第四十八話 凪が居る蒼龍
前回のあらすじ:凪が到着し、久しぶりの再会に興奮する秋月姉妹。
凪は基地司令室の備品や海軍の軍服に興味津々。特に刀やPCに興味を持った。
そんな事を話していると、昼食の時間がやってきた。
秋月姉妹と三沢姉妹の4人で昼食を取る。
凪の漫画盛りのご飯に驚きつつ、食事をとる伊吹。
そして、凪は4年前海軍機の偽物を撃墜した事をサラっと話す。
嫌な予感を感じ、伊吹と七海は食堂から足早に立ち去る。
そして、お互いまさかと思いつつもあの時の空軍パイロットが凪であったと言う事を考える。
しかし、伊吹は『たまたま似たような状況があったのかもしれない』その可能性を考えつつも、覚悟を決めた。
2月13日… 14:22… 太平洋… 蒼龍艦橋…
現在、凪の訓練中。
これから凪の機体が発艦する。
「さぁ、凪は上手く飛び立てるのでしょーか」
「飛び立てないと困るんですが」
真顔で言う航空参謀。
いつも通りで安心。
凪の操縦する飛電がカタパルトに入る。
隣のカタパルトには七海の機体が入っている。
同時に発艦する様だ。
「発艦準備完了しました」
天候は超がつくほどの晴天。
風も問題無い。
「了解。発艦始め」
「発艦始めェ!」
航空参謀の号令と共にカタパルトが作動し飛電が飛び立つ。
同時発艦も最近は見飽きて来た。
昔はあんなに興奮したのにな…。
「発艦は良いね」
「問題は着艦ですね」
「着艦はムズいよ。ホントに」
「あの、司令」
「ん?どしたの副司令?」
「凪中佐の飛電って単座ですか?」
「いや、複座」
「安心しました。司令なら単座機で送り出しそうな気がしましたから」
最初は単座で送り出そうと思ってたのは内緒にしておこう。
「にしても、凪中佐って身長高いですよね」
参謀長が思いついた様に言う。
「186cmだったかな、二航戦で凪を超える人は居なかったはず」
「一番高いのが作戦参謀でしたね」
津川一等兵がそう言うと共に、皆が作戦参謀を見る。
「お前って、17…」
「8」
「そうだった、178cmだ」
50分後… CIC…
現在、凪と七海はドッグファイト中である。
戦闘が始まって40分。
決着は未だつかない。
「な、長いですね…司令」
「ゆったり待とうよ、参謀長」
「は、はい」
さて、どっちが勝つのかな。
「この目で空中戦を見れないのが残念だよ」
「やはり、司令もですか」
「副司令もそう思うか」
「えぇ、海空のエースがお互いにぶつかり合う…こんなの、滅多に見れませんよ」
「ディスプレイ上でしか見れないのが残念だ」
ディスプレイには両機の動きが点と線で表示されている。
その軌道は常軌を逸していた。
普通の訓練ではまず見る事の出来ない軌道である。
「あの、司令」
「どうした?航空参謀」
「これ、燃料ギリギリになるまで終わらない可能性があるかと」
「…数時間画面を眺め続けるのは嫌だぞ」
途中で寝てしまいそうだ。
さっさと決着をつけて欲しい。
「七海が優勢か」
それはそうだ。
七海の方が圧倒的に乗り慣れている。
凪は初めて乗る…はず。
ピロンッ
凪の機体が画面上から消失する。
「七海の勝ちか」
「その様ですね」
副司令は勝ち誇った様な表情をしながら言う。
「よし、状況終了。帰投させろ」
20分後… 艦橋…
もうすぐ七海の機体が着艦する。
凪の機体は後に着艦する。
「来た来た」
いつも通りの着艦。
安定感がある。
キィィィィン…
七海の機体が停止したら、すぐに機体をどけて凪の機体が着艦出来るようにする。
いよいよ凪の番だ。
「少しフラフラしてますね…大丈夫ですかね?」
「複座だし、いざとなったら後ろの人が何とかしてくれるよ」
「そうだと良いのですがね…」
そんな航空参謀の心配をよそに凪の機体は甲板に滑り込む。
機体は停止し、着艦に成功した。
「セーフ」
「後席の人、酔ったかもしれませんね」
「かもね~」
航空参謀の言う通り、後席の人は酔ったかも知れない。
七海と長時間渡り合える相手は凪が初めて。
姉妹だから動きが予測出来るのかな?
「にしても、七海中佐とあれだけやりあえるなんて…空軍のエースの名は伊達じゃありませんね」
「あぁ、そうだな」
「司令は今回の勝敗の原因は何だと思います?」
何だろう。
やはり実戦経験の差だろうか。
でも、七海が経験したのは対艦攻撃であってドッグファイトではない。
ドッグファイトは海鷲隊だ。
…それでも実戦経験の差は大きいか。
「実戦経験の差かな」
「やはり司令もそう思いますか」
「うん」
「………」
さっきから航空参謀がチラチラこっちを見てくる。
どうしたのだろう。
「どったの?航空参謀」
「あ、いえ、何も」
「そう…」
19:23… 艦内食堂…
久しぶりに食堂で食べる。
最近はずーっとお部屋で食べてた。
それにしても、さっきから凪がしょぼくれている。
「…凪、どうしたの?」
「…………」
「おーい」
「…………」
「ねぇ、七海。凪、どうしちゃったの?」
「ご飯の量」
「…あ~…成程」
凪は超が付くほど大食い。
普通の量じゃ満足しないのか。
「…あ、もう食べ終わってる」
「…ゴハン…スクナイ…」
「…でも美味しいでしょ?凪ねぇ」
「ウン…チトセノヨリオイシイ…」
嬉しいな。
ってか千歳基地の食事が気になる。
「…オワカリシタイ…」
「艦に積める量は限られてるからなぁ、許して」
「ウン…シカタナイ…」
20:22… 凪の寝室…
「どうだい。蒼龍の個室は」
「………」
「どったの?」
「最初見た時から思ってたんだけどさ」
「うん」
何だろう。
狭いとかかな?
「狭い」
「やっぱりそうか」
基本的に乗組員の部屋は2人部屋。
個室が与えられるのはボクと副司令、それと艦長と各飛行隊の隊長・副隊長。
参謀三人衆は四人部屋で寝てもらっている。
あの3人、そろそろ名前で呼んでも良いと思うのに、未だに役職で呼び合っている。
2人部屋は一般的な長距離フェリーの半個室のベッドが二段ベッドになった様な物。
とにかく、狭い。
個室はその二段ベッドが普通のベッドになっただけ。
ボクの部屋は例外だけど。
「でも机と椅子はあるんだね」
引き出しもしっかりついている。
「まぁ、艦の部屋なんてこんな物だよ」
「そっか~」
「…寝れる?」
「え?」
ベッドに凪は入りきるのだろうか。
186cmの巨体が収まりきるのだろうか。
「ちょっと寝て見てよ」
「うん」
ボフッ!
そう言うと、凪はベッドに飛び込んだ。
ボクの心配は杞憂に終わった。
ベッドの長さは十分に確保されていた。
「ちょっと硬いね」
「そんなもんだよ」
「そっか」
「じゃ、おやすみ。また明日」
「おやすみ~」
ボクは凪の個室から出る。
さぁ、ボクも寝ようかな。
2月14日… 01:11… 艦橋左舷デッキ…
寝れない。
全然寝れない。全くと言って良い程寝れない。
あくびの一つも出ない。
「今日も星は綺麗だな」
星空は何度見ても飽きない。
何故だろうか。
「!司令」
「あ、航空参謀」
「司令も、眠れないのですか?」
「うん。寝れないの」
「奇遇ですね、私もですよ」
航空参謀も眠れない様だ。
ん?何か手に持ってる。
「何持ってるの?」
「ウイスキーですよ。ウイスキー」
「へぇ~」
「私はウイスキーが一番好きなんですよ」
航空参謀はウイスキー派なのか。初めて知った。
「司令も飲みますか?」
「いいの?」
「えぇ。構いませんよ。コップを取って来ますね」
そう言うと、航空参謀はコップを取りに戻って行った。
「…このテーブルみたいな奴、この為にあるのか?」
艦橋から少し張り出したこのデッキ。
柵の部分に小さなテーブルの様な物がある。
これはこの様な使い方をする為に設置されたのだろうか?
「お待たせしました。飲みましょう」
そう言うと、ボクのコップにウイスキー注ぐ。
良い奴なのかな、コレ。
「うん。飲も」
「では…乾杯」
「乾杯」
チリンッ
コップをぶつけ、すぐに飲み干す。
「うん。ウイスキーも良いね」
航空参謀は心なしか嬉しそうだ。
「司令。司令ってもうすぐ30歳ですよね」
「うん」
後3年で丁度30歳。
三十路まであと一歩。
「…一人称、変えないんですか?」
「え?あぁ…」
そう言えばそうだ。
女で『ボク』が許されるのはせいぜい20代までだ。
流石に30代にもなって『ボク』は結構痛い。
摩耶は高校に上がる時に変えたが、ボクはそのまま。
変えるタイミングは何度もあったと言うのに…。
「しかし、今は多様性の時代だよ航空参謀」
「は、はぁ」
取りあえず適当な事を言ってごまかそう。
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三沢姉妹の空戦。
【北空最前線 第六話】
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