魔王との決戦(1)
夕食後、魔王城に潜入する手筈が整ったとスーネイル卿から話があった。もうこの屋敷に来て三日目だ。
ちょうどこちらからも相談しようとしていたところだった。
二日後、魔王城に備蓄食料が沢山搬入されるらしい。それに紛れ壷の中に潜んで魔王城に潜入。備蓄倉庫に隠れ夜まで待つ。
「夜、我々の仲間が貴方達のところに行きます。王城の秘密の抜け道を知っている者です。いやあ、この者を手配するのにてこずりましたが……いや……ウホン……その者の指示に従ってもらえば魔王様の私室まで行ける筈です。魔王様の私室の近くには近衛の者も控えているのでくれぐれも気付かれぬよう用心してくだされ」
「わかった。ご協力感謝する」
アルの言葉にスーネイル卿は満足そうににっと笑った。
「魔族と人間達が手を取り合う未来のためです。見事魔王様を倒して下され」
二日後の夜、オレ達は備蓄倉庫にいた。
壷に隠れる前、荷馬車の幌の隙間から魔王城を初めて見た。
久々にアニメのシーンが頭に蘇った。この城はやっぱり見覚えがある。激戦の末、辿り着いたオレ達が見上げた城だ。
ん?オレ達激戦なんてしてないな。やっぱりアニメと話が違ってきているのかも……
小さくノックの音がした。コンコンコンと三回、少し間を空けて二回、また間を空けて三回。
クリフが薄く戸を開ける。小柄な男が立っていた。辺りは暗い。月明かりで周囲がなんとか見える程度だ。
男は無言でオレ達を促した。足早に歩く男の後をついていく。男は人目を避けながらしばらく歩き、城壁の片隅で足を止めた。
なにやらゴソゴソ壁に向かってやっていると壁の一部かポッカリ開いた。
素早く中に入る。中は真の暗闇だ。オレは魔術で掌に小さな灯りを灯した。
男は小柄で黒髪だった。あのフェルベの町で会った魔族マストゥにどことなく似ている。
「いいですか、私の言う事をしっかり覚えてください。
ここを真っ直ぐ行くと上に上る階段があります。階段を上って左に行くとまた階段があります。上って今度は真っ直ぐ。曲がり角を左に行くと……」
かなり複雑だ。まあ、城の抜け道だもんな。
「さあ、行ってください」
「貴方は?」
「私は外に出てここを閉めます。外からしか閉まらないんです。中から開けるときはここにレバーがあります。さあ早く!行ってください!」
「ご協力感謝する」
クリフが言うと
「やめてくれ!私は協力なんてしたくなかったんだ!」
男が吐き捨てるように言う。
「私はきっと呪われる……竜神様に呪われる……でも娘の為だ……仕方なかったんだ……」
小声でぶつぶつと呟くと外に出て行ってしまった。
扉が閉まる。辺りは真の闇。オレの掌の小さい灯りを頼りにオレ達は歩き出した。
男の指示通りに歩き続けて数十分。オレ達は魔王の私室の壁の裏にいた。
明かりを灯したオレを先頭にここまで歩いてきたんだが、実は三回、オレは道を間違いかけた。その度にアルにそっちじゃないと腕を引っ張られ、あきれられた。
でもそのおかげで緊張感も解れた。肩の力も抜けた。オレ、いい仕事したじゃん。
「いいか、このレバーを引けばこの壁が開く。魔王の寝室に入れるはずだ。
合図と共に一斉に突入、入ったら外に音が漏れないようにリアはすぐに結界を張ってくれ。
俺とクリフは一気に魔王に切りかかる。リアは援護、どちらかが怪我したらサーラが治癒してくれ。サーラが治癒している間はリアがサーラの身を守る。いいな。」
皆で頷く。
「あの、皆さんに加護を」
サーラがオレ達に加護を授ける。魔王にどのくらい効果があるかわからないが、できる事は何でもやっておくべきだろう。
それから皆で手を握り合い見詰め合った。深く頷きあう。
「行くぞ!」
アルの号令と共に部屋に突入した。
夜にあと1、2話投稿します。




