第十七話 荒波超え征く二航戦(後編)
前回のあらすじ:能登半島沖を航行していた謎の艦隊。その艦隊はテロ組織「アスカラズ」と言う組織の艦隊であった事が判明した。
判明後即座に、軍令部から攻撃の命下る。
攻撃の命令を受けた二航戦は、戦後初の軍艦に対する武力行使を開始する…!
発艦が完了し、私達は敵艦隊へ向けて進んでいた。
「こちら隼1!全機しっかり付いて来てるか?」
「隼2、当然であります!」「隼3、機体が重いですね」
「隼4、勿論ですよ」「隼5、初の実戦ですね!」
「隼6、墜落しない様に…頑張ります」「隼7、白鷺に負けないよう頑張りましょう!」
「隼8、白鷺なんかに負けてたまるかぁ!」「隼9、少し緊張しています…」
「隼10、中佐殿は頼もしいなぁ」
皆呼びかけに応じて、自身の心境を少し話す。
何しろ初めての実戦だからね。
今回の作戦はこう。
まず白鷺隊が囮となり高高度から突入、陽動を行う。
白鷺隊が囮となっている隙に超低空より隼隊が侵入、敵の不意を突いて殲滅するという作戦。
隼隊は10機、白鷺隊は7機で編成されている。
隼の使用する機体は【四式墳進戦闘機『飛電』】白鷺は【三式墳進戦闘機『極電』】。
隼の方が1世代上の機体を使ってる。そろそろ白鷺も四式戦に更新されるかな?
〈こちら蒼龍AWACS、各隊へ次ぐ、敵艦隊は進路を北北西へ転進。各隊は方位352の方向へ〉
「こちら隼、方位352、了解!」
蒼龍には貴重な早期警戒管制機(AWACS)の『慧眼』を積んでいる。
まさか艦上機でAWACSを作り出すなんて、誰も思わなかったよね。
「目標まで20km、方位そのまま、各員対空砲とAAMに注意」
もうすぐ敵艦隊だ、今頃は白鷺達が高高度から急降下を仕掛けてる頃かな?
敵艦隊は8隻、イージス艦が2隻、駆逐艦が6隻。
戦後77年、"軍艦に対する"武力行使が始まってしまう!
〈こちら蒼龍AWACS、白鷺隊、間もなく攻撃開始地点。降下を開始せよ〉
〈白鷺、了解。降下を開始する〉
白鷺隊は降下して攻撃を始めたみたい。
初動でどれだけ削ってくれるんだろう…1隻でも減らしてくればありがたい!
…と言っても、白鷺ばっかに頼ってちゃ駄目だ!隼も働かないと!
私は敵艦隊の姿が見えるのを、操縦桿を強く握りしめながら待つ。
息がだんだん荒くなってくる。
敵艦隊はまだ見えないの…?
まだ…?
まだ……?
敵艦隊は…まだ見えないの…?
っ…!見えた!
「こちら隼!蒼龍AWACS!我、敵艦隊見ゆ!我、これより敵艦隊を攻撃ス!」
「隼各機!攻撃開始!敵艦を全て撃沈せよ!」
「「「「「了解!」」」」」
私が号令をかけると同時に全機急上昇してミサイルの発射体制に。
私は少しだけ上がって発射体制に入る。
敵艦隊の損害は2隻撃沈、1隻中破と言った所かな?
白鷺隊の損害は無さそう…。でも、いつ撃墜されるかは誰にも分からない…。それは隼隊も同じ事…!
ピッ、ピピッ!
「電探照準固定…!」
「発射ァ…!」
ASM-3が敵駆逐艦に向けて飛んでいく…。敵のCIWSが必死に迎撃してる。
しかし……
敵の迎撃虚しく命中、弾薬庫に誘爆して轟沈してしまった。
「沈んでもうた…。私が…この手で…沈めたんや…」
「こちら隼3、隊長!全艦撃沈…しました」
「了解…」
「こちら隼、蒼龍AWACS、我、敵艦ヲ全テ撃沈セリ」
〈全て撃沈、了解。それにしても、そろそろうちにも符号が欲しいよ〉
〈蒼龍AWACS、呼びにくいからな!俺もそう思うぞ!〉
白鷺の隊長はどちらかと言えば陽気な方だ。
三島中佐。白鷺隊の太陽的な存在。よく奢ってくれます!
〈三沢~!折角こうして白鷺と隼が一緒に居るんだ!全機で編隊飛行しないか?〉
「えーっと、つまり…?」
〈白鷺と隼の機体全部で編隊飛行するんだよ!〉
「え~?燃料とか心配なんだけど…」
〈大丈夫大丈夫!少しだけだから!〉
「いやそれ大丈夫じゃない奴!?」
〈ははははっ!やっぱり三沢は面白いなぁ!〉
「あぁもう!からかわないでよ!」
〈……ははっ…おもろ〉
「ちょっとー!何笑ってんのAWACS~!」
任務中は張り詰めた雰囲気と真面目な命令口調の無線が飛び交う。
だけど、帰投する時になれば皆こうしてリラックスする。
皆、操縦に慣れている証拠だ。
「隼6、中佐殿はやっぱり可愛いですね~!」
「ちょ、ちょ、な、何言って…///」
〈〈照れてる…!可愛い…!〉〉
「み、皆忘れてよぉぉぉ!!」
**視点変更 三沢→伊吹**
隼・白鷺各隊帰投後すぐの蒼龍CIC
「捜索ヘリから報告は?」
「内科艇を30確認しました。約950名程が救助待ちと考えていいでしょう」
「流石に多いね」
「えぇ、なんせ8隻の艦隊ですから」
「二航戦じゃ収容しきれんね、海保に救助要請を出そうか」
「はい、そうですね。ここは第九管区の管轄ですね」
「無線手!金沢海上保安部に打電!」
「司令?何故金沢なのですか?七尾の方が近いのに…」
「七尾はCL(大型巡視艇)しか配備されてないからね、せめてPL(大型巡視船)が居る金沢の方がいいと思ってね」
「は、はぁ…」
「まぁ、一応七尾にも打電しておくよ」
「それが宜しいかと」
「電探に感アリ!」
「!?」
「方位078!距離41㎞!10機編隊で我が艦隊に接近中!」
航空攻撃!?一体何処から飛んできたんだ…!?
…さっきの事があったとはいえまだ攻撃が目的と決まったわけじゃないからな…。
「海鷲隊出撃用意」
「了解しました!海鷲隊出撃用意!」
一体何処の国の機体なんだろうか…まーたいつもの領空侵犯か?
って、領空侵犯が常態化してるうちってどうなんだろう…
「海鷲隊、発艦しました。現在敵編隊に向けて進行中です」
「まずは警告からだ、各員に伝えておいてくれ」
「了解しました。所で司令、隼と白鷺は出さないです?」
「せやなぁ…。戦後初の軍艦に対する武力行使と言う任務をこなした後だ、暫く休息が必要だろう精神的にも…ね?」
「そ、そうですね」
「海鷲も、隼・白鷺に並んで手練れの集まりだ。同じ位の戦果は期待出来る」
「戦果…ですか。その表現は少し、如何なものかと…」
「…戦果は戦果だ、これを戦果と呼ばずにどう呼ぶ?」
「そ、そうですな…………」
「………戦果と呼ぶしか無い、それ以外に当てはまる言葉は無いのだから」
「…はい」
「今はそんな事どうでも良い、接近中の航空機の対処だ」
「そうですね!」
「対空戦闘用意」
「対空戦闘用意!」
「対空戦闘よーい!」
「対空戦闘、用意!」
艦長が復唱、そして砲雷長が復唱、そして砲術科の一等兵が復唱。
それぞれの言い方と言うか、個性が出ている。
ポーン ポーン ポーン ポーン ポーン…
艦内に警報音が鳴り響き、大量の足音が聞こえる。
「司令」
「ん?」
長嶋航空参謀が口を開く。
「現在帰投中のAWACSはどうしますか?」
「燃料に余裕はあるのか?」
「十分あります、5時間は飛べますよ」
「うむ、分かった。AWACSに下命、"そのまま海鷲隊の支援に移れ"と」
「はっ!了解しました」
「司令…、私は少し不安な事があるのです…」
艦長が不安な顔をしてボクに問いかける。
何が一体不安なの?
「現在、救助活動をしている海保の巡視船の事です」
「巡視船がどうかしたの?」
「おそらく、海保は金沢・七尾・新潟から巡視船や巡視艇を出動させて救助に当たってるはずです」
「そうね、それがどうかしたの?」
「…敵航空機から攻撃を受けないかと心配なのです」
「あゝ…成程…」
「現在接近中の敵の様にいつ何処から現れるか分かりません。ですから、いつ攻撃されてもおかしくないかと…」
「…電探には何もかかってないが?」
「先ほど、司令は2つの航空隊による囮作戦を決行して成功を収めました。敵も同じような作戦をしているのではと、考えてしまうのです…」
「ふぅむ…確かにそれも一理ある…」
「艦長は考え過ぎなんだよ、別にそこまで気にすることは無いだろ?」
「航空参謀…いえ、このような戦闘中ではありとあらゆる可能性を考えるべきです!」
「オイオイ、考え過ぎてたら決断も間に合わないぞ?」
「…あまりにも考え過ぎは良くないですが、ある程度考える事は必要ではないでしょうか?」
「いやいや、こんな時こそ即決が必要でしょ」
航空参謀と艦長が喧嘩になりそう、止めねばならぬ。
「まぁまぁ、今CICで揉めてても何も変わらないよ」
「「!!そ、そうですね…」」
沈静化完了!
「海鷲隊!敵戦闘機群と格闘戦に突入しました!」
電探員の報告が入る。
「そう、戦況は?」
「流石三式戦!数で劣っていても優勢ですね!」
「勘違いしてはいけないよ」
「え?」
「武器・兵器と言う物は、どんな性能だろうと結局は使う物の使い方が一番重要だ」
「つ、つまり…?」
「海鷲が優勢なのは、それほどまでに操縦者の腕が良いって事だ」
「成程…!」
「覚えておけ、どんな兵器でも全ては使い手次第だって事だ」
「はい!!」
十七分後……
「敵航空機全滅しました!」
「海鷲の損害は?」
「2機落とされましたが、パイロットは脱出したとのことです」
「そう。脱出したなら良かった」
「各機、本艦への帰途についています」
「AWACSは?」
「同じく、帰投中です」
「了解。結局海鷲だけで凌いだね」
「凌ぎましたね、では戦闘体制解除で?」
「あゝ、解除だ」
「では、号令を」
「戦闘体制解除、警戒態勢へ移行する。艦隊、単縦陣から輪形陣へ」
「警戒態勢へ移行、輪形陣へ移行する。取り舵十三度!」 「取り舵十三度!」
「海鷲隊及びAWACSが帰投次第、舞鶴へ帰投する!」
「「「「はっ!」」」」
結局、特に艦隊や海保の巡視船群に敵航空機が襲来することなく終息した。
しかしどうも艦長の発言が引っかかる。
敵艦隊と航空隊の目的は一体何だったのだろうか?
二航戦の殲滅であれば、敵の航空隊は戦闘機に構わずに向かってくるはずだ。
…三式戦と四式戦の実力を見極める為?
仮にそうだったとして、何処の国…いや、組織がやっているのだろうか?
…それにしても「アスカラズ」なんて組織は初耳だ。軍艦も保持する組織だ、それなりに名が知れている方が自然だ。
なのに…あまり表舞台にその名を出さなかった。
……これは何か、裏がありそうだ。
お読みいただき、ありがとうございます!
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(付けると作者が凄い喜ぶよ)
(遅くなって申し訳ありませんでした…)
よろしくお願いいたします!




