来世も一緒(2)
「それで、私に聞きたい事とは何だ?」
「うん、ラディス、いや亮介っていくつまで生きたんだ?オレが死んだ後の事を知ってたら教えてもらおうと思ってさ。まあ知ったからって何が出来るわけでもないんだけど」
「やっぱり気付いてなかったか」私は溜息を一つ。
「私が、いや南部亮介が死んだのは片瀬拓海と同時だ」
「は?」
「もう遠い昔の事だ。お前は覚えているかわからんが、あの日、空手の全国大会の日の朝、私は前を歩く拓海に気がついた。声を掛けようとしたときに居眠り運転の車がお前に迫ってくるのに気付いたのだ。とっさに声を掛けお前に向かって走った。まあ私も自分の能力を過信していたのだろうな。お前を突き飛ばして自分も助かるつもりだったのだからな」
「え、じゃあ亮介ってオレの巻き添えで死んじゃったんだ。なんか……ごめん」
「もう昔の話だ。お前にとっては八年前か?私にとっては六十年以上昔の話だ」
「ラディスっていつ前世の記憶が蘇ったんだ?」
「八歳の時だ。ヴェルナーヴに幼い頃も命を狙われた事があったと言っただろう。その直前ぐらいだな」
「お前、小さい頃から大変だったんだな」
「まあ、前世の記憶が蘇ったおかげで暗殺を回避できたのかも知れん」
「??」
「リア、お前アニメの話をどれくらい覚えているのだ?」
「うーん、〝救国の四星〟が魔王討伐に行ってなんやかんやバトルして魔王城に辿り着いて……」
「それはほぼ覚えていないのと同じだな」
「あ、でもところどころのシーンは覚えてる。魔王討伐の旅に出たときも何回か『あ、このシーン覚えてる』とか『この景色見た事ある』って思ったもん」
「それは覚えていないのと一緒だ。お前、アニメの魔王の名前、覚えているか?」
「え?アニメの最終決戦を見る前に死んじゃったんだからわからないよ」
「アニメでは魔王の姿はずっとシルエットだったのだが、名前は二回目の放送あたりで出てきたのだ。私は前世の記憶が蘇ってアニメの世界と似ていると確信した時点で覚えている限りの内容を書き留めていたからな。アニメに出てきた魔王の名前はヴェルナーヴだ」
リアは理解が追いつかない顔をしている。
「私は竜魔族として生まれ、成人したら三界の竜と戦いこれを従わせなくてはならん。その為に鍛錬せよと厳しく育てられた。既にヴェルナーヴは失敗していたからな。次期魔王はお前しかいないと言われていた。前世の記憶が戻った時に魔王の名前が違い、私が物語の中に出ていない事に気づき、もしや成人前に殺されてしまうのではないかとヴェルナーヴの動きを警戒していたのだ。それで暗殺も回避できた。もっとも、私が魔王になった事でアニメとは似ても似つかぬ世界になった。アニメで描かれていた魔大陸は荒れ果てた荒野が続き、荒んで残忍な魔族が襲い掛かってくるような世界だったろう?」
「やっぱり!!オレ、魔大陸に来てからずっと不思議だったんだ。なんかアニメと違うような気がしてさ。でもアニメの内容はほとんど忘れていたからオレの思い違いかな~なんて思ってたんだけど」
私は苦笑した。いかにもリアらしいが。
「あんなにアニメと現実が違っていたのによく気がつかなかったな。私はここまで違ってしまったので魔王討伐はもう無いだろうと思っていたから、お前達が襲い掛かってきたときは驚いたぞ」
「オレはオレが転生した事でアニメのストーリーが変わってきたのかなあなんて思ってたんだ。
なんだ、そっか。六十年以上前にもう変わってたんだな」
なんとなくリアは納得したようだった。
「そういえば、ラディスのお父さんには会ったけどお母さんは何してるの?」
「母か。母は亡くなった。十年ほど前にな」
「ごめん」
「いや、割と長生きした方だ。私達竜魔族は寿命が300年近くあると言っただろう。寿命が長いということは竜魔族以外の家族、母親にも、伴侶にも子供にも先立たれるという事だ。だから私の子供でも獣魔族として生まれた者は臣下に下る。家族の情を育ててしまえば辛いからな。妃たちにもあまり情を移さぬようにしている。まあ、竜魔族の子供を少しでも増やしたいから沢山娶れといわれているのもあるが」
リアはしばらく何か考えているようだった。
「ラディス、オレ、ラディスが250歳くらいになった時にまた生まれ変わるよ!そんで、お前の最後の伴侶になってお前を看取ってやる!」
まったく、リアは突拍子もない事を考える。
「ああ、よろしく頼―――」
「リア!聞き捨てならないことが聞こえたぞ!!」
部屋に入ってきたのはこの国の王太子、アルフレッドだ。
まあ、扉は開けておいたからな。
「リア、俺はお前の前世の話を全面的に信じる事にした」
「アル?」
「わからない事もひっくるめてお前を信じる。だから、来世でも俺と結婚してくれ!」
リアはポカンとアルフレッドを見つめていたがくしゃっと笑った。
「ラディス、ごめん。オレは来世でもアルと結婚する。お前の親友になって最後を看取ってやる」
幸せそうにそんな事を言うから私も答えた。
「ああ、よろしく頼む」




