第八話 能登半島沖墜落事故
前回のあらすじ:ついに話は赤城に配属された時の事まで進んだ。
伊吹は赤城に配属され、部下を持つ事になった。息吹が率いる隊は第五飛行隊である。
第五飛行隊は奇襲を目的として創設された部隊、そしてその部隊に配属された機体は「威風改』という専用機であった。
そして伊吹はその威風改が起こした"事故"に付いて語りだす!
「赤穂は能登半島沖墜落事故って知ってる?」
「はい!海軍の艦載機開発に大きな影響を与えたあの事件ですよね!」
「そう、そして赤穂」
「はい?」
「威風改ってどういう機体だったかな?」
「えーっと、海面スレスレの超低空飛行を行うために防水性能を向上させた機体でしたよね?」
「威風改が配備されてた飛行隊は?」
「確か第五飛行隊だけの配備………!!!!」
「その通り」
「じゃ、じゃぁ司令が言ってたあの時の事って言うのはあの事件の事だったんですか!?」
「まぁ、そうなるね」
「何ですかその曖昧な回答は」
「だってあれ事故じゃないもん」
「事故じゃない?どう言う事ですか司令?」
「先輩、いきなり触れるのはちょっと……」
「どうせ最終的には話すことになるんや、それが早いか遅いかだけだよ」
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2019年 能登半島より北西26海里
第五飛行隊は演習を行っていた。
その演習とは『標的艦の電探に捕まらずに接近する』と言う物であった。
この内容の演習自体は皆慣れていた。
高度16ft以下で接近し標的艦の付近で急上昇する。
話を聞くだけだと簡単に思えるが実際はそんなに簡単ではないし、むしろ難しい。
高度16ft以下で長時間飛行するのが難しいのだ。常に集中していなければならない。
少しでも油断して高度を下げたら海ポチャだ。(その点水上機は素晴らしい、着水してもほぼ問題が無い)
「高度計から目を離すなよ~?」
「了解!」
無線の調子も良好!
皆楽しんでいるみたいだ、嫌々やるよりよっぽど良い。
でも気を抜いたらまたもや海ポチャ。普通の飛行より死への距離が近いよ。
ちなみに今回の標的艦は海上保安庁の巡視船『PL51ひだ』である。
現役の巡視船、操作を誤って激突でもしたらと思うと寒気が止まらない。
まぁ、皆上手くやってくれるでしょう。そうだと信じたい。
ってか良く海保は承諾したよ。こんな危険な演習。
下手すれば船1隻と乗員失うのに。それ位ボク達は信頼されてるのかな?
「目標まで10kmを切りました」
「ん、了解した、5㎞を切ったら5000ftまで上昇」
元々第五飛行隊自体、低空飛行が得意なパイロットを集めた部隊。
個人的に他の部隊よりも練度は高いと思う。
おっと、5㎞を切った。よし、上昇。
「全機!高度5000ftまで上昇!」
操縦桿を引き高度を上げる。
僚機も上昇し始めた、今回も演習は順調に進行中。
後は全員で帰投するだけ。帰ったら何しようかな。
七分後…… 飛燕隊(第五飛行隊の通称)帰投中
うんうん、今日も威風改はカッコいいなぁ。
しかし、いずれ威風改も旧型機になってしまうのか。
時代の流れって言うのは恐ろしいね。
にしても、帰りにも超低空飛行をしないといけないのは少し堪える。
発案者が言うのもなんだ、我慢しよう。
「先輩!先輩!」
「どったの?」
「先輩のTACネームっていいですよね~」
「それずっと言ってない?」
「気のせいですよ~」
「それで気のせいだった試しが無いんだな、これが」
ボクのTACネームは『スワロー』燕だ。
その影響も多少あるのかボクの機体の尾翼にはスワローエンゼルが書かれている。
七海のTACネームは『ファルコン』隼だ。
七海の方がカッコいいと思うんだけどね、ボク。
ん?上から何かが飛んできてる様な。
太陽の光が眩しくて見えにくい。
あれは……?
「方位144より8機の機影が接近!」
無線で福田が知らせてくれた。
福田はボクよりも目が良い。
彼らも超低空飛行をしている様だ。
「ホーク(福田のTACネーム)機体の所属は分かる?」
「えーっと……あ、空軍のF-15J見たいですね」
へぇ、あっちも同じ訓練してるのかな?
でもそんな報告無かったけどなぁ。
ん?なんかミサイルが飛んできてるような気が……
ボォォォォン!
!?長嶋の機が!
「こちらは日本海軍、第五飛行隊!空軍機へ次ぐ!直ちに攻撃を中止せよ!直ちに攻撃を中止せよ!
こちらは日本海軍第五飛行隊!直ちに攻撃を中止せよ!!!」
ボクは無意識にその空軍機に警告を発していた。
きっと誤認したのだろう、きっとそうだ、そうに違いない。
しかし、その空軍機は攻撃を辞めなかった。
「各機に次ぐ!速やかに赤城に帰投する!高度制限解除!死にたくなければ逃げろ!我々の機体は機銃以外武装を持っていない!」
あれらは本当に空軍機なのか……?
F-15Jであるのは確定であるが、果たして……
キィィィィィィィン(F-15Jが横を通り過ぎる)
…………
空軍機だ、日の丸が見えた上に『日本空軍』と書かれていた。
きっと小松から上がってきた機体なんだろう。
早く赤城に帰投しないと!
味方に殺されてしまう!
ボクは逃げるためにスロットルを最大まで上げて空軍機から頑張って逃げた。
しかし……
次々堕とされて行く僚機。ボクの部下達。
何なんだあのF-15Jは!どうして?何故ボク達を狙う?
海軍と空軍の間に確執があるのか?
それとも反乱……?
いや、そんな事を考えてる暇はない!
逃げるんだ、あいつらから……!
二十分後…… 赤城艦内自室
「…………」
結局無事に帰ってこれたのはボクと七海だけ。
それ以外は全員海の藻屑だ。
さぁ、事情聴取の時間だ。
でもどうせ、信じてくれないんだろうな『空軍機に攻撃を受けた』なんて
「はぁ……」
ボクが生き残って良かったの?ボクは寂しいよ。
「あはは……」
あれ?目から水が……?
あぁ、ボク泣いてるんだ。
…………
これからボク、何したら良いんだろう。
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「……って言う事だよ……」
「え?墜落は事故じゃなかったんですか……?しかも、空軍に……?」
「先輩……」
ボクはあの時と同じように涙が出ていた。
その時、1つの写真が目に入った。
飛燕隊の皆で撮った集合写真。
ボクはそれを手に取った。
「福田に長嶋、福島……どうしてあの時、爆装を拒否したんだ?」
「爆装を拒否……」
「あぁ、そうか、別に必要無いからか」
ボクはまた自問自答の状態に陥っていた。
「先輩!」
「はっ!……」
「司令……そんな事があったんですね……」
「あったんだよ、そんな事がね」
「でも司令、1つ質問です」
「ん?何だい?」
「何故、能登半島沖墜落事故の真実が今まで秘匿されてきたんですか?」
「軍が隠蔽したんだよ」
「隠蔽!?」
「そう、隠蔽」
「では何故司令と中佐殿は告発しないんですか!」
「口封じだよ、口封じ」
「口封じ?お金でも渡されたんですか?」
「違うよ、お金なんかよりも凄いの」
「何ですか……?それは」
「今の地位だよ」
「今の……地位?司令ですか……?」
「その通り、ボクを司令にするから黙っててくれないかって言う事だよ」
「それは誰から言われたんですか?」
「誰にも言われてないよ、急に中将にされて、司令にされて
あまりにも不自然すぎるたんだよ、だからボクは直ぐわかったんだよ
これが"口封じ"である事にね」
「………」
「どうしたの?赤穂」
「まさかお二人がそんな過去を持っているなんて……」
「普通にしてたら皆意外と気づかなかったね」
七海の言う通り、全然気づいてなかった。
皆ボクと七海がただ単に優秀なだけだと思っていたみたい。
「ん~眠いなぁ」
「当然ですよ先輩、もう22:00を回っているのですし」
「そうですね……では私はこれで失礼します、貴重なお話ありがとうございました」
「いやいや、ボクも溜まってたのが吐けて良かったよ」
「では、おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
ガチャ。バタン。
「七海」
「はい?」
「今日は一緒に寝たいよ」
「ふぇっ!?そ、その、わ、私で、い、良いんですか」
明らかに七海は恥ずかしがっていた。
そんなに恥ずかしがる事かな?
ボクと七海は12年も一緒に居る。
今更恥ずかしがる事も無いと思うんだけど……。
「七海が良いんだよ、恥ずかしがらずにさ」(ベッドに入る)
「で、では失礼します……」(ベッドに入る)
やっぱり七海は可愛いなぁ。
それにしても、あの時何故空軍機はボク達を攻撃したんだろう?
この疑問が未だに解けない。まぁ、今となっては解明はほぼ不可能だろう。
さぁ、明日は佐世保に入港する日だ。あっちの司令に挨拶しないと……。
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