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【完結】前世男子中学生の公爵令嬢、魔王討伐に行ったんだけど……  作者: 一理。
本編

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カストゥールの密会(2)


 公爵たちの話によると――

 王城封鎖の報は暴動の鎮圧に向かった先でもたらされた。ロゼッタール公爵はすぐに使者を王城に送ったものの門前払い。そしてあの馬鹿げた発表だ。公爵はすぐに領地から引き返した。

 

 登城したものの両陛下には病気を理由に会う事が出来ず、両陛下の私室に続く廊下には第一騎士団の騎士が多数警備しており強引に通る事も出来なかった。


 控え室で待っているとやってきたのはガルファー・サリバーン司教だ。『私が全権を任されている』と勅書のようなものを持っていた。挙句の果てに『ロゼッタール公爵は元王太子殿下に唆されたのでは?そうか、謀反に手を貸したのですな』と言い出した。『殿下が魔大陸に渡っている事は司教も知っているであろう』と公爵が返すと『はて、何の話でしょう?殿下は謀反が失敗して逃亡中です。あ、元殿下でしたな』と嘯いた。


 公爵を捉えようとする近衛騎士と公爵の護衛騎士が一触即発になった時、その場にローマン総団長が現れた。ローマン総団長は公爵を連れ出し扉に障壁を張って逃亡。今、二人には捕縛命令が出ているそうだ。


「なに、私の部下も領民もこれっぽっちも私の無実を疑っておらんよ」


 公爵は楽しげに言った。お屋敷の使用人や領地の部下、領民総出で捉えに来た役人を翻弄し公爵の居所をつかませないらしい。


「私のほうも心配ありませんよ」


 よくわかってますよローマン総団長。魔術師団の団員は一癖も二癖もある連中ばかり。何もやましい事がない時でも煙に巻こうとしたがる連中ばかりなんだ。


 そして王都から遠いこのカストゥールで情報の交換と対策を練ろうと集まっていたらしい。

 

 あの魔王討伐会議に出ていた者はオレ達が魔大陸に行ったことを知っている。知っている上でオレとアルに謀反の疑いをかけた。ヴェルナーヴを含む教会関係者が首謀者もしくはそれに近いものであることは間違いないが、第一騎士団も加担している。それに加え今王都はセルフェ侯爵の私兵や騎士たちが治安維持と称して見回っているらしい。


「両陛下はご無事でしょう」


 ロゼッタール公爵はアルに向かって頷いた。


「殿下、両陛下の私室に繋がる通路の警備は物々しいものでした。両陛下がご無事な事の証でしょう。ただ、救出は難しいと思われますが」


「ありがとうロゼッタール公。父上と母上は私が必ずお助けする」


 アルの言葉は力強かった。


「もう一つ気になるのはアッシュマイヤー公です」


 ローマン総団長の言葉にオレは緊張した。オヤジに関しては最初に怪我をしたと聞いて以来何も情報が無い。


「アッシュマイヤー公が怪我をして臥せっていると報告があった後、アッシュマイヤー家の門は閉じられておりました。公爵本人ばかりでなく夫人や令嬢―リア嬢の義妹ですね―も一切外出しない。それが、先日御令嬢が久しぶりに学園に登校したらしいのです」


 オレは10歳の頃から魔術師団で英才教育を受けたので学園には通わなかったが、フィリスは通っている。


「総団長、フィリスは元気でしたか?私が謀反を起こしたと容疑をかけられて肩身の狭い思いをしているのでは?父については何か話していたのでしょうか?」


「リア嬢、落ち着いて聞いてくださいね。

 義妹さんは少しぼんやりしている感じはしたが他に異常は見られなかったそうです。そして、義妹さんの話では、殿下と謀反の相談をしているところを公爵に見られ、怪我を負わせて逃走したと。実は義理の妹である自分も普段から虐げられていたと言って泣いたそうです」


 オレは立ち上がっていた。


「嘘だ!嘘だ!フィリスが……フィリスがそんな事を言うはずがない!」


「リア、落ち着け!」


 アルがオレの肩を掴んで無理やり座らせる。


「嘘だ……フィリスが……そんな……」


 オレは聞いた言葉を忘れたくてかぶりを振った。何度も何度も……でも消えてくれない……


「……ア、リア!俺を見て!」


 不意にアルの言葉が飛び込んできた。

 アルはオレの肩を掴んで自分の方を向かせる。

 アルの眼を見たらだんだん落ち着いてきた。

 しばし二人で見つめ合う……


「オホンッ!ウオッホン!」


 誰のかわからない咳払いで我に返る。

 見回すと……うわーーおっさん達のニヤニヤ笑いのオンパレード……「いやあ、青春ですな」とか言ってる。


「コホン」アルが一つ咳払いをして話し出した。


「リア、魔王の言った事覚えてる?竜魔族の眼のこと」


「あ!」


「殿下、竜魔族の眼とは?」


 皆に竜魔族の眼は服従や洗脳ができる事を説明する。


「ふうむ……アッシュマイヤー家の令嬢はその眼の力で洗脳されているかも知れないと」


 ロゼッタール公爵の言葉に続きカルルック団長も得心がいったように続けた。


「第一騎士団の騎士達も洗脳されているのでしょう」


「殿下、私たちもその眼に見られたら危ないのでは?」


 ローマン総団長の疑問をアルはすぐさま否定した。


「いや、魔力の多いものはかからないそうだ。ここに居る面々は大丈夫だろう」


 魔術を学ばなければ魔導師のようにいろいろな術は使えないが、大抵高位貴族は魔力量が多い。騎士団は内向き魔力の者が多いが団長ともなれば魔力量は多いだろう。


「第一騎士団長は?」


 ロゼッタール公爵の問いにカルルック第二騎士団長が答えた。


「第一騎士団長、ウルバルト・セルフェは魔力量が少ない事がコンプレックスでした。実家の権威で第一騎士団長になりましたが、実力で団長になったスティングレイを疎んでいました」


 ふうん、あの第一騎士団長はクリフを苛めてた訳だ。前から偉そうなヤツだと思ってたけど……


「セルフェ侯爵の弟か……」アルが呟いた。セルフェ侯爵もあっちの陣営っぽいよね。



「しかし、アッシュマイヤー家の御令嬢を操ってまで公爵を閉じ込めておきたい理由は何でしょう?」


 カルルック団長の問いに皆答えられなかった。


「そのあたりに鍵はありそうだな」


 かくしてアッシュマイヤー公爵、つまりオヤジ救出作戦が立てられる事となった。










 

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