第二十六話 演習(後編)
前回のあらすじ:演習1日目。
今回の演習は、機動艦隊対機動艦隊の空母艦隊対決。
指揮は参謀長に全て丸投げして、ただ見守る伊吹。
流石は実戦を経験した乗員達。これまでの演習より、動きがスムーズ。
そして、無事敵の機動艦隊を殲滅した。
そして演習は2日目へ…。
12月20日… 神津島沖… 蒼龍艦橋…
「司令、CICには行かなくても良いのですか?」
「CICじゃなくとも指揮は取れる。まぁ、上陸する光景を生で見たいってのが一番かな」
「艦橋から上陸が見れる所まで接近するのですか?」
「そうね、今回は先に艦載機である程度制圧してから上陸開始するからね。多分大丈夫大丈夫」
「司令がそうおっしゃってる時に大丈夫だった試しがありません…」
「…今回こそは大丈夫よ、少尉…」
「…怪しい」
演習2日目である。
今日の演習は蒼龍の揚陸艦としての実力を見る為の物である。
簡易的な揚陸艦機能を備えていても、性能が優秀でなければ積んだ意味が無い。
今回は陸軍との合同演習である。
上陸するのは陸軍の第13戦車中隊と第8歩兵連隊。
わざわざ岡山の日本原駐屯地と、鳥取の米子駐屯地からここまで来てくれた。
「秋月司令」
「ん?」
「もうすぐですね…」
「そうだね…」
「いやぁ、わざわざ岡山から…ご苦労様」
「いえいえ!鉄道連隊のお陰で楽に来れましたから」
彼女は第13戦車中隊の中隊長の新見 凛。
階級は少佐。今や退役が噂されている74式戦車を運用する数少ない部隊の隊長。
やっぱり、海と陸じゃ雰囲気が全然違うねぇ…。
「鉄道連隊…最近復活した鉄道部隊かぁ」
「えぇ、お陰で戦車の移動も楽々ですよ~」
「へぇ~。機会があったら使わせてもらおうかな」
「是非是非!本当、凄いですよ!」
そこまで詳しくは知らないが、主に陸軍の兵器と人員を輸送する為の部隊。
なんか、列車砲も持ってるとか持ってないとか。
…列車砲の需要ってあるのかな。
3時間後… 09:12… 蒼龍艦橋…
演習が開始された。
上陸地点は、神津島の観音浦。あそこは上陸地点にぴったり。
「赤城、加賀から戦闘機隊が発艦。鴎の護衛に入る模様」
「鴎隊、予定地点到達は0922」
「翡翠より報告。上陸地点予定に敵影は見られず」
「先遣隊より報告、上陸地点に多数の戦車・対戦車砲と歩兵を確認」
「了解。作戦参謀、爆撃地点を決めて」
「お任せください。おい!先遣隊からもっと情報を聞き出せ!」
今回の演習はボクが指揮する。
そして…いつもより皆、熱が入っている。
まぁ、そりゃ初めての上陸演習だし…仕方ないね。
と言っても、ボクも初めてだけどねぇ。
「先遣隊より報告。敵電探施設を無力化」
「了解。電探施設は爆撃しなくても良くなったね」
「司令、爆撃地点を決定しました」
「了解、見せて」
「こちらです」
作戦参謀は色々書き込まれた地図をボクに渡す。
さてさて、どんな物かな。
「うんうん…いいね、これで行こうか」
一か所に爆撃を集中させるのではなく、海岸全体を爆撃する…うん、これくらいでいいかな。
戦闘機隊による対地攻撃もやるし、十分だろう。
「了解しました。無線手!」
鴎隊に爆撃地点の詳細が伝えられる。そして、同時に護衛の戦闘機隊にも伝えられる。
対地攻撃を行うのは現在護衛に就いている機体だ。
さぁ、下準備を整えたら上陸開始だ。
09:26…
[こちら鴎、指定地点の爆撃完了。帰投する]
「了解。先遣隊による戦果確認が完了次第、第二段階へ移行する」
[鴎、了解!]
下準備は整った。後は先遣隊の報告待ちだね…。
2分後…
「先遣隊より報告。敵の約6割が爆撃により壊滅。上陸は予定通り可能」
「了解。艦隊、第一戦速。これより第二段階へ移行する!」
「第二段階へ移行。上陸予定の者は準備せよ」
艦内放送にて、陸軍に準備させる。
さぁ、『蒼龍』の揚陸艦としての実力はどれくらいだろうか…!
22分後…
観音浦の海岸が見える。
演習用の兵器が海岸に配備されている。
だが、少ない。爆撃や機銃掃射で破壊された様だ。
「司令、上陸準備完了しました。いつでも行けます」
「了解」
いよいよ上陸だ。
陸軍のお手並み拝見と行こうか。
「上陸開始!直ちに海岸を制圧し、橋頭保を築け!」
「上陸開始ー!上陸開始ー!前部ハッチ解放ー!」
艦橋からは良く見えないが、艦首側のハッチが解放されてそこから陸軍を載せた上陸用舟艇が次々海岸へ向かって進んでいく。
戦力としてはかなり少ない。
蒼龍の上陸用舟艇は10艇程度しかない。
だが、離島を制圧する程度であればこれでも十分かもしれない。
まぁ、そこら辺を見極めるための演習だ。
「報告します。現在、海岸に展開中の敵部隊からかなりの抵抗を受けています」
「なんとか回避しているものの、これでは撃沈されるのも時間の問題かと…」
「大丈夫!」
「は…?」
「隼がだいぶ前から上空待機してるじゃないか」
「…あぁ~…そう言う事ですか…」
「そういう事」
「燃料最近高いんですから…」
「まぁまぁ、必要経費だよ」
「だと良いのですが…」
っと、隼が海岸を攻撃し始めたね。
いいね、これで抵抗もかなり無くなるはず。
「上陸部隊は海岸に到達。戦車部隊を中心に順調に敵戦力を排除しつつあり」
うん、いいね。練度高いね。流石は陸軍!
「司令、間もなく赤城・加賀からの攻撃ヘリが到着します」
「ん、了解」
正直、上陸と同時に来て欲しかったけど仕方ない。
無いよりはマシだ。
ババババババババババババババ…
おっ、あれか。
音のする方を見てみると、艦載用の攻撃ヘリ【一式攻撃回転翼機『紫光』】が6機海岸の方へ向かっていった。
作戦は順調だ。
[勝山より蒼龍へ、海岸を制圧。敵影は見られず]
「蒼龍了解、引き続き警戒せよ」
[了解]
「…司令、これで宜しいですね?」
「うむ」
10分後…
演習は無事終了した。
まだまだ改善点があったね。
まぁ、これで今の実力が知れた。これから訓練して改善していこう。
さぁ、横須賀に戻ろう。
横須賀基地…
帰投したボクは、榊原司令と色々話す事になった。
まぁ、当然だね。
「お疲れ」
「疲れてなんかないですよ」
「いや、慣例みたいな…そんな感じの奴…」
「えぇ、えぇ、分かってますよ」
「じゃぁなんで…」
「気分です」
「気分…気分…」
「そーです」
「そっか…まぁ、何はともあれ演習終了!」
「そーですねぇ…」
「ん?なんか聞きたいことでもあるの?」
「えぇ、ありますよ」
「何、言ってごらん」
「昨日の演習、なんで1発もミサイルを撃たなかったんですか?」
「……あ~…えー…えーっとねー…」
「はい」
「……えーー…」
大分悩んでるみたいです。
何があったんだ…。
「…手加減…」
「…どうせそんな事だろうと思いましたよ」
「あっ、分かっちゃった?」
「えぇ、分かりましたよ」
「あはは…」
「はぁ~…こういう時は本気で来てくださいよ全く…」
「いやぁ~ごめんごめん」
「はぁ~貴方は少し甘いですよ…」
「あはは…そうだね…あ、俺も聞きたいんだけど…」
「はい?」
「味方の爆撃機と戦闘機が向かってるのによくミサイル打ったね~」
「…………」
「…あれ?」
「あの時の指揮は参謀長に丸投げしてましたよ」
「…あ~、そっか…忘れてたわ」
「……」
「伊吹だったら、多分打たないだろうからな」
「えぇ…打ちませんよ…なんせ…」
ボクはこの後に続く言葉をこらえた。
あゝ、思い出したくない。
「あ、あぁ…その…」
「……いえ、貴方は何も悪くありませんよ…」
全てはボクの責任だ。
まともな武装を持たせなかったボクの…
ダァン!
「あっ」「え?」
一番来て欲しくないタイミングで海琴が来てしまった。
あゝ、少々面倒だ。
「おぉ?どうした?なんか重苦しいぞ?」
「いやぁ…あのぉ…ね?」
「ん?何だよ、はっきり言えよ」
「え?え?え?ん?えぇ!?」
「んだよ、何驚いてんだオメェ?」
うーん、上官だろうと関係ないみたいですね、えぇ。
「せ、性格変わった…?」
「反転180度~」
「第一戦速~」
「「ヨーソロー」」
「…それで、どういう事…?」
「一言で済ませますと二重人格」
「本当に一言で済ませたね…でも分かりやすい」
「まぁ、こんな感じですよー…」
海琴はボクの隣の椅子に腕を組みながら座っている。可愛い。
「…でも、面白いな」
「あはは…」
「それで…観艦式の話だよ、観艦式」
「あぁ、そう言えば25…でしたか」
「そう、リア充を[暴力的な表現]する日だよ」
「うーん、絶対違う」
と言うかこの人リア充なんて言葉知ってたんだ。
「[暴力的な表現]かぁ、面白そうじゃねぇか」
「違う違うそんな物騒な日じゃないから…」
「違うのか?」
「うん!」
「チッ…」
やっぱ性格180度反転してるなぁ…。
176度くらいかなぁ…?
「そ・れ・で!観艦式ですね!」
「そ、そうだけど…」
ボクは強引に話を戻した。
「今回乗ってもらう艦は何です?」
「今回は…」
ボクはちょっとドキドキしながら聞く。
「この蒼龍だ」
「…成程」
今回はこの子に乗ってもらうんだね。
「一般人が乗艦するのはこれが初めてだからな、気合入れて行けよ」
「分かりました~」
「あ、そうだそうだ…」
「はい?」
「最近さぁ…」
あ。これ話長い奴だ。終わった。
…この後、ボクと海琴は約3時間の雑談に付き合わされる事となる…。
この人の話は……長いっ!!!
お読みいただき、ありがとうございます!
ほんの少しでも「良いね」と思ったらブックマーク、評価の★の方を是非!
(付けると作者が凄い喜ぶよ)
よろしくお願いいたします!
【ご案内】
陸軍側の上陸演習…
【日本陸軍第13戦車中隊 第一話】
https://ncode.syosetu.com/n6738hx/2/




