魔大陸ツアー(7)
夕食後、オレとアルはラディスに招かれサロンで話をする事になった。
ソファーで寛ぎながらドルゴーン王国産のお酒を楽しむ。オレもアルもいける口だ。
「さあ、リア今まで何をコソコソしてたのか教えてくれ。クトラディス殿に何を頼んだんだ?」
「うー、教えるけど、その前に約束してくれ。反対しない、怒らない」
「内容による。約束は出来ない」
「じゃあ言いたくない」
「お前、まさか俺とこ、婚約解消してこの男と―――」
「はあ?違うよ!オレがアルと婚約解消するわけないじゃん!
―――ああもう!怒るなよ?……海竜と戦わせてくれって頼んだの!」
「は?はあああ?お前、何考えてんだ?」
「ほら、魔大陸から帰る時、言ったじゃん。海竜に勝ったらいつでも乗せてくれるかな?って」
「まさか本気だと思わないだろ」
「いや、私は面白い勝負になると思うが」
ラディスが口を挟んだ。
「いや、しかし、クトラディス殿……」
「もちろん命が危なくなったら私が止める。一度戦ってみないとリアも諦めないだろう」
アルはしばらく考え込んでいたが不承不承頷いた。
「うーん、許可はしたくないが……しょうがない!ただし、俺もついていく。それから地竜とか天竜と戦いたいって言うのは無しだ」
「アル、ありがとう!アルはやっぱりいい男だ!」オレは嬉しくなってアルの頬にキスをした。
「おまっ……いや……そんな……」
アルはしばらくデレていたが、急に思い出したようにオレとラディスを見た。
「リア、クトラディス殿、私は二人の関係にずっと疑問を抱いている。いや、浮気とかそんな事を疑っているわけではないんだ。でも、二人の間にはある種の信頼関係のような、絆のようなものがある気がしてならない。それに嫉妬をしないといったら嘘になるが……」
オレはラディスと顔を見合わせた。
ラディスがゆっくり口を開く。
「アルフレッド殿は前世というものを信じるか?」
「前世?」
「今の自分が生まれる前、別の存在だった時の事だ。私もリアもその記憶がある」
アルがいぶかしげにオレを見るのでオレは頷いて続けた。
「そうなんだ。オレもラディスも前世の記憶がある。そしてオレとラディスは前世で友達だった」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……生まれる前ってことは昔だよな?魔族と人間がどうやって知り合ったんだ?」
「いや違うよアル。オレもラディスも人間だった。そしてこの世界じゃない日本という国に住んでたんだ。
その国で……オレは男として産まれて……13歳で死んだんだ」
急にラディスがパン!と手を叩いた。
「急に受け入れられる話ではない。とても信じられないだろう。ゆっくり考えてくれ」
そして「リアも明日に備えて早く眠れ」と促して部屋を出て行った。
―――翌朝―――
本日快晴。絶好のバトル日和だ。
オレは今、アル、ラディスと共に船の舳先に立ち〝死の海域〟の手前にいる。
「#$&%&$#」
ラディスが唱えるとグググッと海面が盛り上がり海竜が姿を現す。
海竜さんおひさ~。オレが手を振ると海竜も尻尾を振った(ような気がする)
「$%##&%$&」
ラディスがまた何か言うと海竜が「グオオオ……」というような音を出した。
「海竜が了承した。では……行って来い!」
ラディスは言うやいなや、オレの襟首を掴み―――海に放り投げた。
ええええーーーー! ドップーーン!!
えー!待って!溺れる!なにかつかまる物!
オレは半ばパニックになりながら必死で考えとりあえず氷の塊を出してしがみついた。
あれ?これって乗れるんじゃないか?
平らな氷を出してよいしょと乗ってみる。おお、乗れた!
コツを掴んだオレはそれからはバトルを楽しんだ。海竜の尻尾の攻撃を掻い潜り雷撃をぶっ放す。渦に巻き込もうとするのを氷の足場を連発して飛び移り避けながら爆裂弾を連弾で打ち込む。手加減を考えなくっていいのって気持ちいい!雷撃!氷の槍!特大火球!……
「そこまで!」
急にラディスの声が響いた。
「リア、海竜が降参だといっているぞ」
やったー!氷の足場を伝って船まで戻る。船の真横に着くと縄梯子を下ろしてくれた。
デッキに戻り海竜をみると――ボロボロだ……
心配になってラディスに尋ねたが三日もたてば治ると言ったので一安心だ。
「海竜も楽しかったといっているぞ」
「%$#&&%$%#」
ラディスはしばらく海竜と話していたが、急にオレの手をガッと掴んだ。
「リア、でかした!海竜が了承したぞ!」
「へ?何を?」
ラディスはオレが一月に一度海竜と遊ぶ事を条件に〝死の海域〟に常時大型船が通れる幅の道を作ることを了承させたのだった。
ラディスめ。ちゃっかりし過ぎじゃないか?海竜と遊ぶのは楽しいからいいけど。
アルは頭を抱えてた。
「魔大陸に定期船が通るのは嬉しいが、魔導師団の仕事に王太子妃教育、海竜の相手まで……俺の相手はいつしてくれるんだ。リアは俺の婚約者なのに……」
「アルも一緒に遊ぼうよ。それで海竜さんに背中に乗せてもらってデートしよう!」
ドルゴーン王国の客船は波を蹴って進む。シャンタル王国のカストゥールの港まであとわずかだ。
今、オレはマストの上、見張り台にいる。アルと一緒に。
今回の〝魔大陸ツアー〟で魔石が魔大陸に豊富にあることがわかった。いろいろな特産物もあって、ドルゴーン王国との交易は盛んになっていくだろう。短い間だったけどギャッピーにも会えた。念願の海竜とのバトルも出来た。大大大満足の〝魔大陸ツアー〟だった。
アルに肩を抱かれ、寄り添いながら
「楽しかったな」オレが呟く。
「ああ、俺は胃が痛いこともあったけどな」
「あったっけ?」
「今こうしてリアと二人きりだから全て帳消しだ」
遠くに大陸の影が見えてきた。
「これからもリアとこうして同じ景色を眺めていたいな」
「うん。いろいろな景色を二人で見よう」
――そうしてオレ達はキスをした―――
―――(おしまい)―――
最後までお読みくださりありがとうございます。
一旦物語りは完結しますが、番外編をもう数話投稿できたらと思っています。(時間は空くかもしれませんが)




