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【完結】前世男子中学生の公爵令嬢、魔王討伐に行ったんだけど……  作者: 一理。
本編

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32/47

最終決戦にむけて


 その日オレは浮かれていた。


 やっと念願の一級魔導師になったんだ。15歳、史上最年少での合格。何年も何年も頑張ってる人から見れば簡単になれたように見えるかもしれないけどオレだってめっちゃ頑張ったんだ。王国でも片手の指ほどしかいない一級魔導師は陛下から直々のお言葉と記念品を賜る事ができる。


 真新しい金糸の刺繍で縁取りされた一級魔導師のローブを着てオヤジと共に登城した。

 陛下からありがたいお言葉を賜り、ご機嫌に謁見室を出てオヤジと廊下を歩いていた。

 偶々、ホントに偶々、辺りには誰もいなかった。謁見室に続く廊下は人が多く行き交いするところではないがまったく誰もいなくなるのも珍しい。鼻歌を歌いながらオレは掌の上に風の刃を作り出した。掌の上で回転させる。


「リア!」


 オヤジに窘められたが浮かれてたオレは止めなかった。


「大丈夫だよ。オレは一級魔導師なんだ。このくらいの制御朝飯前―――あ」


 浮かれてちょーーーっと多く魔力を込めてちょーーーっと大きくなりすぎた刃は飛んで行き―――


 スパーーーン!!何代か前の王様の銅像は腹のあたりで横一文字にぶった切られた。


 ズズッ切られた銅像が台座から落ちそうになる。オヤジはすっ飛んでいってそれを受け止めた。


 ほーっと二人で息を吐く。銅像は中が空洞になっていた。中身も全部詰まっていたらオヤジがぎっくり腰になるか支えきれずに落として欠けるかだったが、中が空洞だったのでそこまで重くは無かったのだ。


 それから二人で銅像を元に戻し切れた部分は周辺を火魔法でちょっと溶かし境目がわからないようにごまかした。


 二人だけの秘密。墓場まで持っていく秘密だ。その後何度かその廊下を通る機会はあったが、今も実はちょん切れているなんて誰にも気付かれていない。








 何でそんなところに隠すかなぁ……いや、他の人には絶対わからないだろうけど……


 情報を共有するためアルと一緒に魔導師団の寮に戻った。そこでしぶしぶオレは玉璽と鍵の隠し場所を打ち明ける事になった。


 ―――大爆笑された。え?いいの?王様の銅像壊しちゃったんだけど……もっと叱られると思ってた……

 アルなんか涙流して笑ってる。あのロゼッタール公爵が『いつも取り澄ましたアッシュマイヤーが……』なんてテーブルをドンドン叩きながら笑ってる。


 ひとしきり笑った後、ようやく今後の打ち合わせに入った。

 アッシュマイヤー家の問題は一応解決した。義母とフィリスが登城しないとそのうち疑念をもたれるだろうがごまかしつつ早期に決着をつけたい。


「さすがアッシュマイヤー公ですな。玉璽と鍵を隠してくれたおかげで王城を占拠した奴らは身動き取れなくなった訳だ」


 キックスマー侯爵が感心したように言った。


「しかしいつまでも猶予がある訳ではないだろう」


「そうですね。敵も強引な手を打ってくるかも知れません」


 ロゼッタール公の言葉にローマン総団長も同意をしめした。


「玉璽と鍵を手に入れるには王城に入らなければならんな」


「武力で押し入れば両陛下の身が危険に晒されるかもしれません」

 

 ローマン総団長の言葉にアルは不安そうだ。苦笑いしながら言った。


「今ここにいる者はお尋ね者ばかりだからな。すんなりとは入れてくれないだろう。自分の家なのだがな」


「カンタス、イルラーク伯領の暴動鎮圧は少々手こずっているようですが他の地域の暴動は鎮圧して明日、明後日辺りにはロゼッタール公の領騎士団や第二騎士団も王都に到着する見込みです」


「第二騎士団は王城に入るのか?」


「いいえ、カルルック団長は魔力が多いので大丈夫ですが他のものが洗脳されても厄介なので王都に入場せず近郊で駐屯するそうですよ」


 ロゼッタール公爵の問いにローマン総団長が答えた。


「王城の第一騎士団の戦力をどうにかして分散できないか?」


 そのアルの問いの答えは翌日もたらされた。







  『〇月×日の夜会において国王陛下から重大発表がなされる。必ず出席するように』との触れが全ての貴族に出された。全てとは言っても捕縛命令の出ているロゼッタール公爵家には届いていない。そして同じく捕縛命令が出ているローマン総団長が捕まっていない事を理由に魔道師団の団員全てに謹慎命令が出た。


 謹慎命令が出ると同時に第一騎士団の騎士三名と兵士十名が派遣され魔導師団の建物を取り囲んだが、オレ達は既にアッシュマイヤー公爵邸に居を移していた。ほとんどの魔導師も一緒に。


 留守番に残ったのは新人魔導師三名だけだ。その三名は『あれっぽっちの人数で魔導師を押さえようなんて馬鹿にしてるよな~』『私達しかいないのいつ気がつくかしら?』『気がつかないんじゃね?』なんて窓から騎士達を見下ろして話していたらしい。



 アッシュマイヤー邸でオレ達は相談をし、夜会の日に一気に片をつけようと決めた。

 夜会で多くの貴族が王城を訪れれば当然警備も分散する。

 夜会で陛下が姿を見せるとなれば王妃様は人質に取られている。王妃様の奪還と同時にヴェルナーヴ、サリバーン司教の拘束。国王陛下の保護。これらの事を夜会に訪れた貴族たちの安全を確保しながら行なう。

 決戦まで一週間、連日話し合いが行なわれ、それぞれの役割分担や行動をおこすタイミング、不測の事態への対処など様々な事が議論された。


 

 オヤジは自分も参加したがったが、まだやっと身体を起こせるようになったばかりだ。ロゼッタール公爵に『任せておけ』と言われ固い握手をしていた。やけに固い握手でギリギリと音が聞こえそうだったが。


 あ、オレの素の姿は早々にバレましたよ。というか魔導師団の皆は元から知っていた。ローマン総団長に『隠す気あったんですか?』と言われた。あったよ。おおありだ。

 ロゼッタール公爵とか以前ほとんど話したことが無い人達は慎ましやかな女性だと思っていたらしいが、接しているうちにだんだんわかってきていたようだった。

 オヤジはもう諦めの境地だ。『がさつなお前でも嫁入り先は決まりそうだから……もう好きにやれ』って嫁入り先って何?聞いてないけど!



 夜会前日、義母とフィリスの洗脳が解けたらしいと聞いた。

 会いに行こうとしたら合わせる顔がないと言っているらしい。義母はオヤジに離婚を願い出たそうだ。

 それを聞いてオレは強引に会いに行った。


「義母上、フィリス」


「リア、ごめんなさい……酷い事を言ってしまったわ。謝っても許されない事を……」


「義母上、本心では無いのでしょう。洗脳されていたのだから……」


「勿論本心ではないわ。でも、貴方にあんな事を言って、旦那様を騙して秘密を聞き出そうなんて……私は私が許せないの」


「お姉さま、私もです。こんなにお姉さまの事が好きなのに苛められてたと言って回るなんて……お姉さまの妹でいる資格など無いのです」


 そんな事ないから。いいえ自分が許せません。とひとしきり押し問答をして、オレはキレた。


「ああ!もう!義母上もフィリスも!オレがいいって言ってるんだからいいんだよ!申し訳ないと思うならこれからオレのことをうーんと愛してくれ!それで嫌な記憶を上書きしてくれ!」


 義母とフィリスは眼に涙をためて……そうして三人で抱き合った。


「では、私達も協力させてくださいね!」


 明日の夜会の招待状はアッシュマイヤー家にも届いている。オヤジは怪我が癒えていないので義母とフィリスが出席する事になる。そこで何か役割を振って欲しいとフィリスは言った。


 洗脳が解けた後でも記憶は残る。何故自分はあんなことを言ってしまった、やってしまったんだろうと思うらしい。洗脳されていた事を知らされなければ自分は本当はそう思っていたのかもしれないと自分を無理矢理納得させるらしいが。


 フィリスの申し出を受け、明日の夜会、オレとアルはフィリスの侍女と護衛に扮して王城に乗り込む事にした。敵が洗脳が解けたことを気がつかなければ内部にまで潜り込めるかもしれない。


「お任せ下さい!上手くやりますわ!」


 フィリスは鼻息荒かった。 



 




 私の拙い文章を読んで下さっている皆様、ありがとうございます。

 物語もようやく終盤になりました。

 あと数話で本編を終わりにするつもりで頑張っております。

 応援していただけると嬉しいです。

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