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【完結】前世男子中学生の公爵令嬢、魔王討伐に行ったんだけど……  作者: 一理。
本編

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最終決戦(1)


 ローマン総団長を始めとする魔導師五人はキックスマー侯爵、アッシュマイヤー公爵夫人の従者に扮し夜会にやってきた。


 今夜の夜会は王国全貴族が参加するため、王城の一番大きなホールが使用されているにもかかわらず混み合っていた。

 それでも侯爵、公爵夫人という高位貴族であるため人々が道を空ける。

 が、早々に問題が生じた。キックスマー侯爵が会場警備の騎士に制止されたのである。


 ばれたのかとヒヤッとしたが、どうやら侯爵は別の場所に誘導されるようだ。誘導された先を見てみると数名の貴族が集まっていて騎士たちが一見わからないように取り囲んでいる。


 ローマン総団長はすぐ察しがついた。集められているのは魔力量が多いといわれている者ばかりだったからだ。洗脳にかからない者を一箇所に集めているのだろう。


 従者は飲み物を取ってきたり様々な用事で主人の下を離れる事もあるので、用事を言い付かった振りをして会場に散らばる。


 ローマン総団長は王族の控え室の近くに潜んだ。


 ほぼ全ての貴族の入場が終わり、会場が喧騒に包まれている。やはり、ここ最近の事件や王城の雰囲気から不安を抱える者が多いようで人々の表情は暗い。


 ファンファーレと共に王の入場が告げられた。


 常ならば王と共に入場する王妃の姿も、ましてや謀反を起こしたと発表されている王太子の姿も無い。

 その代わり王の傍らに平凡な、どこといって特徴のない男の姿があった。そしてもう一人全身をマントに包み、フードを目深に被った長身の人物が王のすぐ後ろに立っていた。そしてその周りを騎士たちがずらっと取り囲んでいる。物々しい雰囲気に貴族達は一層不安を募らせた。


 ローマン総団長は騎士たちの更に後ろ、侍従の控える場所に陣取った。王に付き従っていた侍従が一行の後ろを歩いている時に物陰に引っ張り込み気絶させすり替わったのだ。


『三十秒後に決行』ピアスに触れ魔力を流す。同時に仲間に合図を送る。


 きっかり三十秒後、ホールの各所で爆発が起こった。

 魔導師たちが起こしたものだ。音と煙は凄いが殺傷能力はほとんど無い。

 ドーンという爆音と共に会場が揺れる。悲鳴が此処彼処から上がり人々がパニックに陥る。


 ローマン総団長は慌てた振りをしながら騎士を追い越し王に駆け寄る。


「陛下!そこは危のうございます!こちらに避難いたしましょう!」


 王を誘導しながら騎士に声を掛ける。


「皆様、陛下に後ろに下がっていただきます。前をお守り下さい」


 ガルファー・サリバーン司教はうろたえていた。

 彼は今まで人の陰で生きてきた。華やかな表舞台に立つ人の陰に潜み、支える振りをして陰謀を巡らせてきた。一世一代の大博打を打ち、今、華やかな場所に立ったのだ。

 上に立つ人間を煽てながら裏で根回しをして蹴落とす事は得意だがこのような突発的な出来事に咄嗟の判断ができずにいた。


 ローマン総団長が王を連れてその場を離れようとすると、王が抗う素振りを見せた。


「会場の治安と人々の安全を守るのは余の務めである。この場を――」


 ローマン総団長が急ぎ耳打ちすると一瞬目を見張り、一緒に下がろうとしたその時、フードを被った男が声を掛けた。


「待て。お前、見ない顔だがどこへ――」


「陛下の侍従にございます」


「嘘をつけ!この者を捕らえよ!」


 ローマン総団長は陛下を庇いながら爆裂弾をフードの男に放つ。

 フードの男は障壁を張り防いだものの衝撃でフードが脱げてしまった。

 

 異形の姿を見て人々から悲鳴が上がる。会場は益々混乱の坩堝と化した。


 ローマン総団長は陛下を庇いつつ殺到してくる騎士や衛兵達と戦っていた。魔物退治の時のように殺傷能力の高い魔術を使えれば事は簡単だが、相手は洗脳されているだけの本当は国に忠実な騎士たちである。できるだけ傷つけたくなかった。


 会場に散らばった魔導師たちも捕らえようとする騎士や衛兵たちと戦っている。


 人々は逃げようと出口に殺到したが会場の外から曲者達を捕らえようと駆けつけてくる騎士たちに阻まれ、今はホールの数箇所で固まって小さくなっている。


 ヴェルナーヴは壇上で前へ進み人々を見下ろした。


 まずい!とローマン総団長は思ったが騎士達に阻まれ思うように動けない。


 ヴェルナーヴの眼が光った。


「ここにいる全ての者よ。我を見よ!」


 その声はこの喧騒の中にあっても人々の耳にはっきり聞こえた。


「我が名はヴェルナーヴ。お前達を守護するものだ。

 そしてここにいるガルファー・サリバーンは王位を継ぐ者。王の要請を受け王になってこの国に繁栄をもたらす者なのだ。それを阻もうとする逆賊を捕らえ王を救出せよ」


 辺りは静けさに包まれた。人々は一瞬呆けたように動きを止め、その後「ヴェルナーヴ様!」「逆賊を捕らえろ!」「王を救い出せ!」などと叫び始めた。中には「皆どうしてしまったんだ」「魔族に騙されるな」と声をあげる者もいたが数少ないその叫びはかき消されてしまった。



 



 オレと王妃様を抱いたアルはちょうどその時ホールに入った。王族の使う廊下を通ってきたので壇上の端の王族の登場口に辿り着く。通路を駆けながらヴェルナーヴの声は聞こえていた。壇上の端に辿り着くと目の前に国王陛下の背中が見えた。


「父上!」


「ローマン総団長!」


 アルとオレが声を掛けるとローマン総団長は安堵の、陛下は驚きと喜びの混じったような表情を浮かべた。


 王妃様を降ろし、陛下と共にローマン総団長に託す。


「リア、行くぞ!」


 アルの声と共に前に躍り出た。


 雷撃を飛ばして襲い掛かる騎士を牽制すると共に氷壁を作り壇上のヴェルナーヴまでの通路を作り出す。


 左右を氷壁に囲まれた通路をアルは駆け出した。腰の聖剣を抜き床を蹴ってとびヴェルナーヴに切りかかる。


 ガキッ!


 アルの一撃を止めたのは魔族の男だった。


 誰?思う間もなく魔族の男とアルが激しく切り結ぶ。


 あ!あいつだ!名前は忘れたけど盗賊の首領だった蛇の獣魔族だ!


 あの男とアルだったらアルの方が断然強い。が、ヴェルナーヴがアルに魔術を放とうとしている。


 させるか!ヴェルナーヴの手から放たれた閃光はオレの放った爆裂弾に弾かれ……


 ドゴーン!!!天井に大穴が開いた。


「ひぃ……ひぃぃぃぃぃ……」


 ガルファー・サリバーンは転がるように壇上を下り人々間に逃げ込んだ。


 頭を抱え、周囲の人々に「私を守れ」と言いながら震えている。


 

 バン!ホールの大扉や各所の扉から第二騎士団の騎士たちがなだれ込んできた。騎士達は壇上のヴェルナーヴに迫ろうとするが、それを阻んだのが第一騎士団の騎士や夜会に参加した貴族の人々だ。


 事態が混乱する中、ヴェルナーヴの眼が再度光る。


 第二騎士団の騎士たちも洗脳しようというのか……


 阻止する為に爆裂弾を放とうとした時―――


「もう諦めろヴェルナーヴ」――低いがよく通る声


 第二騎士団の騎士たちがさっと避けると

   




 ―――魔王が現れた―――



 




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