このタイミングを図った彼女は、あえて抵抗をやめて飛び込んだ。

 同時に掴まれていない方の手を使って、掌底を繰り出す。

 おそらく、ヨハンには防がれるだろう。

 だが、次の手は決めている。

 ミリアムの掌底がヨハンを捉えた。

 彼は頭を突き出して――額で掌底を受け止めてくる。

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