第二十九話 三沢家の大晦日2022年ver
前回のあらすじ:休暇を利用し、実家に帰った伊吹。
だが、実家に帰ったのは伊吹だけでは無かった…。
12月31日… 八尾市… 八尾南駅…
「八尾南ー八尾南ー終点でーす…」
数年ぶりに帰って来た地元…。
私の昔が詰まってる所。
「…………」
とにかく、実家に帰ろう。
ゆっくり歩いて帰ろう。前まではバス使ってたけど…。
1時間後… 三沢家
ガラガラ…
「ただいまー」
「お帰り―!」
リビングの方向から凪ねぇの声がする…。
帰って来てたんか…。
ダダダダダダダ…
あ、走って来よった。
「おーかーえーりー!!」
勢いよく走って来たと思ったら抱き着いて来た。
相変わらずだな。
「なんで毎度毎度抱き着いて来やがるんだ凪ねぇは…」
「えー?別にいいじゃん!姉妹なんだし」
凪ねぇは私の姉。
よく引っ付いてくる。
「はぁ…」
20分後… リビング…
「ねぇねぇ、七海」
「あ?」
「伊吹と同棲してるんだって~?」
「はっ、えっ、ちょ!?」
「んでんで~ずーっとイチャコラしてるんだって~?」
「な、凪ねぇ!それ何処で聞いたの!!」
「聞いてどうするつもり~?」
「その情報網を遮断する!」
「ふーん」
「………」
「………」
「教えろよ!!!」
「やなこった~」(モミモミ)
「しれっと胸揉むなぁ!!」
「あ~やっぱり七海は面白いね~」
「うるせぇ!」
これは三沢家の日常。
ここまではテンプレ。
「で。時に我が妹よ、大晦日と言えば何を思い浮かべる?」
「終夜運転」
「そう。年越しそばだね」
そば?そんな事より終夜運転やろ。
って普通の人はただの移動手段としか見てなかった…。
「で、そばを一から作るん?」
「そう!一から作るよ!」
「え、そばの実から栽培すんの?」
「そうそう!隣の庭に植えて…ってんな訳あるかぁ!」
「はっ」
「リアクション薄っす…」
「で、いつまで抱き着いとるんや」
「ずっと」
「えぇ…」
「とにかく!そば作るよ!七海多分料理してないでしょ」
「げっ」
「やっぱり~」
料理は全部、伊吹に任せっきり…アイツの手料理が旨いのがあかんのや…。
決して私が料理下手やからとかとちゃうから…。ちゃうから…。
「で、仕事どうなん?七海」
「いきなりやな…」
「だって気になったんやから…」
「順調と言えば順調…」
「ふーん。で、能登半島。攻撃したんやろ?」
「せ、せやけど…」
「同じパイロットとして聞かせてや~」
凪ねぇは空軍のパイロット。
新千歳で日々ロシアからの領空侵犯に対処してる。
「…ええよ」
この前の"能登半島"やし、別にええか。
「わーい!」
「凪ねぇ喜びすぎ…」
「だって一部しか情報公開されてないんだよ?」
「そりゃ、機密とかあるでしょ」
「でも機密を知りたいの―!」
「…あ、この事絶対!ぜーったい!外に漏らすなよ?絶対やからな?」
「分かってる分かってる~」
「…ホンマ?」
「ホンマやって!早う聞かせて~や!」
「はいはい…」
私は能登半島沖海戦の事を事細かく話した。
機体は何だったーとか、機数は何機だったーとか、敵艦は何隻だったーとか。
とにかく色々話した。
凪ねぇは話に夢中だった。こんな凪ねぇ見るの久しぶり。
…可愛いな。
2時間後… キッチン
食材を買って、スーパーから帰って来た。
…重かった。
「凪ねぇ…なんで私に全部持たせるの…」
「いいじゃんいいじゃん!さ、作ろ!」
「お、おう…」
水を鍋に入れて、火をつけて沸騰させる。
鍋デカ…。
「うちにこんな鍋あったんや…」
「あ、これ私が持ってきた奴」
「…………」
「私はこれ位が丁度いい」
「凪ねぇ…食い過ぎ…やから体重増えんねん…」
「え?」
「ナンデモナイー」
凪ねぇは昔から大食い。
回転寿司行った時の会計の金額は普通に5000円は越す。
それで、よくある"超大盛食べ切ったら無料!"みたいな奴を見つけては全て平らげる。
…いつか私も食われちまうんじゃねぇか…?
「おい、沸騰したぞ」
「あ、ホントだ」
麺を少しずつ入れる。これでいい感じに茹で上がるとかなんとか。
「ん?一気に入れないの?」
「いや、こうした方が美味いんだってよ」
「どうせ腹に入れば皆同じ!!」
「あっ、ちょ!」
凪ねぇが麺を全部一気に入れやがった…何しやがる…。
「チッ」
「別にそんなに味が変わる訳でも無いんだしいいじゃない~」
「しゃーねぇなぁ…」
そういや出汁どうすんだ…?
「出汁、どうすんの?」
「市販の物を使いまーす。出汁取るのめんどくさいからね~」
「あ、あぁ…」
そばを茹でてる鍋とは別の鍋に市販のそばつゆを大量の投下。
そして、火をつけて温める。
多すぎる気がするが、最悪そのまま飲めばええし。
数分後…
「完成!」
「おぉ」
美味そうな並盛の温そばと……。
超超大盛の温そばが……。
「凪ねぇ…相変わらずだな…」
「え?なんか言った?」
「いいや、何も。さ、食べよ」
「はーい」
「「頂きまーす」」
ズズズズズズズズズズ…
うん。普通に美味い。
「美味しいねぇ~」
「あぁ。美味いな」
凪ねぇの食いっぷりがヤバイ。
掃除機みたいに麺吸いこんでる…怖…。
「ん?どうしたの七海」
「いや、何でも」
「そっか」
ズズズズズズズズズズ…
30分後…
「ふぇ~…食った食った…」
そばで腹一杯になるなんて久しぶりだな…。
安孫子の唐揚げそば以来だな。
呉に戻るのは正月三が日の後。
1月5日。夜行バスで呉に戻る。
「ねぇ~七海~」
「ん?」
「七海って高校入ってから随分丸くなったよねぇ~」
「そんな事無ぇよ…」
「嘘だぁ~!中学の時なんて先輩に敬語すら使わなかったやーん」
「せ、せやけど…」
「それ所か弱み握って服従させてたやーん」
「せ、せやな…」
「でも高校になったら性格180度変わったよねぇ」
「…………」
「女の子らしい感じになったよねぇ」
「これ以上何も言うな…」
私の黒歴史が掘り返されてく…。
伊吹には全部隠してる。
…知られたらどうなる事やら…。
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