姫とは執事とは
この期間いったい何をしていたのでしょうね私は
この小説に限らず他にも積み小説が多いため、このような結果になってしまうとは、悲しい限りです
誠に申し訳ありません
では、腕がなまっているやもしれませんが、執筆させていただきましょう。
ご堪能あれ
梅雨も明け、夏の暑さがジリジリと進行中の今現在
この暑さは国を凌駕し、大陸にも影響を及ぼしているほどの暑さらしい
城下町もいつもの賑わいが減り、みな日陰から出ようとせずに飲料水片手に涼しんでいる
当然ながらこの暑さは城も例外ではなく、城内に立ち込めた熱気は兵士、騎士、軍師、国王達のやる気をドンドン削いでいった
城内のある一室、木彫りのドアの表札には英語のような異国の文字で「アルカイド」と表記されている。その中には、表札の名前の主、アルカイドが書類を前に机の上で格闘中であった。机の上には高さ50センチにもなりそうな量の書類が山積みにされており、それら一枚一枚を念入りに読み、承諾、拒否を決める。常人なら3日4日掛かりそうなものを、この男は今日中に終わらせようとしている。時計は長針を8、短針をやや2を指しそうな位置である
筆を机上に置くと、伸びをして背もたれに全身を預けた
「・・・・・・・・・暑い・・・」
今の姿は、上着を椅子に掛け、シャツの袖を肘まで上げてボタンを第三まで開けている、という暑さに苦しんでいるのが丸分かりな服装であった
そっと、耳を澄ましてみても、いつも聞こえてくる訓練に励む兵士の声が聞こえてこなかった。きっとこの暑さでばてているんだろう。というのがアルカイドの了見である
(ふむ・・・・・・この時間なら少々余裕がありますね)
一つ何かを思い立つと、アルカイドは体を起こしてある部屋へと向かった
時を同じくして城内、外れ
木々が生い茂っている外には、一面の芝生が敷かれており、それは結構な広さのある庭になっていた。週に二日来る庭師が手入れをしているため、見苦しいものなど一切存在せず、国一番の腕を持っていると言っても過言ではないのだ。
そんな庭の片隅、多くの木々が根を広げている中でも、一際大きな木が立っている。そこの根元に、この国の王女、シェアト姫が身を委ねていた。一定のリズムの呼吸音と微かに上下する肩を見る限り、お昼寝の真っ最中のようである。
城下町を出歩く用の淡いピンクのワンピースを着て、その服と同じ風でなびく桃色の髪をもつ少女は、さながら森に住む妖精のようだった
「・・・妖精は言いすぎだな。だがあながち間違いでもないだろう」
城の方からこの暑い中、体を燕尾服に包む男は、静かに、しかしよく通る低めの声でつぶやいた
シェアト姫の執事兼護衛を務める、アルデバランである
王女の身の回りの世話、時折勉強を見て、暇が出来た時は腑抜けな兵士諸君に直々に稽古をつけていく多彩な男である。しかしその実は、国、もしくは王女、国王、女王に降りかかりそうな火の粉を片っ端から払いのけて行く、先代から継がれし執事の影、王国の影と呼ばれている殺しのプロである
冷静沈着な彼でも、唯一の弱点が存在し、それは今彼の目の前で可愛く寝息を立てている少女である
「まったく、この暑い中どこへ行ったのかと思えば、昔から変わらぬこの木の下か・・・」
シェアトが生まれる前からそこに立っている木であり、何かあればそこへと向かうのがシェアトの習慣である。嬉しい時、楽しい時、悲しい時、辛い時、暑い時、寒い時、花が咲く日に。
音もなく木の下の少女へと近寄り、片膝をついて少女の風で揺れる髪へと手を伸ばした
指で梳くとサラサラと指の間を滑り、シャンプーと、少女独特の匂いが漂ってきた
その手の動きを止めず、髪から頬に移っていき、
「えっと・・・あなたは何をしているのですか?」
その言葉に体をビクッ!と震わせ、そろりと後ろを振り返った
「ちょっとした提案があったのであなたの部屋に向かっても、姿は存在せず。どこにいるのかとこの暑い日に城内を詮索させ、あまつさえ結局はシェアト様とイチャコラ。まったく、あなたはわざとやってませんか?」
言葉だけはご立腹なアルカイドが不満を述べていた。
なぜ言葉だけか?言いながらも彼の口元はニヤけつつあったからである
フンと鼻で笑うと
「私がどこにいようと私の勝手だ。この暑い中?良い運動になっただろう?」
素っ気ない態度にアルカイドは苦笑する。
「冗談ですよ。あなたは冗談が通じにくいですね・・・」
一旦言葉を切ると、それで・・・と加えて
「あなたはいつまでシェアト様のお触りタイムに興じるつもりでしょうか?」
その言葉に一瞬疑問をもち、次に自分の腕を引っ込めようと正面を振り向いた瞬間である。
ばっちりシェアトと目が合ってしまった
「・・・」
「・・・」
「・・・」
なぜか沈黙。おや、今日はこんなに涼しいじゃないか何が暑いだあの爽やか野郎などとアルデバランが思考を別方向に向かせたあと、また正面の問題に目を向けた
再度目が合う。どうしたものかとアルデバランは頭をフル回転させながら考えた。今自分の手は目の前の彼女の頬。しかも少し唇に触れかけている
(・・・・・・言い逃れできんか・・・)
なかば諦めの溜息をもらすと、腕を引っ込め、その長身を起こすと深々と頭を下げた。
「・・・・・・もし気分を害したというのならどんな処罰も甘んじて受けましょう」
シェアトはジーとアルデバランを見つめたあとに
「わかったわ。なら処罰を与えてあげる」
不敵な笑みを浮かべてアルデバランを手招きする。
それに従い近づくと座ってと促され、座った直後
ビシッ!という音と共にアルデバランは額にちょっとした痛みを感じた
「はい、今ので第一の処罰終了。次は第二の処罰ね、アル、後ろに周って」
歯向かうこともできないので、まぁするつもりもないが従い、後ろに回ると、シェアトの少女らしい小さな肩をみる
「肩を揉みなさいな」
・・・・・・
「・・・はい?」
「肩よ、肩。変な寝方しちゃったからかな?肩が痛いのだからちゃんとしたところに行くところをあなたで我慢してあげるというわけよ、わかった?」
早口に捲し立てるのは、この少女の恥ずかしいとき、焦っているとき、隠し事をしているときである
盛大に溜息を漏らすと、仕方なく彼女の肩に手をおき、力を入れることにする。
(力は入れすぎず、ちょうど良いところをピンポイントで。そうすればこのしゃべり方も変わるだろう)
いつものやんわりふんわりした口調が好きなアルデバランは、それを取り戻すために肩を揉み始める
「あ、それで、アル。僕の提案なんですが・・・」
完全に外に追い出されたような状態のアルカイドが口を開いた
「ん、あぁすまない。なんだったか?」
肩もみの力は抜かずに前をみるアルデバラン
「ん、あぁ・・・あ、にゃぁ・・・もうちょっと下・・・・・・あぁ!そこそこそこ!」
「この暑い中、兵士の士気もダウンし、城内全体の士気が下がれば、それは国全体にも継ります」
たしかに、兵士の士気がダウンしているのはよくわかる。大体今肩を揉まれている少女目的で志願した者が多いからか、日頃から弛んでいることはよくあるのだ。
そこでと続けて
「城内で公開試合なんていうのはどうかと考えつきまして」
『公開試合』文字通り、城内への入城を許可し、今三人がいるこの庭で兵士同士騎士同士の試合をするのである。これが異様に盛り上がるため、年に5回以上は開催される行事である。
しかし、普通に考えればこの真夏日に試合など、正気の沙汰ではないと誰もが思うだろう
「何を言っているのですか、アル!
この暑い中だからこそ思う存分体を動かして汗を掻き、その中での真剣勝負。とてもよろしいではないですか!」
アルカイドの力説に、ふむと頷いてしまった。
兵士の士気が最悪なこの状況で試合は力を見せるにはちょうど良い。簡単に、悪くいえば、ストレス解消と憂さ晴らしができるわけだ
一つ問題があるとしたら、この暑さであろう
「あ・・・にゃ・・・ちょ・・・ちょと・・・んっ、あ・・・あぁ!あ・・・アルゥ・・・」
名前を呼ばれたのでパと手を離した
「どうしました?姫」
顔を真っ赤にしている少女は、本当にこの国の王女なのかと疑問に思うであろうかわいさである
「えと・・・なんの話だったっけぇ?」
あ、可愛い。と思ってしまうの仕方のないことだと思ってくれ
「公開試合の話ですよ。あ、アルカイド。いつ行う予定なんだ?」
「そうですね・・・今月末などどうでしょう?30日くらいでどうです?」
その爽やかな答えに承諾しようとして
「ま、待って!」
横から割って入ったのは一人の王女である。シェアトだ
「その日だけは絶対ダメ」
執事二人は頭の上にはてなを浮かべてしまった。特に予定もない日のはずだが・・・?
「はて、シェアト様。差し支えなければ理由を述べてもらってもよろしいでしょうか?」
シェアトは、顔をまた真っ赤にしながら
「だ、だって・・・その日は私もアルもアルカイドもみんなお休みの日でしょ?そんな貴重な日だから・・・だから・・・」
もじもじしながら言葉を紡いでいくその少女は、そう王女というよりも少女である。まるで家族の旅行を聞いてずっと楽しみにしていたかのような雰囲気だ
「・・・アルカイド。日にちをずらせるか?」
「まったく、困ったお姫様とその執事ですよ」
その言葉を待っていたかのようにアルカイドは苦笑を浮かべると、快く承諾した
「では、検討のほうを任せますよシェアト様」
そう言い踵を返すと早々に城内へと入っていった
しばらくアルカイドが歩いて行った方向を見つめていると、不意に体に力が加わった。シェアトが寄りかかってきたのだ
「・・・平日は仕事をしていれば時間って過ぎていくのが早いじゃない?でも休日って好きなことなのに時間の流れが早いのよね・・・・・・」
「そんなものですよ。私ももう少しこの時間を堪能していたいです。・・・・・・ずっと、この位置で」
「? 最後のほうが聞こえづらかったけど?」
「なんでもないです!」
「ふぅん・・・・・・?」
しばしの沈黙を作り、不敵な笑みを作ったシェアトが言葉を投げかけた
「ねぇ、アル。私が寝ている間に何をしていて何をしようとしていたのかなぁ?」
その言葉にぎくりとするアルデバラン
「・・・・・・何も」
「・・・へぇ~ふぅ~ん・・・・・・」
ジーとこちらを見つめるシェアト
くるりと向きを変えてアルデバランを正面に見据えた
そして、いきなり胸元に突っ込んでいった
「ア~ルゥ~?何をしてたのぉ?」
力いっぱい抱きしめてくる少女。それに対して少年は驚きを隠せずに、そして顔を紅潮させながら
「な、何もしてません!」
と抗議をするも、聞く耳持たずな少女はそのまま力を加えていく
少女が力を加えるたびに、女性ならではのものがちょうど腹部にあたり、意識をしないようにするのは不可能と言えるだろう
「ひ、姫!腹部に・・・そのソフトなものが・・・・・・」
「何言ってるのかなぁ?アル?言い逃れはできないよぉ~」
無自覚だからこの少女は危ない。ある意味最強である
「さて、何をしたのかなぁ?正直に言いなさい?」
観念したのか、アルデバランは抵抗をやめ
「まぁ・・・たしかに、髪を梳いていました・・・・・・
とてもキレイな髪だったもので」
その言葉に意表を突かれたのか、ふえ!?と言って顔を上げた
「え、今・・・何ていった?」
「ですから・・・髪を梳いていたと・・・・・・」
「そ、その後よ!」
「とてもキレイな髪だったもので・・・」
「ふぁ・・・そ、そう・・・かなぁ?」
「まったく、何を言い出すかと思えば」
溜息を一つ
「姫の髪はとてもキレイですよ。私はとても大好きです」
「あ・・・えと・・・・・・その・・・」
顔を肌色を確認できないくらいに紅潮させた少女は、すく、と立ち上がり数歩歩いた
そして振り返ると、その小さな口からチロっと舌を出して、振り返るとそのまま走っていった
「・・・・・・ん?・・・選択ミスでもしたのか・・・私は?」
忘れていた暑さが舞い戻り、またジリジリと体力を消耗する午後が始まっていた




