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毒ヲ喰らわバ、みどりマデ〜花吐く魔女ハ旦那様ヲ逃さナい〜  作者: はるてん(次作執筆中)
第4章 毒《あい》はほころぶ

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25話 神様から贈られた山丹花《さんたんか》(前編)

 ロータスの妻をノアは厳重に投獄した。普段の警備兵に加えて自分の騎士も警備に加え、食事も全て緑の毒見を通させた。

 彼女を重要参考人としてノアは第二王妃の立件を模索する。

 確固たる証拠を掴むため、彼は第二王妃と取引がある商家を一つ一つ調べていた。


 そんな多忙なノアを、ある日第一王妃が呼びだした。わざわざ自室に呼び出して、侍女も近衛騎士も排した。部屋の中に居るのは親子と魔女だけ。


「貴方が忙しいのはわかっているのですが、相談があります」

「相談?」


 怪しむノアに、メアリーは言い辛そうに言葉を選ぶ。


「貴方は、魔女殿を信用していますね。彼女は本当に、信頼できる者でしょうか」

「どうしたんですか突然。彼女の働きは母上も見ているはずですが」

「情報を、渡してもいいのかどうかを聞きたいのです」


 彼女は密偵を気にしていた。よほど、話そうとしていることが重大事項であることが察せられた。

 ノアは緑の長所を考える。


「あれは、金で動く類ではありません。秘匿しろと言えば、従うでしょう。正直、秘め事であれば一番信用ができます。口を滑らせる相手もいない」

「そうですか……」


 第一王妃メアリーは考えこんだ。しばらく真剣に考えた跡、覚悟を決めて顔を上げる。


「では、貴方を信じてお願いします。陛下を、魔女殿に診ていただきたいのです」

「父上を?」

「最近、お体の調子が良くありません」


 国王の体調不良は国の重要案件だった。ノアの顔も曇る。メアリーも、険しい顔をしていた。


「嫌な予感がするのです。お願いできませんか」




 マグナリア王国第二十六代国王、ジェームズ・マグナリア。四十一歳。

 戦争で死んだ兄の替わりに王座に就いた幸運な男。

 四人の王妃と、十三人の子供を持ち、手を出した侍女の数は計り知れない。処分した女の数も。


「メアリーから聞いた。優秀な薬師を雇った、と」


 執務室を訪ねると、顔色の悪い父が居た。騎士からの鋭い視線が、ノアの後ろに立つ緑に向けられる。

 事前にノアとメアリーから話を通したが、受け入れられてはいない証拠だった。


「はい。薬の知識が豊富で、経験もある優秀な薬師です」


 ノアが答えると、ジェームズは静かに俯く緑を見て、一言零した。


「……美しいな」


 反吐がでた。


 ――二言目がそれか、この女好き。まだ新しい女を欲しがるか。


「診察を、させていただいてもいいでしょうか」


 話を戻すと、ジェームズは弱弱しく笑った。


「頼む。どうも、このところ食が細くてな。好物でも喉を通らないことが多い」




 ***




 私は目を伏せながら、慎重に国王様の手首に触れて、脈や熱を確認していく。

 爵位を持たない使用人でしかない私が、国王様に触れるのは異例だそうだ。旦那様からはできるだけ俯いて顔を見ないようにと言われた。

 見えない分、嗅覚に神経を集中させる。


 ――匂いが、する気もしますけれど。微量すぎて、よくわかりませんわね。


 この部屋は色々な匂いが籠っていた。古い書物の匂い、香の匂い、人じゃないモノの匂い。少し、頭が痛いくらいだ。

 少し力のない脈をとり終わって、国王の手首から手を離した。その手を、掴まれた。

 驚いて思わず顔を上げる。


 私の目に映ったのは、無数の黒い手に覆われて表情も見えなくなった顔だった。首や肩を掴む手もあるが、顔にまとわりつく手の数は異様だった。

 どれも細い華奢な手で、女のものであることがわかる。旦那様たちのような冠が、その頭上にはなかった。

 少しだけ見える口がにっこりと微笑む。


「息子は随分魅力的な女性を傍に置いているんだね」


 旦那様から会話をしないようにと言われた私は答えることができない。私の手を握る手の指先が、少し震えていた。


「これからもよろしく頼むよ」


 そう言って、私は解放された。




 ***




 国王の食事も飲み水も、緑の花が咲くことはなかった。

 ノアは緑の指示通りにいくつか国王に質問をし、薬の献上を約束して国王の執務室を後にする。


「何があった?」


 廊下で二人になった途端、ノアは緑に尋ねた。意図がわからない彼女は首を傾げる。


「なにか、驚いていただろう。なにに気づいた」

「ああ、あれは。突然手を握られたので、つい顔を上げてしまいました」


 それまで軽快に歩いていたノアの足が止まった。


「あの時、指が震えていました。元から震えのある方でしたか?」


 止まったノアの後ろから、緑は尋ねる。


「旦那様?」


 振り返ったノアは、酷い目をしていた。怒りと嫌悪と、嫉妬にまみれた目だった。

 戸惑う緑の手を乱暴にとり、今度は早足で歩き出す。


 彼は無言で応接室が並ぶ棟まで移動すると、見張りの騎士に鋭く訊ねた。


「空いているのはどこだ」


 そこは政務官たちが普段会合につかう場所だった。突然現れた王族に、下位騎士の男は慌てて背筋を伸ばす。


「て、手前の三つ以外は空いております!」

「最奥を使う。誰も入れるな」


 そう命じて、ノアは緑の手を引いたまま一番奥の部屋に入った。簡易的な応接セットがある、小さな部屋だった。


 入ると同時に、ノアは扉に緑の体を押し付けた。そのまま乱暴に唇を奪う。短慮的なその情事を戸惑いならも緑は受け入れる。

 乱雑に、二人の指先が絡み合った。


父親が恋敵になってしまいました……

いや、元から女好きの父親→王妃も異母兄弟もいっぱい、という設定で、そんな女好きが緑を見てスルーするか?いやしない。となったらこうなってしまいましたごめんノア……


後半は金曜日。あと4話で完結です。


ブクマや↓の★を一つでもいいのでいただけるとがんばれます。よろしくお願いします。

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