第四十六話 修理待機中
前回のあらすじ:関空から急いで呉に戻って来た2人。
しかし、既に事態は終結を迎えており、ただ単に軍のヘリで移動しただけだった…。
1月27日… 10:22… 呉基地… 基地司令室…
〈…陸軍の独断行動に対し、不安の声が上がっています…〉
テレビのニュースから流れてくる物はほぼ全て陸軍に批判的な物ばかり。
それに対し、ネットから流れてくる物は賛成多数。
新聞は…取ってないから分かんないや。
「摩耶ー」
「なーに?」
「あの2人降格だってー」
「2人って?」
「ほら、陸軍の」
「確か中佐まで降格したんだっけ」
「そうそう」
先の岡山事件で独断行動を起した豊岡少将と君津少将は中佐まで降格。
まぁ、仕方ないと言えば仕方ない。
「…お姉ちゃん」
「ん?」
「予約した?」
「え?」
「ほら、同窓会」
「…あぁ、何もしてないね」
バスも新幹線も予約していない。
さっさと予約しないと座席が埋まってしまう。
「摩耶~PC貸して~」
「はーい」
摩耶がこの部屋に置いてるPCは自前で用意した物。官品ではない。
デスクトップPC。性能は現時点で最高級。
「えーっと、まずはJR中国バスっと…」
摩耶が座ってる上に座る。
摩耶なら許してくれるだろう。
「お姉ちゃん。グランって神戸通過しなかったっけ?」(ムギュー)
摩耶がボクを抱きしめつつ、画面を覗きながら言う。
そうだった。広島発のグランドリームは神戸を通過して大阪に行くんだった。
「じゃ、WILLER見てみよう」
WILLER EXPRESSなら神戸経由便があった。
マウスを操作して公式ホームページを開く。
そして、時刻表へ飛ぶ、
「あった。神戸0545着」
時刻表から予約ページに飛ぶ。
カレンダーに値段が書かれている。
だが、2月2日の所は空白になっている。
「あれ、空白だ」
「もしかして満席じゃない?」
「マジ?」
カレンダーの2月2日の所を押す。
すると、満席であると言う事が判明した。
「「満席だー!」」
まさかの満席。
2月なのに!?
「ってかさ、2日って平日よね」
「うん」
「…なんで平日にしたの?」
「…分かんない」
「もう新幹線でいっか!」
「うん!」
JR西日本の予約ページを開く。
時間から列車を調べる。
新神戸に9時位に着く奴がいいかな。
「あっ、これいいんじゃない?」
「いいね、のぞみ86号。新神戸0917で丁度良い」
適当な指定席を選択。
「これで予約完了」
「わーい!」(スリスリ)
摩耶がボクを抱きしめながら背中に顔をスリスリしてる。
摩耶は、昔からよくボクに顔をスリスリしてくる。
…退いて欲しく無さそう。しばらくこうしてよう。
コンコンコン
「七条中尉、入ります」
ガチャッ
摩耶の側近である七条中尉が入って来た。
中尉は駆逐艦 葵 の時から一緒だ。
「…何してるんですか?」
「お姉ちゃんにPC貸してるー」
「そ、それは良いんですけど…体勢が…その…」
「お姉ちゃんが座って来たー」
「そ、そうですか…」
「それで、何か用?」
「あっ、そうでした。照月が不審船を発見しました」
「何処で?」
「えー、豊後水道を南下していますね」
「へぇ~。なんで不審船って思ったの?」
「漁船登録番号ですね。後、観音開きの扉が後部に確認されました」
「工作船やないかい!」
思わず突っ込んでしまった。
観音開きの扉があったらほぼ黒でしょう。
「お姉ちゃんの言う通りだよー」
「どうしましょうか?現在は追尾だけ行っていますが」
「軍令部に持って行こー」(スリスリ)
「わ、分かりました。軍令部に報告しますね」
「うん!頼んだよ!」
「は、はい。では失礼します…」
ガチャ。バタン。
中尉は終始困惑気味であった。
「工作船かぁ~」
「工作船だぁ~」
工作船。久々の遭遇。
最近は、軍艦としか対峙し無かった。
工作船との遭遇に謎の安心感を覚えてしまう。何故だ。
「お姉ちゃいい匂い…安心する…」(スンスン)
摩耶は腕に力を入れて、さっきより強くボクを抱きしめる。
摩耶の胸がさっきより強く当たる。
小さい時から同じ事してるから、もう慣れっこ。
「お姉ちゃ~」
「ん~?」
「今日のお昼ご飯なぁに~」
「カレー!」
「わぁい!」
コンコンコン。ガチャッ。
「司令、軍令部からです」
七条中尉が入って来た。
結構急いでるみたい。
「ん~?」
中尉が言う司令と言うのはボクの事では無い。
摩耶の事。しかしながら、どうしても『司令』と呼ばれてしまうと身体が反応してしまう。
「威嚇射撃の後、船体射撃。撃沈は極力避け、拿捕セヨとの事です」
「照月には伝えたの?」
「はい。既に」
「OK~」
**視点変更 伊吹→三人称**
同時刻… 豊後水道… 照月CIC…
「……了解。戦闘用意!」
軍令部からの命令通り威嚇射撃を行う。
「戦闘用意。右砲戦、目標、181度不審船」
「まだ当てるんじゃないぞ!」
艦長が念を押す。
「分かっております。仰角-5度」
「仰角-5度」
「主砲、攻撃始め」
「主砲、攻撃始め!」
砲雷科の乗組員が引き金を引き、射撃を開始する。
同時刻… 甲板上…
ダァン!ダァン!ダァン!
引き金を引くと同時に主砲が放たれる。
放たれた砲撃は、不審船手前の海面に着弾している。
1発も船体に当たっていない。
しかし、不審船は速度を下げて停船した。
そして、白旗を掲げた。
照月CIC…
「目標、停船!」
〈こちら艦橋、不審船は白旗を掲げている!〉
「主砲、攻撃止め!」
「主砲、攻撃止め」
「戦闘用具収め」
「戦闘用具収めェ」
**視点変更 三人称→伊吹**
11:21… 呉基地… 基地司令室…
「基地司令の権力、上がったよね」
「うん!」
海上自衛隊時代と比べ、基地司令の権力は劇的に向上した。
海自時代の『地方隊業務』も同時に管轄する事となった。
…その分仕事は増えるのだが。
「でも大変じゃない?地方隊の業務まで請け負っちゃって」
「そんなに大変じゃないよ。お姉ちゃんの方が大変でしょ?」
摩耶は未だに強く抱きしめている。
さて、いつ解放されるのやら。
「それはどうだろう」
コンコンコン。
「七条です。入ります」
ガチャッ。
中尉が入って来た。
あの工作船の事かな?
「報告します。不審船は、威嚇射撃の後停船し白旗を掲げました」
「「おぉ~」」
「現在、船内の調査中です。ただ、工作船であることは間違いないそうです」
「了解~!報告ありがとね!」
「いえいえ。ではこれにて」
ガチャッ。バタン。
白旗上げて降伏…意外だね。
工作船と言えば、逃げられるか自爆されるかの2択だと思ってた。
でも今回の事案で3択になった。『降伏する』が追加された。
コンコンコン
「常盤です。入ります」
ガチャッ。バタン
七条中尉と入れ替わりで、二航戦の副司令である常盤少将が入って来た。
何の用だろう?
「ん?どうしたの。副司令」
「し、司令」
「ん?」
「その体勢は…?」
「あぁ、気にしないで」
「は、はい…」
「それで、何の用?」
「先ほど、海軍省から連絡がありまして」
「海軍省?珍しいね」
海軍省から?
何だろう。
「空軍から二航戦に1人パイロットが派遣されるとの事です」
「へぇ~。そうなの」
「はい。期間限定ですけどね。エースを寄越してくれるらしいですよ」
「嬉しいねー。それっていつ?」
「2月の中旬になるかと」
「中旬なら多分セーフだね」
「はい。セーフです」
二航戦は、現在先の屋久島沖海戦で負った傷を回復中である。
こんな時にパイロットを派遣されても困る。
2月中旬なら、修理は終わっているはずだから問題は無いだろう。
「それだけ?」
「はい。それだけです」
「そっか。楽しみだね」
「はい。そうですね。では、私はこれで失礼します」
「うん、ありがとね」
「では」
ガチャ。バタン。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「ん?」
「お腹空いた」
「ボクも」
「「食堂行こう」」
時間も時間。食堂に行って、ご飯を食べよう。
今日は金曜日だからカレー!
昔は良く軍港巡りに行った時、お土産として買って帰ってたな。
今や週に1回食べる事が出来る。
ボクと摩耶は手を繋ぎながら食堂へ向かった…。
2分後… 3階廊下…
「…PCの電源落すの忘れてたぁぁぁ!!!」
摩耶の声が廊下全体に響き渡った……。
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