第二十一話 七+琴=???
前回のあらすじ:新兵を拾い、大湊を出港した二航戦。
新兵に質問攻めにされる伊吹。その後、部屋でリラックス中に1人の少尉が伊吹の元へ…。
話を聞くに、伊吹の同級生であった。2人は、昔話に花を咲かせる。
艦隊はオホーツク海を目指して北上する…。
蒼龍CIC… 11月13日… オホーツク海…
現在、我が二航戦は対地戦闘訓練中である。
目標は 44.588976,142.661617 北海道の紋別郡武雄町の山中。
ここは海軍が買い取った対地専用演習場だ。勿論住民の理解も得ている。
[こちら鴎、対空砲群・電探施設の破壊を確認。予定のコースにて帰投する]
[翡翠、了解。敵戦闘機は確認出来ず]
(翡翠 蒼龍AWACSの符号)
[鴎、了解]
[こちら翡翠、隼隊突入せよ]
[隼、突入する]
「航空参謀、何で先に鴎を突入させるのか分からないね。向こうに戦闘機が居ない保証は無いし」
「でも、高高度爆撃ですから。リスクは低いでしょう」
「いや、二次大戦時じゃないんだから。高高度迎撃何て容易でしょ」
「うーん…」
「まぁ、低・中高度よりも迎撃しにくいのは事実だね」
「まぁ、ただ…」
「高高度に事前に戦闘機を配備されていたら…」
「……………」
「機銃大事」
「機銃で対処できますかね…?」
「出来る出来る。出来なきゃ堕とされる」
「…そうですね」
[こ、こちら隼2!か、滑走路の破壊を確認!き、帰投する!]
[こちら翡翠。1番機はどうした?]
[先ほどから呼びかけてるんですが…応答が無いのです!]
[1番機の状態は?]
[外側からは異常は見られませんが…]
[飛行コースも予定通り…どういう事だ…?隼1、応答セヨ!応答セヨ!]
[…………]
[隼1!応答セヨ!]
[…あ"?]
[!?]
「!?」
この無線を聞く者全てが驚愕した。
普段の七海からでは考えられない返答・声色であるからだ。
いつもとは違い、かなり低い声色。キレ気味の声。
うーん?どうしたのだろう。
[こ、こちら翡翠。げ、現状を報告せよ!]
[あ?なんでわざわざ報告しなきゃなんねぇんだよ?そっちで全部見えてんだろ?な?]
「み、三沢中佐!k…」
スッ…(航空参謀の前に手を出し発言を制止する)
「し、司令」
「大丈夫、ボクが対処するから」
「で、ですが…!」
「七海と何年一緒に居ると思ってるの?多分何とかなるよ」
「は、はい」
「無線手、無線を」
「は、はい!」
「あぁ…七海?」
[なんだよ]
「計器だけじゃ分からん事もある。それに、万が一計器が故障してる事に気づかずに翡翠が指示を出していたら困るだろ?」
[…確かに…困る…]
「でしょ?現場との情報の差異は無い方がいい」
[………]
「まぁ、そういう事だよ。分かったかい?」
[…分かった]
「よろしい。じゃ、報告宜しく」
[…こちら隼、予定のコースで離脱中。全機健在、追撃は認められず…]
[…これでいいだろ?]
[翡翠、了解]
七海は何処か不満そうだった。
…何故急に豹変したんだ?
うーむ…。
演習終了後… 医務室…
「どうでした…?」
「そうですね…」
彼は赤坂 海祢。
軍医少佐である。
「えーっとですね…」
「はいはい」
「中佐、先ほどの記憶が無い様でして…」
「はいはい」
「恐らく…解離性同一性障害かと…」
「は、はぁ…」
「いわゆる多重人格と呼ばれる物ですね」
「うーむ…」
「詳しく説明しますとですね…」
ボクは解離性同一性障害について赤坂軍医から詳しく説明を受けた。
どうやらストレスで人格が交代する様だ。…ボクにも起こるかもね…。
…さて、これを直すべきだろうか?
ボクは任務にさえ支障が無ければ…いや、違う。
"七海が治療を望むか否" これが全てだ。
…流石にこれは贔屓しすぎだろうか?
この事案から4日が経った11月17日。
人格交代の引き金は未だに掴めなかった。
七海に聞いてみても曖昧な回答しか返ってこない。
隼隊の部隊員に聞いても『分からない』としか返ってこない。
AWACSに、白鷺隊に、とにかく聞いて回った。
しかし、どれも空振り。何も分からない。
うーむ、これは困った。
そんな事を自分の部屋で寝ころびながら考えていると…
ダァン!
聞いたことも無いような音を立てて扉が開く!
これまでに司令官私室のドアをこんなに派手に開けた奴は居ないだろう…恐らく…。
で、誰なんだろう…。
左に寝返り、顔を確認する。
「あゝ、どうしたんだい?」
「あ?ただ単に会いに来ただけだよ」
「そかそか」
裏…とでも言うべき状態の七海との初の面と向かっての会話。
まぁ、普通にしてたらええでしょ。
「観艦式、まだやってねぇよな」
ボフッ!
ベッドに勢い良く腰掛ける七海。
ほんの少し揺れるベッド。ボクが見て来た七海じゃ絶対にしない態度。
………こういうのも良いなぁ………
「…………」
「どうした?」
「あ、いや、なんでも。で、観艦式か」
「やってねぇだろ?今年」
「せやな。例年じゃ、10月下旬にやるね」
「だろ?なのに今年は11月になってもやんねぇ…何考えてんだ海軍省は…」
「せやなぁ…海軍省とか軍令部はたまに何考えてるか分からない時があるからね」
去年は10月22日に行った。しかし、今年は11月に入っても兆候が見られない。
上は一体何を考えてるんだ…。
「……………」
「あ?何ジロジロ見てんだ?」
「ん?いや、特に」
…やけにソワソワしてるなぁ。七海。
うーん、ちょーっと顔が赤い様な…?気のせいか…?ん?左手が少し暖かい。
そう思い左手の方を見てみる。
…あ、手握ってる。
ボクは再び七海の顔を見てみる。
「…………」
「な、なんだよお前…」
「いや、特に何も」
「んだよ…さっきからジロジロ見て来やがって…」
「だーかーらー、何も無いって言ってるでしょうに」
「お前、昔からそういう所あるよな…」
「せやなぁ」
間違いない。照れている!
口調こそ強い物の、実際は…なんだ、そのー、こういう時なんて…あ、ツンデレだツンデレ。
姿形は七海だが、中身は圧倒的王道のツンデレだ。
しかしまぁ、こういう時はどう言葉で表せばいいのやら…。
そして暫く沈黙が続く…。
時刻は23:58。七海も睡魔が襲って来る頃だろう。
…あぁ、やはりか。
七海がウトウトし始めて来た。このまま寝てしまいそうだ。
…ボクの方が先に寝てしまいそうだ。
ってか、七海がずーっとソワソワしてる。
そこまで…ボクと居るのは緊張するのかなぁ…。
いや……もしや…ボクに対する七海の本音ってこっち…?
いやいや、仮にそうだとしたら…いつもの七海の甘え具合はどう説明すれば…?
うーん、人の気持ちを理解するのはやはり難しい。
蒼龍司令官私室… 11月21日…
「今日の昼飯は~」
艦内の楽しみは複数あるが、やはり飯が一番の楽しみだ。
…まぁ、潜水艦よりは恵まれているが…。
さて、メニューは何かなぁ。
「…うんうん、いいねいいね」
鯖の塩焼き・お豆腐の味噌汁・小松菜のおひたし・十六穀米2号。
うんうん、いいねいいね。
「いただきます」
まずは鯖の塩焼きから食べる。
作法は一応心得ているが…まぁ、ここでそんな細かい事に気を配る必要も無い。
そして、骨は大敵である。
ボクは小さい頃2度喉に骨が刺さり、地獄を見た。
故に魚を食べるときは骨に常に警戒している。
しかし、それでも魚は好きだ。特に塩焼き。
丸ごと食べるのって、なんか良いよね。
骨に警戒しながら身に箸を入れる。
毎度毎度骨を抜き取っているので、だいぶ慣れた。
ある程度骨を抜いた所の身を一切れ食べる。
「美味いわぁ…」
やはり、食は重要である。
軍艦の花形である砲雷や航海。しかし、彼らだけでは艦は動かない。
主計や軍医…彼らのような裏方が居て初めて艦は動く。
そして、どちらも欠けてはならない。
裏方の彼らが居なくなれば、食事は簡素な物となり尚且つ医療の質も大幅に低下し、士気は最低となる。
そして、表舞台に立つ者も同時に必要である。
砲雷が欠ければ軍艦としてのアイデンティティを喪失し、航海が居なくなれば操艦する者や進路を決める者が居なくなる。そのような状態はもはや軍艦とは呼べない。
「そういや あすつべ の取材が次の出港の時やったなぁ…」
UsTubeで海軍がやってる広報活動。
その取材が次回出港時に行われる事となった。
富士と秋波の発艦を取材する様だ。
一航戦の取材は既に行われている。
『艦載機発艦』だけでは要素が被る。
故に赤城と加賀に搭載していない富士と秋波の発艦を取材する。
次の出港はいつになるかなぁ。
20分後…
「ごちそうさま」
美味かった!
さて、回収は勝手にしてくれるから…。カメラの整備をしよう。
一眼君はこまめな整備が必須である。
ボクが持っているのはMaiteの『D52-KD54-B』と『D50-9922』の2つ。
後者はボクが一番最初に購入した中古品。手入れと修理を繰り返し今に至る。
今やD50-9922はプレミア品だ。ネットオークションに出せば10万は付くんじゃないかな。
MaiteのDシリーズは一眼レフ。Cはコンデジ。コンデジは買っていない。
ボクは一眼派だからね。
レンズは同じくMaiteの『HZ220 100mm~400mm』と『HZ20 100mm』の2つ。
ストロボライトは『ED-11』とそれに付随するバッテリーとバッテリーパック。
専用のバウンスアダプターとカラーフィルター。予備も買っている。
カメラ本体のバッテリーも予備をバッチリ購入。勿論、充電器も予備を揃えている。
一応、リモートコントロールスイッチの『AA44』を持っている。
しかし、使った事は無い。(このまま売ってしまおうか…)
レインカバーとケースも買っている。雨に濡れて使えなくなるなんて真っ平ごめんだ。
カバンはショルダータイプを購入。結構入るから嬉しい。
まぁ、乗り鉄がここまでする必要は無さそうだが…。一応良い物を揃えておく。
因みに、七海はこれ以上に色々持っている。うーん、撮り鉄ここに極まれり。
それにしても、どの時代でも悪い者が目立つというのは仕方がない事なのだろう。
今や悪行はネットを通じすぐ拡散する。そして、全体のイメージが悪くなる。
うーむ、これは仕方がない事なのだろう…。
30分後…
カメラの整備も終わり、そろそろ津軽海峡に入る頃だ。艦橋へ戻ろう。
ダァン!
おっと?
「おーい、暇してるかー?」
「今丁度暇じゃなくなったねぇ」
「チッ、タイミング悪ぃなぁ…」
人格を識別する為にそれぞれに名前を付けるという法則の様な物により名前を七海が付けた。
『海琴』そう名付けた。
因みに交代のタイミングは分かってない。
七海も海琴も曖昧な回答ばかり。うーむ、困ったなぁ。
「まぁまぁ、もう少しで津軽海峡なんだから。艦橋に上がらないと」
「と言うか、付いて来てもいいんだけどねぇ」
「それは…ちょっと…その…」
「そっかぁ」
七海ならば問答無用で付いてくるんだけど、海琴は恥ずかしがって付いてこない。
しかし、他人が居る場では海琴は細かいアピールを忘れない。
普通の友人感を出しつつもしれーっと手を繋いでたり、船内で揺れた時にわざと倒れ掛かってきたり等々…。
いやぁ、何だろうな。策士…なのかなぁ、これは。
「…ここに居て良いか?」
「構わんよ」
と言う訳で、艦橋に戻ります。
蒼龍艦橋… 津軽海峡突入寸前…
「どうだい、予定通り入港出来そう?」
「はい!予定通り入港出来ますよ!」
「うむ、それは良かった」
予定通り、大湊に入港できる様だ。
やはり予定通りに進むのは気持ちが良い。
12分後…
艦隊は津軽海峡に突入した。
白神岬灯台が見える。陸奥湾はすぐそこだ。
領土問題の都合上、北海道の周りを一周する事は難しい。
まぁ、仕方のない事だ。いざと言う時は武力で以って…って、これは最終手段。
…まぁ、日本はもう最終手段でしか北方領土を取り返せないのかな。
そうでないと信じたい所である。
大湊基地…
「はぁ~!12日ぶりの陸地だぁ~!」
ほぼ2週間の航海を終え、大湊に帰って来た。
航海から帰ってくる度にこうやって地に足が付く事の嬉しさを実感する。
因みに、七海と海琴の交代タイミングは未だ不明。
鍵は何なんだろうなぁ…。
「…そろそろ横須賀に移る頃か?」
そーろそろ横須賀へ行けと言う命令が来るのでは無いかと思う。
横須賀には一航戦が居る!演習、楽しみだなぁ。
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