第二十四話 演習直前
前回のあらすじ:横須賀に到着し、休暇を与えられ博多へ向かった伊吹と七海。
昔、偶然見つけ常連となった寿司屋で寿司を食べて…普通と変わらぬ旅行を楽しんでいた2人。
そして深夜3時、伊吹は七海を連れ出し夜の博多の街を歩く。
しかし突然街灯が消えるという怪奇現象に見舞われる。そして、不審な行動を取る伊吹。
すると意識を失う。
起きたらそこは宿だった。伊吹は宿から連れ出していないと言う。
しかし、伊吹の靴は無くなっていた。
そんな不可解な現象に見舞われた博多旅が帰投した2人、それからは特に何もない日々を過ごす…。
12月19日… 東京湾… 蒼龍艦橋…
「七海」
「はい?」
「ボクちょっと不思議な夢を見たんだよね」
「どんな夢ですか?」
「零戦に乗って、何処かに向かう夢」
「零戦…ですか」
「そう、零戦」
「何処に向かうんでしょうね?」
「さぁね。ミッドウェーかもしれないし、真珠湾かもしれない。ただ…」
「ただ?」
「海の上を、編隊組んで飛んでたね」
「そうですか~」
「ボクね、最近零戦を見ると何処か親近感と言うか…懐かしさを感じるんだよね」
「………」
「普通に動かせそうな感じがするんだよね」
「そうですか」
「もしかすれば、前世なのかもしれないね」
「かもしれませんね」
前世かぁ…そんな概念あるのかな?
来世…も実在するのかしら。
まぁいい、そんな事今気にしても仕方がない。
これから、一航戦との演習だ。
楽しみですね。あの天下の一航戦ですよ!
「一航戦とは三宅島付近にて合流。既に一航戦が待機している。
その後、予定海域へ向かう」
「司令、まもなく東京湾を出ます」
「了解。各艦に通達、東京湾を出た艦から蒼龍を中心に輪形陣!艦隊第一戦速!」
湾内では他の船の航行の邪魔にならない様に単縦陣で航行する。
我が国は貿易国家。故に貨物船による輸入が生命線。
その貨物船の航行の邪魔をしては申し訳ない。
三宅島近海… 14:21…
「艦影視認!第一航空戦隊、雪風と認ム!」
「了解、取り舵22度!一航戦の真横に艦隊を付ける!」
「司令!赤城より打電!」
「読み上げろ」
その打電とは、陣形の詳細である。
合流にあたり、陣形をあちらから指定して来た。
かなり詳細な内容を文面で送りつけて来た。
まぁ、モールスだしね。
「如何致しましょう?司令」
「返信!我、貴艦ノ指示ニ従ウ」
「了解!」
合流後… 蒼龍飛行甲板…
赤城・加賀・蒼龍を中心に輪形陣を組んだ。
これで総勢17隻の機動艦隊!空母は3隻!
…凄いなぁ。人生何が起こるか分かった物じゃない。
パイロットに憧れて赤城のパイロットになったと思えば、いつの間にか艦隊司令になって赤城と共に演習を行う立場に。
まったく、人生って何が起こるか予想できたものじゃないね。
「ん?」
ヘリがこっち飛んできてるって、赤城のヘリだ。
何の用かな?
バババババババババ…
ヘリが飛んできて…着陸。
そして降りて来たのは…!
「やぁ、数十日ぶりだね」
「ですねぇ」
榊原司令だった。
何の用だ、まったく。
「それで、何の用ですか」
「そんな冷たい目で見なくてもいいじゃないか、いや、ちょっと伝えたい事があったんだよ」
「はぁ…そうですか」
無線や打電で伝えればいい物を、何故直接…。
まぁ良い、折角来てくれたんだ。適当に会議室で話そう。
蒼龍会議室…
「それで、要件とは何ですか」
「そんな急がなくても良いじゃないか、まだ時間はあるんだし」
「は、はぁ…」
この人の話は長い。非常に、長い。
捕まってしまえばお終いだ。30分~4時間の会話に付き合わされる。
「どうだい、伊吹。艦隊の調子は」
「士気は上々ですよ。特に問題も起きてませんし」
「それは良かった。艦艇の調子は?」
「各艦共に異常無しです。弾薬と燃料の補給もバッチリです」
「タンカーを沈める時、だいぶ苦労したそうじゃないか」
仙台沖のタンカー衝突事故の事だ。
いやぁ、ありゃ苦労したね。
「えぇ、大変でしたよ。なんせ蒼龍よりも大きい代物ですから」
「そうかそうか、第十雄洋丸以来の出来事だな」
「えぇ、そうですね。しかし今回は積んでたのが原油で良かったですよ。
ナフサなんて積まれてた時にはもう大変…!」
「あっはっは!不幸中の幸いって奴だな!」
「えぇ、そうですね」
「それで、本題だが…」
珍しく、本題に入るのが早い。
これは、何か重大な出来事がありそうな予感がする。
「この演習が終わったら…」
「終わったら…?」
終わったら…?何があるんだ…?
一体…!
「観艦式だ…!」
「観艦…式…!」
「それもただの観艦式じゃない…」
「何…だと…?」
「大演習観艦式だ!」
「何…!大演習観艦式…!?」
「そうだ…!1936年の特別大演習観艦式を最後に約80年間行われなかった大演習観艦式だ…!」
「ぁ…ぁ…ぁぁ…!」
「……………」
「……何やってるんでしょうね」
「何やってるんだろーねー」
「えー…いつやるんですか?」
「12月25日」
「25日ですか~そうですか~………え?」
「ん?」
「に、25って!ク、クリスマスじゃないですか!]
「そうだね」
「そうだねって…!えぇ…」
「君は反対か?」
「いやぁ…別に…完全に反対と言う訳では…」
「ふむ、理由は?」
「ボク自身は構わんのですけど…クリスマスに観艦式…いやぁ…マスコミに"軍国主義の現れ~"って言われそうですから…」
「そうか…まぁ、今更変えられないけどね」
「変えられないなら何で聞いたんですか」
「単純に気になったから」
「そうですか…」
「と、言う事だからね。今回の演習が終わったら観艦式だよ」
「わ、分かりました…因みに何処で?」
「相模湾だ」
「相模湾ですか」
「そうだ。まぁ、話はこんな所だよ」
「そうですか」
「じゃ、俺は赤城に戻るよ」
「はい。お気をつけて」
「おう!」
3時間後… 司令官私室…
「あ~、あ~、観艦式がこんな形で行われるなんてねぇ…」
まさか演習の直後にやるなんて思いもしない。
ましてや大演習観艦式。この演習があって成り立つ観艦式。
しかもクリスマスだ。…いやぁ、驚いた驚いた。
まぁ、やるしかないか。命令なんだし。
コンコンコン
「はいはい」
ガチャ
「司令、間もなくです。CICへお戻りください」
「うむ。分かった!」
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