第四十五話 終わってた
前回のあらすじ:名古屋帰り、岡山駅で発生した事案のお陰で足止めを喰らってしまう伊吹と七海。そこに摩耶からの電話が入る。
その電話の内容は『ヘリを手配するからすぐ基地に帰ってきてほしい』と言う物であった。
2人は急いで関空まで行き、ヘリに乗って基地へと向かう…。
1月24日… 13:12… 呉基地… 基地司令室…
「呼びつけておいて!30分前に終わってた!どういう事ダァ!」
「お、お姉ちゃん。落ち着いて!」
「落ちつける訳ないやろがぁ!折角の気分に水差されて!」(バタバタ)
「ま、まぁまぁ」
「うぅ…」
「でも4時間で事態終結…むっちゃ早いね」
「ホンマそれ!陸軍強すぎひんか?」
「ね~」
ガチャッ
「いーぶっきちゃ~ん!」
七海がハイテンションで入って来た。
可愛いですね。
ボクがソファーに仰向けになってる所に飛びかかって来た。
「ぐえっ」
飛びかかって来られると、ちょっと衝撃が来て『ぐえっ』ってなる。
「えへへ~」(ムギュー)
「よしよし」(ナデナデ)
七海と戯れるのは楽しい。幸せ。
ビュゴォォォォ…
外は強風が吹いている。
窓ガラスがカタカタと揺れている。
「風強いね、お姉ちゃん」
「強いねー」
「竜巻注意情報も出てるよ」
「つよーい」
竜巻注意情報も出てるんだ。
きっと、海上は荒れてるだろうなぁ。
「ねーねー摩耶~」
「んー?」
「新しい魚雷防御装置の開発進んでるのかな」(ナデナデ)
ボクの上に寝そべってる七海を撫でながら摩耶に聞いてみる。
脳裏にはこの前の屋久島沖海戦での惨敗が浮かぶ。
魚雷防御装置、囮魚雷が一切通用しなかった。
非常に悔しい。
「どーだろ。そんな話聞いた事無いけどな」
「えー。敗因は明白なのに何で早く作らないかなぁ」
「もしかしたら軍機説無い?」
「あー、あるかも。軍機なら情報が流れてこなくても納得だわ」
兵器開発は大抵、軍機か軍機密に指定される。
情報が流れてこないのも納得だ。
「ねぇねぇ七海」
「んあ…?」
眠そう。可愛い。
「懐かしいね」
「ふぇ?」
「高校時代」
「懐かしいね~…」
「遂にここまで来た~って感じだよね~」
「うん~……」
高Ⅱの時に出会って数十年。
初めて会った時はこんな所まで来るなんて1mmも思って無かった。
普通の人とは一味も二味も違った青春を駆け抜けて…。
普通の人とは違ったキャリアを歩んで…。
改めて振り返ってみると、如何に自分が『普通』からかけ離れているかが分かる。
…まぁ『普通』と言うのは非常に曖昧な基準なのだが…。
「あっ。そーだ!お姉ちゃん」
「ん~?」
「同窓会のお知らせ来てたよ~」
「マージで?何で来とったん?」
「ROAD」
「ROADかぁ~。ボク全然見ないからなぁ」
「お姉ちゃんはconnectionだもんね~」
ROADは日本で最も使われているであろうチャットアプリ。
大抵の人はこれでやり取りをする。
しかし、ボクはROADではなくconnectionと言う物を使っている。
これはゲーム特化のチャットアプリ。音声チャットの質が非常に高い。
connectionを主力にしてるせいか、こういうお知らせが全然届かない。
…通知をオフにしてるせいかな。
「んで、それいつ?」
「2月3日」
「場所は?」
「神戸ポートラインホテル」
「結構良い所だねぇ」
「あ、そうだそうだ」
「ん?」
「なんかね、職場の制服で行かないと行けないんだって」
「ん?それって?」
「軍服」
「えぇ…面倒やなぁ…」(ナデナデ)
七海を撫でながら言う。
ブーッ!ブーッ!ブーッ!
「あ、電話だ」
電話だ、誰からでしょう?
「はい、もしもし」
[あー!やっと出た!]
「え?」
[妹の方はさっさと出たのに…姉と来たら全く…]
「…誰?」
[え?忘れたんか?]
「おん。忘れた」
[えらいはっきり言うなぁ]
「んで、誰なんや」
[三島や三島!忘れたんか!]
「三島…あぁ、中学校の時か…」
[やっと思い出したか。それで、同窓会どうするんや?]
「行く行く」
[OK、分かった]
「じゃ、忙しいんで切るな」
[あっ、オイ。待ておm…]
プーッ。プーッ。プーッ。
忙しいと言うのは全くの嘘。
暇である。凄く暇である。
本来であれば家でゴロゴロしてるはずなのに。
「同窓会の誘いだった」
「凄いタイムリーだね~」
「摩耶も行くんやろ?」
「勿論!」
「OK~」
軍服着て同窓会かぁ。
考えた事も無かった。
「ねぇ~摩耶」
「ん?」
「さっきの岡山の事案の犯人って誰?」
「なんかねー、全日本共産主義者連合委員会らしいよ」
「革命派の輩かぁ…。遂に銃まで使う様になったのかー…」
動画でしか見た事無いけど、ヘルメット被って、角材やら鉄パイプを持って機動隊に突撃してる印象があるこの団体。
今は沈静化したと思ってたけど、ただの準備期間だったのかな。
東京でも何か起こりそうな気がする。
「平和が崩れてきちゃったねぇ」
「ねー」
もしかしたら、能登半島の時、あの艦隊を攻撃をしなければこんな事にはなってなかったかもしれない。
もしかしたら、二航戦も壊滅してなかったかもしれない。
『もしかしたら』そんな単語を連発しても意味は無い。
後悔が積もっていくだけだ。
ボクの使命は艦隊を率いて日本の平和を守り抜く事。
民主主義を貫き通す手伝いをする事だ。
しかし、それを達成する為の道具である『艦隊』が使えない。
今のボクに出来る事は、ただ艦隊が再建されるのを待つだけである。
ビュゴォォォォ…
風は相変わらず強い。
帰る時には収まってると良いな。
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事案に対処する陸軍の人々
【日本陸軍第13戦車中隊 第五話】
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