第十八話 移動ついでに護衛任務
前回のあらすじ:能登半島沖での戦闘を経験した後、艦隊は大湊基地へと配置転換される事となった。
その移動ついでにとある海運会社の貨物船団を護衛する事となった。
戦闘が二航戦の圧勝で集結し"いつもの日本海"に戻ったかと思われたが、まだ"いつもの日本海"に戻っていなかった。
1月13日 日本海…
二航戦は舞鶴基地から大湊基地へと移される事となった。
故に、大湊へ向けて日本海を北上中である。そして、その移動のついでに護衛任務を請け負う事となった。
今から依頼があった会社の貨物船にヘリで飛ぶところである。
バババババババババ……
「へぇ、6隻でコンボイ組んどるんか。これ全部同じ会社の船?」
「そうですね、全て同じ会社の貨物船です」
「確か名前は…橋口海運、だったかな」
「はい、初めは加古川の小さな海運会社でしたが今では世界で活躍する一大海運会社ですね。
ここが倒産すれば、世界中の海運が壊滅的な被害を受けるとか受けないとか」
「へぇ、そんなに大きい会社なんか」
それにしても橋口海運かぁ…何処かで聞いた事あるような、無いような。
ちょっと思い出してみるかな。
~~回想のお時間です~~
時は遡り高校一年生…
「へぇ~、起業かぁ。ええねぇ」
やはり、こういう所は彼らしい。
「せやせや、やから高校卒業したら海運会社起業したる!」
「大学は…?」
「んなもん知らん!」
「そ、そっかぁ…」
「因みに名前は?」
「んなもん決まっとるやろ。橋口海運や!」
「うんうん、名を継ぐ。いいねいいね」
「お前は卒業したらどないするんや?」
「せやなぁ、ボクは大学行くしか実質選択肢ないからなぁ」
「いざとなったら養ったる!ステーキ位は食わせたるわ!」
「おぉ、それは心強い」
「んでどこの大学行くんや?」
「大学…かぁ」
「?」
「ボクは…海軍のパイロットになりたいからね、航空学校を目指すよ」
「航空学校かぁ!それもええなぁ!」
「お前は重くて飛行機が飛ばんくなりそうやけどな!あっはっはっは!」
「せやなぁ!がっはっはっはっ!」
~~回想終わり~~
「…最近連絡を寄越さないと思ったら、仕事で忙しいんか?」
「お知り合いなんですか?」
「まだ決まったわけじゃないけどね」
「司令、着陸しますよ」
「ん、了解」
ババババババババ…キキッ
「到着しましたよ、司令」
「了解、帰りも頼むよ」
「お任せください。では、お気をつけて」
「了解~」
貨物船【神商丸】船上
「お待ちしていました、司令官。私はこの神商丸船長兼日本第六商船隊司令の 宮下五郎 と申します」
「私は第二航空戦隊司令の秋月伊吹です。貴船らの安全を保障します」
「秋月司令官ですか、どうぞよろしく」
「こちらこそ」
宮下と握手を交わす。なんだか懐かしい感じがする。
「船内を軽くご案内します。こちらへ」
「お願いします」
二十分後…
「これが、我が神商丸の船内です」
「他の船は?」
「他の船もほぼ同じ構造です」
「全ての僚船の名前が知りたいですね」
「極商丸・海山丸・郵濠丸・天満丸・秋馬丸ですね」
「ふむふむ、常に6隻で行動するのですか?」
「そうですね、基本的には6隻で行動します。海軍の艦隊制度とほぼ同じ感じですね」
「ふむ、海運会社にしては…特殊と言いますか…何というか…」
「あはは、そうですね。他の海運会社は1隻で行動しますから」
「それが基本ですよね」
「所で、貴社の会社の社長の名前を知りたいのですが…」
「あら、ご存じでないのですか?」
「いえ、完全に知らない訳じゃないのですが…うろ覚えでして…」
流石に社員で知らない人は居ないだろう。
これで本当にアイツが作ったのかを確認する!
「橋口社長ですね」
「フルネーム」
「橋口 篤信社長です」
「OK、ありがとう」
この瞬間、ボクは確信した!彼だ!アイツだ!間違いない!
ボクの心は歓喜の嵐が吹き荒れていた。
橋口はしっかり夢を叶えた様だ、嬉しいね。
後で電話せんとね…あ、大湊着いたら休暇取って会いに行こう。
「本社は加古川にあるんよね?」
「はい、本社は加古川です。うちは新潟支社の商船隊です」
「OK、ありがとう」
うん、やっぱ東京に移さず加古川に残ってるね。予想通り。
「そろそろ私は戻らせて頂きます。案内ありがとうございます」
「いえいえ!護って頂いてありがとうございます!」
「いやいや、民間船護衛も立派な任務ですよ。特別感謝されるような事はしてませんよ~」
こうやって民間人からお礼を言われる時が一番嬉しい。
さ、そろそろ蒼龍に戻ろう。
蒼龍艦橋
「航海長、異常は無いか?」
「いえ、異常はありません」
「了解」
このまま順調に津軽海峡まで行けるといいな。
この前の事件のせいで日本海沿岸部は"民間船護衛地域"に指定された。だからボク達が護衛する。
さらに、これを受けて1999年以来建造が為されなかった護衛艦の建造が再開された。
これまでの護衛艦は駆逐艦と同等の扱いであったが、今回の護衛艦は名前の通り護衛を目的とした艦船となった。
「護衛艦の建造が再開されたみたいだね」
「えぇ、そうですね。これは護衛隊群の復活もあるかもしれませんね、司令」
「そうだな。艦隊と護衛隊群…中々、カオスな事になりそうだな」
「艦隊司令部とは別に護衛艦隊司令部まで出来たりしませんかね?」
七海が冗談交じりに言う。
「いやいや、流石に無いでしょ~。護衛の為だけの司令部は少し非効率と言うか何というか…」
「あははっ、そうですよね。流石にあり得ませんよね!」
「三沢も冗談が上手いなぁ~」
「いやいやそんなそんな…」
「「「……あはははははっ!」」」
これが蒼龍の平和な日常。戦う艦とは言え、普段は笑いあり涙ありの人情溢れる艦。
津軽海峡目指して前進!
司令官私室…
「橋口橋口橋口…」
ボクは橋口に電話を掛ける事にした。
あいつ元気にしてるかなぁ。
単調な発信音を聞きながら待つ。
[あい、もしもし]
おっ、かかったぁ!
「やぁ、久しぶりだなぁ」
[おぉ!秋月か!久しぶりやのぉ!]
「せやろせやろ」
[んでどないしたんや?]
「いや、今丁度君の会社の船を護衛してる物でね。電話してみたんだわ」
[おぉ~!ちゅーことは日本海におるっちゅう事やんな?]
「せやせや、今山形沖や」
「会社が超順調な様で何より」
[いやぁ~お陰様でなぁ~。そういう秋月はどうなんや。パイロットになったんけ?]
「なったと言えばなったんやが、過去形よ過去形」
[過去形?]
「せや。今は二航戦の司令や」
[司令!?おぉ、おめでとさん]
「ありがと~」
[ほな忙しいから切るで]
「おん」
ガチャッ。ツーツーツー…
久しぶりに話せて良かった。
…この司令の役職も口封じであると思うと、なんだかなぁ。
蒼龍艦橋
橋口との電話を済ませ、艦橋へ戻った。
何か異常は無いだろうか。
「何か異常は無いか?」
「異常…と言いますか、少し興味深い無線が」
「へぇ、少し聞いてみようか」
興味深い無線?なんだろう。
しっかし、艦長が興味を引く無線か。少し楽しみではある。
[ザザザ…らは、日本国海上保安庁の巡視船PL42である。貴船は日本の領海を侵犯中である。直ちに領海から退去せよ…ザザザ…(ロシア語)]
「へぇ、領海侵犯のロシアの船?」
「はい。その様ですね」
「ふぅ~ん」
「し、司令?」
「ねぇ、その海域に行けない?」
「このままの進路であれば到達しますが…」
「OKOK」
「な、何をする気なんです?」
「まぁまぁ、少し待ってなさい」
四十分後…蒼龍CIC
「鷗隊発艦始め!」
「…司令、そろそろ何をするか教えていただけますでしょうか」
「ん?簡単だよ?艦上重爆撃機で侵犯船の上空を通過するだけだよ?」
「う、うーん。それなら1機で良い気が…」
「いやいや6機で出撃させることに意味があるんだよ」
「は、はぁ…」
**視点変更 伊吹→大野(鴎隊隊長)**
一式艦上重爆撃機"富士" 鴎隊1番機
「各機、しっかりついて来てるか?」
「はい、各機異常無しです!」
「それにしても司令は何を考えているのか…」
「わ[ざわざ6機で出撃ですもんね」
「1機で十分だと思うが…」
「何か司令には大きな考えがあるのでしょう。きっと」
「そうだと良いが…っと、見えて来たぞ"PL42でわ"と…おぉ?」
「軍艦…ですね!?」
「ロシア海軍の船じゃないか…もしや司令はこれを見越して…」
「2隻居ますね。艦番号を確認しましょう」
「記録係、しっかり記録しとけよ」
「了解しました!艦番号031、艦番号031。ロシア海軍ミサイル巡洋艦【ヴァリャーク】」
[ザザ…]
おっと、僚機から無線の様だ。
[こちら3番機、艦番号572、艦番号572。ロシア海軍駆逐艦【アドミラル・ヴィノグラドフ】]
「了解、引き続き監視を続行する」
「隊長、ロシアが進路を変えて領海から出ていくようです!」
「ザザ…こちら蒼龍、鴎隊は公海に出るまで監視を続行せよ」
「公海まで監視続行。了解」
司令の考えてる事はいつもよくわからない。
あの人は見た目は綺麗な女性だけど、中身は見た目にしては少し荒い。
でも許容範囲内。むしろ俺はあれくらいが好きだ。
**視点変更 大野→伊吹**
蒼龍CIC…
「今頃あいつらはきっと慌ててるだろう」
「そうですね~先輩。護衛戦闘機は付けなくて良かったんですか?」
「いや、大丈夫だよ。撃墜されたらロシアが悪者になる。だから戦闘機は要らない」
「そ、そうですか」
一時間ニ十分後…
[こちら鴎、ロシア軍艦艇は公海に突入。任務終了。RTB]
「了解、飯を大量に用意して待ってる!」
「ザザザ…おう!楽しみにしてる!」
「主計課に掛け合って見るかぁ…」
宮野さんや、鴎隊の大食い率高いの知ってるかい…?
あっ、七海が悟った顔してる。
11月4日 津軽海峡…
もうすぐこの護衛任務もお終いだ。
貨物船団は函館へ向かい、二航戦は大湊基地へ向かう。
最期にあちらの隊長と無線で話す。
[護衛ありがとうございました!]
「いえいえ、任務ですので!こちらこそ無事に送り届けられて良かったです」
[では、我々これで失礼します!またいつか!]
「はい!またいつか!」
無線を置く。これで護衛任務は終了だ。
「浦風、松風に下命。貨物船団の進路から避退せよ。艦隊第二船速」
「第二船速ー。ヨーソロー!」
船団が速度を上げて松風と浦風が居た進路を通過し、艦隊から離れていく。
さぁ、陣形を組み直そう。
「艦隊、輪形陣へ!」
一時間後 陸奥湾内…
大湊基地が見えて来た。
さぁ、明日からはここで働く事になる。
「入港用意」
入港喇叭が鳴り響く。
「入港よーい!!」
「曳船確認!」
入港後…基地司令室前廊下
基地司令から主任務を聞いてきた。
七海が部屋の前で待っていた。
「これからは津軽海峡及び宗谷海峡の警備が主任務になるよ」
「はい。ロシア軍艦艇の監視ですかね?」
「それも任務だけど、それともう1つある。違法操業漁船の監視だね」
「それは海保の役目じゃ…?」
「海保じゃ足りないからね、丁度機動艦隊が来るって言うから使おうって言う考えらしいね」
「そうですか~!これからは冬のオホーツク海が任務ですね!」
「そ。だからここに配属されている間だけ、砕氷艦が4隻新たに二航戦に配備されるよ」
「砕氷艦ですか~!いいですね~!」
「冬のオホーツク海は流氷が凄いからね、前方に4隻を付けて氷を割りながら進むって考えてるよ」
「あ、先輩!」
「ん?」
「飛龍の就航が少し早まったらしいですね!」
「へぇ~、何月になるの?」
「3月中旬になるみたいですね」
「おぉ~いいね。その頃には呉に戻ってるかな」
「そうですね~」
「さぁ、ここのご飯はどんなご飯かなぁ~」
「ベッドの柔らかさも重要ですよ!」
「うんうん、そうだね。ベッドの柔らかさは任務に直結するからねぇ」
「そうですね!」
ボクと七海は談笑しながら、二航戦の皆が集う基地の食堂へ歩を進めて行った……。
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(付けると作者が凄い喜ぶよ)
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