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【完結】前世男子中学生の公爵令嬢、魔王討伐に行ったんだけど……  作者: 一理。
番外編

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魔大陸ツアー(4)


 連れて来られた山間の粗末な小屋。

 魔物狩りでもするときに使う小屋なのか入ってすぐの部屋には狩猟道具らしきものが置いてあった。隣に簡単な煮炊きできるスペースがあり、奥に一部屋。その部屋にキモおやじと色気美人と閉じ込められている。

 このおやじは連れてこられる間ずーーっと五月蝿かった。

 宿から離れるまでは脅されて口をつぐんでいたが、山間に入ると「私を解放してくれ。金はたんまり用意させる」だの「私は王国一の商人だ。私に恩を売れば悪いようにはしない」だの「この女達は自由にしていい。私を解放すればもっといい女を用意してやる」とか言い出したときにはさすがに色気美人も白い目で見ていた。


 オレ達を奥の部屋に閉じ込め男達は相談を始めたようだ。ドアに耳をつけ話を聞く。

 縛られた縄なんか部屋に入ってすぐ風の刃で切っている。

 キモおやじと色気美人はあんぐり口を開けたが二人の縄はそのままだ。騒がれると厄介だからもう少し我慢してくれ。


 ドア越しに漏れ聞いた話では男達も戸惑っているようだった。

 カッフェル男爵は王城の高官の従者の一人として数ヶ月前魔大陸に来たことがある。その時魔石を見つけたのだ。

 賭博で金に困っていたカッフェル男爵は魔石のことを高官に報告せず、その時接待に出ていた獅子の魔族の部下の狐の魔族に目をつけた。

 狡猾そうな狐の魔族に「上司に内緒でこの黒い石を沢山集めてくれ。私はもう一度魔大陸に来るからこの黒い石を高い値段で買い取ろう」と持ちかけた。

 多少多くの金を出しても、とんでもなく高価な魔石だ。十分元は取れる。狐の魔族にしても上司に報告しても自分の懐には一銭も入らない。買い叩かれても内緒で黒い石を集めて売ってしまったほうが得である。


 ということで男達は手を組んだのだが、誘拐にまで事態が発展してしまって戸惑っているようだった。

 

 さっきは咄嗟の事で人質をとりナイフを当ててしまったが誘拐やましてや殺人などする度胸も無く、かといって今更自首する度胸も無い。

 とりあえず山道を歩き小屋を見つけ中に入ったものの進退窮まっていた。


 うーん……オレも悩んでいた。そこまで悪党ではないんだな~。もちろん魔石を掠め取って自分達の利益にするのは許せないけど、この人達誘拐したのが王太子の婚約者だって知ったら心臓止まっちゃうんじゃないだろうか?なんて犯人達に同情してしまった。


 だってもうすぐ踏み込んでくるから。クリフ率いるシャンタル王国の騎士たちとリンデロット率いるドルゴーン王国の兵士達が。


 ヴェルナーヴの事件が解決した後、オレ達は宰相とのピアス交換を解消した。そしてオレとアルはピアスを交換したんだ。

 もうオレの居場所はピアスで報告済みだ。




 ドゴーン!!物凄い音で入り口のドアが破壊されたみたいだ。どかどかと床を踏み鳴らす音と「ひゃー」

とか「ひー」とか男達の悲鳴が聞こえる。

 次の瞬間バーンとオレ達がいる部屋のドアが開けられた。

 先頭にいるのはアルだ。


「リア!無事か!?」無事に決まってる。


 色気美人が「あぁ……」とよろけて「怖かったですわぁ」とアルにしがみつこうとしたが

 今度はアルがさっと避けた。


 コケる色気美人を尻目にオレを抱きしめるアル。


「リア、怖い思いをさせてゴメンな」オレをぎゅうぎゅう抱きしめるアル。


 いや、怖い思いしてないから。そしてアルのせいじゃないから。


 オレを抱きしめ続けるアルを横目で見ながらクリフとリンデロットは男達をさくさく捕まえキモおやじと色気美人を連れて出て行ってしまった。リンデロットの「ごゆっくり~」の言葉と共に。


 しばらくしてやっとアルが離してくれたので、さあ戻ろうと歩き出そうとしたときだった。


 グラッ……また地震だ。しばらくグラグラゆれて収まった。

 と、今の揺れのせいで棚に載っていた何かがころころ転がって落っこちてきた。

 とっさに受け止める。


「??何だろ?」  一抱えもある黒い丸い物体だ。





「さあ帰ろう」アルの声に歩き出した。


「リア、それ持ってきちゃったのか?」


「うん……」なんだか離しがたかったんだ。大きな黒い丸い物体はオレの腕の中でドクンドクンと息づいているような気がした。

 宿に戻るとサーラやサンテが心配して待っていてくれたが、サーラと話をする前にマードラン卿に捕まった。


「アッシュマイヤー嬢は私を殺すおつもりですか。問題を起こさないで下さいとあれほど頼んだのに」

 とさめざめ泣かれたので、オレのせいかなあ?とは思ったもののとりあえず「ごめんなさい」と謝っておいた。


 



 ――次の朝――

 昨晩、もって帰った黒い丸い物体をベッドの中に持ち込み、撫でたりコンコンと叩いてみたりして調べていたがそのまま寝てしまったらしい。

 ピキッパキッという音に目が覚めると、丸い物体にひびが入っている。


 大変!寝てる間に潰して壊しちゃったかも……


 青ざめてみている間もピキッパキッとどんどん壊れてくる。やがて……


「ピギャーー!」


 え?なにこれ?黒い丸い物体は卵だったらしい。

 中から出てきたのは……魔物?トカゲのような体躯に黒光りする鱗。手には鋭い爪が生え頭には角。口を開けると牙も見える。なにより大きさが卵からかえったばかりの大きさじゃない。オレの腕の付け根から指先くらいまでの大きさがある。


 その魔物はもう一度「ピギャーー」と鳴くとオレの近くに寄ってきて顔を舐めた。そうして膝の上に無理矢理乗ると(重い!)寝てしまった。


 か……可愛い!めちゃくちゃ可愛い!


 母性本能(?)を刺激されたオレはアルが朝食を誘いに来るまでずっと撫でていた。









 



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