第四十四話 緊急招集
前回のあらすじ:名古屋に深夜に到着し、中央口で小箱を渡される。
その小箱の中には指輪が入っていたのだ。七海は遂に決断する事が出来たのだ。
そんな余韻に浸りながら呉への帰路へついていると…。
難波で足止めを喰らう。足止めを喰らった理由は何と岡山駅で発生したテロと言うのだ……
難波OCAT2F… 1月24日… 09:33…
「どーしよっかぁー…」
ため息交じりに呟く。
こんな言い方したの久しぶり。
「ちゅ、中国山地突っ切って行く?」
「時間がかかるなぁ」
「でもいつ収まるか分かんないし…」
ここで言う"中国山地を突っ切る"とは、山陽本線の瀬戸内海側と山陰本線の日本海側の間。
丁度中国山地を突っ切る姫新線・芸備線の事を指している。
「四国経由はどうだろうか」
「松山まで行ければ船で直接呉に戻れるね」
ここから高速バスで松山へ向かう。
そこからスーパージェットで直接呉に入る。
これも候補の1つ。
「瀬戸内海側通れないのはやっぱり不便だ」
「どっちにするの?」
「在来線乗り継ぎは十分堪能したから四国経由にしよう」
四国経由を決断し、切符を買おうと切符売り場へ向かって歩こうとしたその時。
ブーッ!ブーッ!ブーッ!ブーッ!
マナーモード状態のスマホ君が震えている!
電話の様だ。
「はいはいはい」
[お姉ちゃん!]
「摩耶か。どうしたの?」
[い、今どこに居るの?]
「難波のOCATで絶賛足止め中☆」
[そ、そっか…]
「そんで、どうしたの?」
[今すぐ呉に戻ってきてほしいなぁ…って]
「成程、例の岡山の事よね」
[そうそう!]
「でも瀬戸内海側が不通になったせいで、公共交通機関で帰ろうとすると時間かかるよ?」
[そう!だから近くの空港にヘリコプターを呼んでそれで呉に戻ってきてもらおうかな~って!]
「…出来るの?」
[出来る出来る!なんとかするよ!]
「そ、そう…」
[今お姉ちゃんが居るのOCAT?]
「そう。OCAT」
[なら関空かな?規模的にもそっちの方がいいよね]
「そうね。神戸よりも関空の方が色々都合が良さそうだよね」
[そうだよね!じゃぁ、関空にヘリを寄越すから急いで向かってね!]
「りょーかいっ」
[あ、軍務手帳持ってる?]
「持っとるよ」
[それで、直接敷地内に車とかで入れたりしないかな?]
「まぁ、やるだけやってみようか」
[分かった!じゃ、ヘリ寄越しとくね!]
「了解~」
プツッ。プーッ。プーッ。プーッ…
「誰からだったの?」
「摩耶だよ。関空にヘリを寄越してくれるから、それで直接呉に帰ろう」
「OK~」
「じゃ、タクシーで行こう」
「お金大丈夫…?」
「大丈夫、何も心配はいらない」
「そ、そっか」
難波OCAT… 1F… タクシプール…
エスカレーターの左側を駆け下がり、タクシープールに到着。
一番先頭に止まっているタクシーに乗り込む。
「関空まで!急いで!」
「わ、分かったぁ」
バタンッ!ブォォォォォォォン…
結構な加速でタクシープールを後にする。
「さてと…どうしようか…」
「?何が?」
「いや、直接車で敷地内に入れないかなぁ…って」
「タクシーじゃ無理じゃない?」
「だよねぇ…」
敷地内に入る時は軍用車や航空会社の車が最適解。
73式とかが丁度いい。
タクシーは…結構難しい…。
軍務手帳でどうにかならないと思うけど。
タクシーは湊町インターから阪神高速に突入する。
タクシーは速度を上げて高速道路を走る。
メーターはぐんぐん上がる。
お財布には6万円入ってるから関空までのタクシー代は足りるだろう。
「ねぇねぇ」
「ん?」
「そのヘアピンっていつ買った奴だっけ?」
「中3だったかな。大和ミュージアムで買った奴よ。ボクが武蔵で摩耶が大和のヘアピンを付けてるよ」
「へぇ~。伊吹ちゃんが武蔵なんだ…逆かと思ってた」
「最初は逆だったんよ。ボクが大和で摩耶が武蔵」
「じゃぁ何で今は逆になってるの?」
「ボクが小月に行く前に交換したんよ」
「なんで交換したの?」
「しばらく会えなくなるから、お互いを少しでも感じれるようにー…みたいな?」
小月に旅立つ直前、新神戸のホームで交換したなぁ…。
懐かしいね。
関空連絡橋…
運転手さんと雑談しながら走っていたら、もうすぐ関空。交通量が多い。流石関空。格が違う。
「さて…どうやって敷地内に入ろうか…」
「うーん…」
「お二人さんの事情からして普通にターミナルからは入れんやろなぁ…」
運転手さんの言う通り。普通にターミナルからは入れない。
「まず保安検査場すら通過出来へんやろな」
「そうですよねぇ…航空券がある訳やないし…」
ブーッ!ブーッ!
悩んでいる所に電話が入った。
何やろ?
「ん、もしもし」
[もしもし、司令]
「ん?参謀長。どうしたの?」
[関空のヘリの件ですが、空港側に話を通しましてタクシーでそのまま入って良いとの事です]
「ほう」
[タクシーの番号を教えて頂けますか?空港側に連絡しますので]
「何番ー?」
「741番だよー」
「741番だって」
[分かりました。直ちに空港に連絡します。後、入る時にお二人の軍務手帳と運転手の身分証をお見せください]
「了解ー」
[では失礼します]
「ん。ありがとね」
プーッ。プーッ。プーッ…
色々手筈を整えてくれるようだ。
良い部下を持った物だ。ボクは嬉しいよ。
「お二人さん相当偉い人なんやなぁ」
「わ、私はそんなに偉くないですよ!た、たかが中佐ですよ!中佐!」
「尉官とか兵達が聞いたらブチぎれそうやな…」
「そう言うポニテの嬢ちゃんはどんくらいなんや?」
「ハハハ…中将…」
苦笑いしながら答える。
「ほぉー!ちゅーことは司令か!」
「うん、そう。司令」
「ほぉ~!親父を思い出すなぁ!」
「と言うと?」
「俺の親父、帝国海軍やったんや」
「成程。徴兵?」
「いいや、兵学校」
「士官…凄いなぁ」
「嬢ちゃんだって大学校卒なんやろ?」
「それが違うんやな、これが」
「ほぉ~!驚いたなぁ。元々何処から来たんや?」
「航空学生…と言うより、予科練と言った方が分かりやすいかな」
「予科練!へぇ~パイロットさんか!凄いなぁ…」
「そんな言われると照れるなぁ…」
「ほな、そっちの短髪の嬢ちゃんは?」
「私もパイロット!今も現役だよ」
「ほぉ~!ジェット戦闘機をぶん回しとるっちゅー訳か!」
「そうそう!」
こうして話していると、いつの間にか連絡橋を超えて料金所が見えて来た。
ブォォォォォン…
料金所をETCを通過し、いつもの道を進んでいく。
一体何処から入るのやら。
「一体何処から入るのかな」
「どっかで誘導してくれるんじゃないのか?」
「成程」
右側にはJR・南海の共用の関西空港線が見える。
タクシーは普段通りロータリーへの分岐へと進入する。
すると、警備員が停車するように促している。
「おっ、あの人か」
「どうやらその様ですね」
警備員に促されるままに脇に寄せて停車する。
停車すると、警備員が駆け寄ってきて窓を叩く。
ウィィィィン。
窓を開ける運転手。
「連絡のあった、ヘリに乗られる方々ですね?」
「おう、後ろの嬢ちゃん達がそうだよ」
「お二方は軍務手帳と、運転手さんは何か身分証を」
「おう、分かった」
運転手さんは免許証を差し出す。
ボクと七海は軍務手帳を見せる。
「はい、ありがとうございます。前の青いランプが付いてるミニバンについて来て下さい」
「おう、分かった」
警備員はミニバンに戻って行った。
「ほぉ~。楽しみだな~」
「すみませんね、面倒な事になっちゃって」
「いやいや!俺も楽しいからいいよ!」
「本当、ありがとうございます」
ミニバンが走り出すと同時にタクシーも走り出した。
速度は若干こちらの方が速い。
タクシーは誘導に従いバスロータリーへの道路へ入って行く。
周りはバスだらけだ。
バスロータリーへの道路をしばらく走っていると検問所が見えて来た。
ここを通過すれば敷地内に入れる。
重々しい門が警備員の手によってゆっくり開けられる。
ブォォォォォォォン…!
検問所を勢い良く抜けると、敷地内の車両用道路に出た。
通路を通り、エプロンへ出る。
まさかエプロンをタクシーで通過する事になるとは、夢には思わなかった。
「凄いね…ここバスでしか通った事ないや」
「ボクもバスでしか通った事無いね」
飛行機が間近に見える。
タキシング中だったり、スポットに止まってたり…。
警備車両の誘導に従い、エプロンや誘導路をしばらく走っているとヘリが見えて来た。
四式回転翼機"若鷲" 蒼龍ではなく、呉基地直属の機体が飛んできた様だ。
ブォォォォォォォン…キキッ。ガチャッ。
ヘリの真横でタクシーは停車した。
「え、えーっと…1万8280円やね」
「2万で」
「お釣りは…」
「あ、面倒やしいいよ」
「あぁ!ありがとうございます!」
「こんな面倒な事付き合わせちゃってごめんね」
「いやいや、こんな所滅多に入れたもんじゃないですからね!楽しかったですよ!」
「じゃ、ありがとうね!」
「はーい!お気をつけて―!」
ボクと七海がヘリに乗り込むとタクシーは警備車両の誘導の元、走り去っていった。
「お待ちしていました、伊吹司令・三沢中佐」
「うむ。お迎えありがとね」
「いえいえ!これくらい容易い事ですよ!さぁ、飛びますよ~」
「了解!」
ババババババババババババ…!!!
ヘリは勢い良く飛び上がり、呉の方向へ機首を向ける…。
…さぁ、ここからが大変だ!
お読みいただき、ありがとうございます!
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事案に対処する陸軍
【日本陸軍第13戦車中隊 第四話】
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