第四十七話 空軍のパイロット
前回のあらすじ:いつも通りの日常を過ごしていた秋月姉妹。
そこに飛び込んでくる不審船事案。その事案を難なく処理すると、二航戦の副司令である常盤少将が、二航戦に空軍のパイロットが派遣されてくる事を知らされる。
そして、遂にその日が来たのだ。
2月6日… 09:22… 呉基地… 基地司令室…
時は来たれり。
今日は空軍からパイロットが派遣されてくるのだ。
まぁ、派遣されてくるパイロットは良く知ってる人だし、いつも通りにしてたら良い。
いつも通り仕事して、休憩して、ご飯食べて、家に帰れば良い。
「んぁ~…摩耶~」
「ん~?」
「摩耶の仕事ってさ、この基地のトップの他にさ」
「うん」
「阪神基地とか31航空群とか幹部候補生学校の管理やっとるやん」
「そうやね」
「それなのに"呉基地司令"やん」
「うん」
「おかしくない?」
「せやね~」
「やっぱ"呉地方総監"のままで良かったんやないの?」
「そやな~」
いつも通りの会話。
何も考えずに話す会話。
「あ、お姉ちゃんタブレット」
「ゴロゴロしてるボクって生産性0やん」
「せやね」
「やからな、せめてでも何か出来へんかな~って」
「ほんで、何やっとん?」
「デジタル化した書類仕事とお絵描き」
摩耶が基地司令になってから、書類仕事のデジタル化が異常な速度で進んだ。
嬉しい事だ。これで紙とはおさらばだ!
「お絵描き?」
「お絵描き。Eagleにあげてみた」
小さい頃から暇な時に絵を描き続けて来た。
それは摩耶も同じ。一緒に描く時もあった。
「私もあげよっかな~」
「ええやん、2人でいつかコミケ行こ」
「ええね、行こ行こ!」
キラキラした目でボクを見つめる摩耶。
可愛いね。
「所で、お姉ちゃん何描いとるん?」
「主力は艦艇かな。後、漫画とかも描いとるよ」
「後で見てみよ」
コンコンコン
扉がノックされる。
「はーい!」
摩耶が反応する。
ガチャッ。
扉がゆっくり開く。
「やっぱ扉重いなぁ…」
そう呟きながら入って来たのは、七海の姉である凪。
空軍から派遣されて来たパイロット。
「凪!」「凪ちゃん!」
「「久しぶりー!」」
「流石双子、声もタイミングもピッタリや」
いつも海軍の制服ばかり見てるから、空軍の制服は新鮮。
「あ、凪ちゃんも帽子は男用なんや」
「ほら、私の顔って女って言うより男やろ?」
「「せやな」」
「やから、男用の帽子にしたんや」
昔は履歴書に書かれた性別で服が決まっていたが、今はある程度融通が利くようになり、帽子程度なら自由に選べるようになった。
「あ、刀」
凪がボクの刀に触れる。
「軍刀の代わりに下げてる」
「うわぁ…海軍は完全に旧軍回帰やん…」
凪の言う通り。海軍はほぼ旧軍に戻ったのだ。
しかし、戻ったのは制服、施設名、艦隊名等の表面的な部分だけであり、本質は海自と変わらない……はずである。
旧軍とは違い、天皇ではなく政府に属するし、指揮系統も考え方も全く違う。
だから、名前は似てても全く違う組織である……はず。
「と言う事は摩耶も軍刀下げてるって事やんな?」
そう言いながら凪は摩耶に近寄る。
「うん。ほら、これ」
摩耶は自分の軍刀を凪に見せる。
「凄、ホンマに下げてるわ」
凪は軍刀をまじまじと見る。
「あれ、摩耶は自分の刀やないん?」
「うん。家に置いとるよ」
摩耶は刀より銃の方が好き。
だから家に自分の刀を置いている。
でも、腕はボクと同じ。
「ってこのデスクトップPC、CPU…!AMPCのcore-X9やん…!」
「グラボもEDIDのCH-330積んどるで」
「…官品?」
「な訳無いやん。自分で持ってきたんやで」
笑いながら答える。
「…そんなんええん?」
「申請したら許可された」
「凄…羨まし」
今度は摩耶のPCを見つめる凪。
「あ、伊吹はどうなん?」
「自作持っとるよ」
「スペックは?」
「X9-21000K、CH-330、64GB、2TB」
「…取りあえず高いモン載せたらええんとちゃうで…?」
「わーっとるわそんなん」
「あ、そうや!」
凪が何か思いついた様だ。
何だろう?
「次の出港いつなん?」
「来週。まだ修理が完全に終わって無い」
「あれ?終わってないん?」
「せや。摩耶が後5日で終わるらしい」
「終わらんかったら?」
「摩耶抜きで任務に就く」
凪が居るのは今月一杯。
折角来てくれたのだから、是非蒼龍に沢山乗ってもらいたい。
だから摩耶の修理に見切りをつけて出港する。
「…その間ホテル暮らしか…しゃーない」
「あれ、官舎やないん?」
「だって…ボロいし汚いやん」
「あー」
「私1回舞鶴の官舎見た事あるけど、ホンマにボロかったわ」
「…やっぱボロいんやな」
「呉のは知らんけど」
「呉のもボロいで、ボク見た事あるもの」
本当に酷かった。仮眠室の整備より官舎を新しくして欲しい。
…まぁ、ボクには関係ないんだけど。
12:11… 食堂…
今日もお昼ご飯の時間がやって来た。
いつもは七海か摩耶と一緒に食べるが、今日は4人で食べる。
「凪ねぇ…盛りすぎ」
「え?」
「漫画盛り…!?」
「現実で出来るんやな、それ」
凪の茶碗に盛られたご飯。
その量は常軌を逸していた。
アニメ等で良く見る漫画盛りそのまんまである。
テレビで似たようなのをよく見るが、まさかこの目で見る事になるとは思っても居なかった。
「えっ、盛りすぎかなぁ…?」
「給養員の人絶対引いてたやろ…」
七海が苦笑いしながら言う。
「え?そんな事無いそんな事無い」
凪は即否定する。
「あ、魂抜けた顔しとる」
摩耶はキッチンに居る人の顔を確認した様だ。
…あれ、こんなに盛って罰則…いや、あれはおかずか。
ザワザワ…
「あれが空軍の…!」「デケェ…」
「中佐より操縦凄いのかな」「そいや名前聞いてないな…」
やはり皆気になる様だ。
紹介は午後一番にやる。
「…あ、海軍で思い出した」
「「「??」」」
凪は一体何を思い出したのだろうか。
海軍と空軍…何があるのだろうか。
「昔…と言っても、4年前やけど」
「…2019年か。何かあったかな」
「まだ私と伊吹が一航戦の頃やな」
「摩耶は確か……」
「葵の艦長」
「そうやった」
「それで、私その時小松に1週間だけ行っとったんよ」
ん?小松ゥ?
…考え過ぎかな?
「それで、実弾持って訓練しとったんよ」
実弾訓練か。
実弾か……。
「そ、それで?」
ボクは恐る恐る続きを聞いてみる。
この不安が杞憂であれば良いのだが。
「ほんでな、基地から無線が入るんよ」
…そう言えばこんな長時間関西弁を話したのは久しぶりだな。
「日本海軍機を模した機体が超低空で本土に接近中やーって」
ボクと七海は顔を見合わせる。
七海も同じ事を考えていた様だ
「そんで、丁度実弾持ってたモンやから、そのまま墜とs………」
「アッ!アーッ!ア、ソーヤ!ボク、コレカラヨウジガアッタンヤ!ハヨイカナ!」
「ワッ、ワタシモ、ヨウジオモイダシタワ!イカント!」
ボクと七海はトレイを返して、足早に凪の前から急いで去る。
凪は唖然としていた。
数分後… 2階… 空き部屋…
「…誰も見てないね」
バタン
「…七海」
「………」
七海はボクが言おうとしてる事が分かってる顔をしている。
4年前、小松、海軍機、撃墜。
凪は偽物を墜としたと言っているけれど、撃墜したのは偽物なんかじゃない。
正真正銘、本物の海軍機。
「「………」」
でも…たまたま似たような状況があって、同じように隠蔽されたかもしれない。
そうだ、そうに違いない。
きっとそうだ。そうなのだ。
「…ねぇ、七海」
「…?」
「凪って、あの話の続き、すると思う?」
「…ぜーったいする」
「OK…」
ボクは覚悟を決めて部屋を出る。
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【ご案内】
凪が基地司令室に入ってくるまで
【北空最前線 第五話】
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