第七話 旗艦赤城
前回のあらすじ:小月教育航空群と海軍幹部学校の時のことを語った伊吹。
教育航空群を2年で卒業し、幹部学校に放り込まれるという異色の経歴を持つ伊吹。
そして伊吹の過去の話は遂に赤城に配属された所まで進む……
「さぁ、次は……」
「先輩……」
「……赤城に配属された後の話だよ、多分赤穂が一番聞きたがってる所だよね」
「はい、私は司令が赤城に配属されてた時の事が知りたいです」
「幹部学校を卒業してすぐやったね」
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第一航空戦隊 旗艦赤城
「これが戦後初の空母……!」
「「赤城!!」」
ボクは凄く興奮していた。
そりゃぁ、あの赤城のパイロットとして乗艦できるのだから。
当然興奮しない訳がない!
「先輩!凄いですねっ!」
「あぁ!凄いね!」
飛行甲板上には威風が大量に並べられている。
夢に見た光景が今目の前に広がっている。
トコトコトコトコ……(艦橋から誰かが歩いてくる)
「先輩、誰か歩いてきますよ?」
「ホンマや、なんかどっかで見たことあるような」
あの姿、かなーり見たことある。
誰やったっけ?
「久しぶりだね、お二人さん」
「……!!!!!」
思い出した!教官だ!教官!
「お、お久しぶりです!教官!」
「伊吹、教官って呼ぶのはやめなさい、なんか恥ずかしい」
「で、ではなんとお呼びしましょう?無難に司令とか……」
「ん~……先輩!今日から俺の事は先輩って呼ぶように!」
「わ、分かりました先輩」
ボクに先輩って呼ばせたいのかな?別にいいんだけど。
「それじゃ、艦内を案内するよ~」
この言葉にボクは少し疑問を感じた。
「案内って司令の仕事なんですか?」
「いや、違うよ」
違うんかーい、ならなんで司令自らやるんやろ。
「ではなぜ先輩自ら案内を?」
「気分だよ気分」
「き、気分ですか……」
「そっ、気分」
一通り艦内を案内してもらいました。
「さぁ、最後に案内する所はここだ」
ガチャッ。キィィ……。
「ミーティングルームだ」
「「おぉ~」」
「ここでパイロット達への作戦説明を行う、君たちはパイロットだからな、良く使う事になるだろう」
「椅子が柔らかい!」
「液晶画面も付いてますよ!」
「ホワイトボードもある!」
「「豪華だなぁ……!」」
凄い豪華な設備。
てっきり椅子は固くて、黒板1枚だけしかないものだと思っていた。
ボク嬉しい!
「あ、伊吹」
「はい?何でしょうか?」
「今日から君は中佐に昇進だ」
「はい?え?え?中佐?」
「うん、中佐」
「良かったじゃないですか先輩!大尉から中佐に昇進ですよ!」
「2階級特進……別にボク何も功績あげてないのに……?ボク死んじゃうの……?」
「三沢も大尉から少佐に昇進だ、おめでとう」
「!ありがとうございます!」
「それと伊吹」
「は、はい?」
「さっき功績をあげてないと言ったな」
「えぇ、別にボク実践でなんやかんやした訳じゃないですし……」
「それは違うぞ」
「へ?」
「教育隊を2年で卒業した、これが君の功績だよ」
「えっ?なら七海の方がもっと凄いんじゃ……?」
「三沢は君の動きに付いてくるだけで精一杯だったよ、それでもあの機動に付いてこれる事自体異常なんだけどね」
「そうですよ!あんな機動付いていくだけで疲れますよ!
特に低空飛行の時なんか地面にぶつからないかヒヤヒヤしてましたよ!」
「ま、そういう訳だ、分かったか?」
「は、はい」
「よし、伊吹も納得した所でだ」
「?」
「君の部下に会ってもらおうか」
「部下?」
「入って来てくれ」
ゾロゾロ……
そう先輩が言うと数十人この部屋に入って来た。
部下って言ってたけどどういう事だろ?
あ、整列して敬礼してる。
「第五飛行隊!全員集合しました!」
そう真ん中の子が言った。第五飛行隊?
「え、第五飛行隊ってどういう?」
「伊吹、君には第五飛行隊の隊長を務めてもらうよ」
「え?え?ボクが?隊長?」
「そうだ、三沢には副隊長をやってもらう」
「こ、これは正式な辞令……なんですよね?司令?」
「あぁ、軍令部からの正式な辞令だよ」
「あ、安心というより困惑してます、ボク」
「というか伊吹の一人称ってボクなんだ……」
「あっ、一応上官とかには私って言ってるんですけど、あまりの事態に素が出てしまいまして……」
「そうかそうか!まだ俺の知らない伊吹が居るんだな」
「あはは……」
七海が凄い圧出してる、ちょっと怖い。
多分先輩はその圧に気づいてる、汗が凄い出てる。
「じゃ、じゃぁ俺はここらで失礼するよ、後は君たちでやってくれ」
「「はっ!」」
「じゃ、じゃぁね」
キィ。バン。
相変わらず扉の音が重い。
それにしても何したら良いんだろう。
部下達って言われたけど何も知らないし分からない。
まぁ、取りあえず自己紹介でもしようか。
「じゃぁ皆座って座って、立ってるの辛いでしょ」
「ご配慮感謝します!」
礼儀正しすぎるなぁ、もっとラフでええのに。
「七海も座ってええよ~」
「そ、それでは失礼します」
「じゃ、改めてボクの自己紹介をしよう
ボクの名前は秋月伊吹、今年で21歳!」
年齢を言った瞬間ざわつきだした。
まぁ当然だろう、なんせ21歳なんやから……。
ボク自身が一番困惑してる。
「ん~なんか気になる事とかある?」
自分で考えるのが面倒になってきた、質問形式にしよう!
「はい!中佐殿、その刀は?」
「あぁ、これ?ボクの刀だよ、日本刀は芸術品って言う枠組みだからね、特別な許可は要らないよ」
「その刀の名前は?」
「紀伊刀って言うんだ」
「紀伊……刀ですか、和歌山のあたりの旧国名が付いていますね」
「そう、多分和歌山のあたりで作られたんだと思うけどね」
「斬れるんですか?」
「うん、斬れるよ」
「凄いですね!」
「はい」
「ん?」
「中佐殿は低空飛行が得意とお聞きしたのですが、事実でしょうか?」
「ん~低空飛行は得意なんじゃないかな、多分」
「そうですか、でも何故多分なんでしょうか?」
「自分で得意って言うのもなんかね、引かれそうやし」
「そ、そうですか」
十分後……
全員の自己紹介が終わりました。
第五飛行隊はボク含めて15名、機体は最新鋭の艦上戦闘機の『威風改』が配備される事となった。
威風改は従来の威風と比べ防水性能が格段に向上した。(それ以外はほぼ変わりない)
わざわざ少ない軍事費を絞り出して、威風と性能の変わらない威風改を作り出したのにはそれなりの理由はある。
噂に聞いたところによればこの機体は我々第五飛行隊専用機だというのだ。
それが何を意味するか、そもそもこの第五飛行隊創設の理由は『敵電探に探知されずに艦隊に接近する』事を目的とした戦闘機隊である。
電探に感知されない方法は色々ある例えば、ステルス機を使用するとか、電探網の穴をすり抜けるとか色々ある。
今回は後者だ、敵電探網の穴をすり抜ける。
しかし陸上配備の電探と違い、艦隊の電探はあまり穴が無い。
では如何にして電探網をすり抜けるか?答えは単純だ、X,Z軸で避けるのではなくY軸で回避する。
つまり電探が探知できない高度にて接近し、急上昇若しくは急降下を実施し奇襲をかけると言う作戦だ。
超低高度にて接近し、奇襲を仕掛けるという目的でこの第五飛行隊が創設されたのである。
さて、我々は空母飛行隊である。つまり海上にて超低高度で接近すると言う事である。
ここで威風改が防水性能を向上させた理由が分かるだろう?
海面スレスレで接近を試みる上で防水性能が低いと言う事は致命的問題である。
元々威風は艦上戦闘機でありながら防水性能があまりよろしくない。
その欠点を克服したのが威風改である。
ボク自身の意見を述べるとするならば、防水性能を高めるついでにミサイルの搭載数を増やして欲しかったなと思う。だけど時すでに遅し、もう生産されたものが赤城に搭載されている。
「先輩!」
「ん?」
「随分と長い時間何かを考えていた様に見えますが?」
「あぁ、威風改について少し、ね」
「そうですか~」
「流石中佐殿、こんな時でも職務に付いて考えておられるのですね!」
「あ、あぁ」
新型機を造る程の事なのだろうか?この作戦は。
防水性能があまりなくても、32ft位なら問題なく飛べる。
軍令部は32ftでも足りないと?16ft位でようやく満足するのだろうか?
それにしても軍令部の考え方が良く分からない。
ボクと七海を何故すぐに卒業させたのだろう?
ボクは2年、七海に至っては1年だ。
もしかしてボクの飛行技術をさっさと実践投入したいから卒業させたのだろうか?
そして幹部学校に放り込むのは指揮官としての技術を持たせる為。
あ、辻褄が通った。
「あの~中佐殿?何か思いついたような顔してますが?」
「いや、何でもないよ」
「さ、左様ですか」
「あ、もうすぐお昼ご飯の時間だよ、腹が減ってはなんとやらだぁ」
「そうですね、中佐殿」
「せんぱ~い!食堂行きましょうよ~!」
「今行くよ~ さ、皆行こうか!」
「「「「はい!!!!」」」」
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「……これが赤城配属になってすぐの出来事やね」
「あのー、威風に付いて考え過ぎじゃないですか?司令」
「ホントそれよ」
「先輩、あの時あんな事考えてたんですね」
「というかそんな細かい事覚えてますね、司令」
「ボク記憶力って良い方なのかな」
「どうでしょう?先輩」
「……じゃぁ、あの事件について話そうか」
「はい、先輩」
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