そして……再び夜会
本編最終話です。
まだ諸問題を残しつつ今日の夜会で事件は一区切りを迎える。
夜会当日である今日、オレは朝から多くの侍女やメイド達によって磨きたてられていた。
ちなみにオレに専属侍女はいない。意地悪されていた訳じゃないよ。オレが侍女達から匙を投げられたからだ。侍女をつけることを諦められていたオレをメイドのマーサがずっと面倒見てくれていた。
今日だけは適当な格好も許してもらえず朝から義母上とフィリス監督の下、長時間かけて磨きたてられている。夜会が始まる前に疲労困憊だった。
夜会が始まる前、控え室でアル、クリフ、サーラと久しぶりに会った。
今日は〝救国の四星〟として王族と共に入場する。
控え室に入っていくと
「化けたなあ!魔大陸で魔物を黒焦げにしていたヤツには見えん」とクリフ。
失礼な奴め。でもその後オレの手をとり指先に口付け
「お久しぶりです。マリアベルナ嬢。とても美しく勇敢な貴方と共に旅をした経験は私にとってかけがえの無い宝物であり誉れであります」といった。
オレはクリフに抱きついた。年上だからといつもオレ達を冷静に見守ってくれていたけど意外に熱い男。大好きだよ、クリフ。
サーラと手を取り合い
「リア様めちゃくちゃ綺麗ですぅ」
「サーラもめちゃくちゃ可愛い!」とはしゃぎあう。
サーラとはずっとずっと仲良くしていきたい。親友と言ってもいいよね。
アルは……アルは黙ったままだった。
オレが入室してからずっと黙って突っ立っている。
「アル?」目の前に行って手を振る。
がばっとアルが抱きついた。
「アル!髪が、服が乱れる!」
「リア、綺麗だ!凄く綺麗だ!結婚してくれ!」
「え?今言う?」
「事件が解決したら言ってもいいって言った!」
ムードもへったくれもないんですけど……まあオレ等らしくていいか。
全然淑女じゃないしこれからもいろいろ問題を起こすかもしれないけど
「いいよ。アル。一緒に幸せになろう」
クリフとサーラが拍手している。
今晩、酒をもってアルの部屋に行くから四人で飲み明かそうぜ。なんて言っている。
王太子の部屋だけどいいの?いいか!!
王城の大ホールは煌びやかに飾り立てられ楽団の音楽が流れる中着飾った紳士淑女が和やかに談笑する。
三ヶ月前、この国はどうなってしまったんだと不安の面持ちで登城した時とは打って変わって人々の表情は晴れ晴れとしておりこの国を救ってくれた英雄達の登場を待ちわびている。
ファンファーレの音と共に王族の入場が告げられる。
国王陛下と王妃様の後ろをオレはアルに、サーラはクリフにエスコートされて歩く。
オレ達が壇上に現れるとホールは歓声に包まれた。
陛下が片手を挙げてそれを鎮め話し始めた。
「皆、今宵はよく集まってくれた。
この国で起こった様々な事件、陰謀はここにいる〝救国の四星〟をはじめ多くの人々の手によって防ぐ事ができた。皆、よく頑張ってくれた。我が王国の安泰はそなた達のおかげだ。礼を言う」
陛下は振り返って微笑みかけた。皆が割れんばかりの拍手を贈る。
「もう一人わが国の平和に尽力してくれた人物を紹介しよう」
陛下がさっと手を挙げると背の高い人物が壇上に現れた。
魔王クトラディス・ドルゴーン。長身で厚みのある逞しい体躯。青みがかった肌。手は鱗に覆われ、豊かな銀色の髪の中から捩れながら上に向かって突き出した二本の大きな角。顔立ちは非常に端整で金色の瞳が爛々と輝いている。
魔族の従者を二名従え堂々たる姿を現した魔王は国王陛下と、そしてオレ達と握手を交わす。
魔王が登場した時怯えた表情を見せた人々は国王と、そして〝救国の四星〟であるオレ達と握手を交わすのを見て……
誰かが拍手をした。その拍手はだんだん大きくなりホールは割れんばかりの拍手が響き渡った。
国王陛下、王妃様、魔王が着席し、音楽が奏でられ始める。
今日のファーストダンスはオレとアル、クリフとサーラの二組だ。
ダンスなどしたことがないとサーラは半泣きになりながら必死に練習したそうだ。
オレもデビュタント以来だ。フィリスに叱られながら練習した。
アルがオレを見て手を差し出す。その手をとってオレ達はホールの中央に進み出る。
最初ちょっともたついたがアルのリードは素晴らしくオレは恙無くダンスを終えることが出来た。
ダンスを終えるとオレ達は物凄い数の人々に取り囲まれる。
アルの周りには綺麗な花のような令嬢が群がりダンスに誘って欲しそうだ。アルの所に行きたくてもオレの周りにも多くの人がいる。何度もダンスに誘われる。ちょっと切れそうになった時、後ろから腕を掴まれた。人ごみから引っ張り出される。
「アル!」
「リア、俺以外と踊りたいの?」
「まさか!」
「ではご令嬢、私ともう一曲踊っていただけますか?」
「喜んで」
アルと見詰め合って踊る。くるくる踊る。お互いしか見えていない。二人で微笑みあって踊る。
ダンスが終わる間際、アルに問いかけた。
「オ……『私』に直した方がいいよね?」
アルはうーん……と考えた後、私にキスをして囁いた。
「どっちでもいいかな。
――俺はどんなリアも愛しているから」
―――(おしまい)―――
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