第四話 未練
前回のあらすじ:二航戦に配属される予定の航空母艦飛龍が遂に進水した。
その飛龍と言う艦名は二航戦考案の名称であった。
二航戦の案が採用されたことに安心する伊吹であった。
9月23日… 09:12…
飛龍の進水式を終え、呉に帰って来ました。
土産を一応買ってきました。艦隊全員に。
皿うどんを一人づつ配りました。
「先輩~!」
「配り終えた?」
「はい~!」
「ご苦労様」
「いえいえ…でも流石に全員って言うのはちょっと…」
「だよね、今度からは何も買わない事にしよう…」
持って帰るのに凄い苦労した。
宅急便の人三回聞き返してきた。
「あ、話は変わるんですけど」
「どったの?」
「先輩ってパイロットに戻りたいって思った事ありますか?」
「え、うん」
戻りたい、凄い戻りたい。
出来る事なら蒼龍から飛び立ちたい。
今すぐにでも乗り込んで飛び立ちたい。
操縦席が恋しい。
そもそも何故艦隊司令にされたんだ…?
ボクはただの中隊長だったはず…
ボクはただの中佐だったはず!!!
どうして?何で?ごく普通の、何処に居てもおかしくないただの中佐だった!
それが今じゃ何で中将に?何で司令官に?
分からない、何故?何故だ?軍令部は何考えてi…
「先輩!」
「!!!」
「また……顔が……その……」
「…す、すまないね」
「先輩…」
「やっぱり寂しいよ、ボク」
「それは私もですよ、先輩」
「…やっぱり寂しいよね?」
「はい…」
「なんだかボクが寂しいって言わせてるみたいだね」
「そうでしょうか…?」
「七海の本音だって言う事は理解してるんだけど、どうしてもね」
「そ、そうですか」
何度も自問自答を繰り返して、苦しくなって
そうなる度に七海が助けてくれた。
そして耐えてきた。今回も耐えれる。
…そう思っていたのが間違いだった様だ。
七海も同じ状態に陥っていた。
「「……」」
ボクも七海も黙り込んでしまった。
今日は清々しい程の快晴。
上からの指示はまだ来ていない。
司令室は沈黙が支配していた。
コンコンコン
しかしその沈黙はあっさり破られた。
一枚の指令書によって。
「失礼します」
ガチャッ。
「司令、艦隊司令部からです」
そう言って赤穂は茶封筒を渡してきた。
「中身は見た?」
「いいえ」
「そう」
「中身見ましょうよ、先輩」
「言われなくても見るよ」
「何々?」
『第二航空戦隊、九月三十日付デ南西諸島ヘノ派遣ヲ命ズル』
「南西諸島、か」
「はい、南西諸島です」
「ねぇ、あそこって佐世保の管轄じゃ?」
「多分佐世保に空母艦隊が無いから私達が派遣されるんでしょう、先輩」
「なるほどね、つまり母港が一時的に佐世保になるのか」
「司令」
「どったの?赤穂」
「さっき寂しいって…」
「!!!聞いとったんか…」
「はい」
「先輩…」
「司令、もう話してもらいますよ!あの時の事って何ですか!!!」
「……」
「私、前々からずっと気になってたんですよ、あの時の事って何って
でも答えてくれなかったじゃないですか」
「そりゃぁ、話したく無かったし」
「…何でですか?なんで話したくないんですか?何かやましい事があるんじゃないですか!?」
「いや、別にそういう系統のお話じゃなくてね…」
「怪しい話じゃなかったらなんで話してくれないんですか!!」
「……」
「先輩、もう隠し通すのは無理そうですね」
「そうだね…」
「み、三沢中佐も知ってるんですか…?」
「知ってると言うか当事者の一人」
「赤穂」
「は、はい!」
「この話、凄い長くなると思うからさ
佐世保への航海の途中にゆっくり話す事にするよ」
「はい、了解しました」
「後この話は口外無用でね?」
「わ、分かりました」
「七海も一緒に話す?」
「はい、私も一緒に話します!」
「司令、三沢中佐!ありがとうございます!」
翌日 9月26日
蒼龍艦橋
今日は南西諸島派遣の初日。
これから佐世保へ向かう。
艦橋はいつもより忙しかった。
「出港用意」
同時に出港喇叭が鳴る。
艦長のこの号令と喇叭でさらに忙しくなる。
それにしても曳船って力強いなぁ
「出 港 用 意 !!!」
迫力満点の声だ。
岸壁ではもやい索が離された。
遂に出港だ。
次に呉に帰って来るがいつになるのかは分からない。
それにしても曳船って力強いなぁ(2回目)
「両舷前進微速」
かなりの時間をかけて出港完了した。
やっぱり六万トンの巨体を出港させるのは時間がかかる。
出港より三時間が経過した。
艦隊は豊後水道へ入ろうとしている。
その時、赤穂が話しかけてきた。
「司令」
「ん?」
「昨日の話、忘れてませんよね?」
「あぁ、当然」
「良かった、じゃぁ話してくれるんですね?」
「んじゃ、司令室に行こうか」
「はい」
…この事は二度と話すつもりは無かった。
思い出すのも苦しい、まして話すなんてもっと苦しい。
しかし、話さざるを得ない状況になってしまった。
話す前は軍医に処方してもらった精神安定剤を飲むことにしよう。
これで少しでも気持ちが楽になると良いな…
お読みいただき、ありがとうございます!
次回から第二章に突入しますよぉ!
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