第十五話 荒波超え征く二航戦(前編)
前回のあらすじ:舞鶴に到着した二航戦。
そこに待ち受けていたのは伊吹の妹、摩耶であった。
約1年ぶりの再会を喜ぶ姉妹。思い出を語り合う姉妹。それを羨む七海……。
三角関係の様な物が出来上がかけていた。
しかし、そんな事は関係無く下される命令。
二航戦は荒波が立つ日本海へと向かうのだった……。
10月5日 20:11 能登半島沖
荒波を立てる日本海。
そしてこの能登半島沖に来ると、必ず思い出してしまうのだ。
呉と言う瀬戸内海、太平洋側で活動していたからあまり思い出さなかったが
日本海側に来ると必ず思い出す。……何故空軍は……
「「…………」」
ボクと七海は飛行甲板の船首側で敬礼していた。
この事件を知る者はごく少数で、世に出る事は無いだろう。
「先輩」
「……あぁ」
「今の私達を見て、飛燕隊の皆はどう思うのでしょうかね……」
「さぁ……どうだろうね」
夜空を見上げながら、思い出を語る。
楽しい事も、悲しい事も、何もかも今は昔の事だ。
……もう、何もかも戻ってこない。戻って来やしないんだ。
しかし、それを乗り越え進んでいかなければならない。立ち止まってはいけない。
立ち止まってはいけないのだ!
もし、今ここで海軍軍人としての生を終えてしまったら、それこそ飛燕隊の皆に示しが付かないのだ!
「こうして海軍軍人で居る事が、一番の弔いなのかもしれないな」
「そうでね!先輩!」
「さ、夜も遅いし~部屋に戻ろっかぁ」
「はい、先輩」
10月6日 05:12 蒼龍飛行甲板
後30分もすれば夜明けだ。
ボクは夜明けが1番好きだ。この薄暗い時間が1番好きだ。
「ん~!晴れた!良い夜明けが見れそうだ!」
「おはようございます。司令!」
艦橋左舷デッキから見張り員が挨拶してくれた、
嬉しいね~。
「おはよう!見張りご苦労様!」
「いえいえ!夜間の見張りは慣れてますから!司令こそ朝早くから!」
「いやいや、ボクはただ日の出が見たいだけだからね」
「そうですか~!」
晴れてはいるが、波は荒い。
これが日本海の波か、太平洋とはまた違う良さがある。
05:51 日の出
日の出の時刻。綺麗な太陽だ。
「うん、日の出は綺麗だ。今日の太陽も美しいね」
「えぇ、そうですね。司令も、あの太陽に負けない位美しいですよ」
「えっ?いやっ、ぼ、ボク……そんなに……」
まさか部下にこんな事言われるなんて思っても無かった。
思わず、顔を赤らめてしまった。
「ははっ、照れてる司令も可愛いなぁ」
「うっ!うるさい!」
08:34 蒼龍作戦室
「今回我々が派遣されて来た目的は日本海側の哨戒任務である。
これまでのP-1での哨戒には限界がある。それに、1機1機のコストも馬鹿にならない」
「司令、空母艦隊の方がコストが…」
「長期的な目で見れば、海上でも行動できる機動艦隊の方が良いだろう?」
「でも維持費が…」
「まぁまぁ、このままじゃP-1と機動艦隊、どちらが費用対効果が良いかという話になってしまう」
「そ、そうですね」
「そ・れ・で・だ、今回派遣されてきたのは日本海側の哨戒任務!
艦載機による上空及び海上の哨戒を行う。隼隊は海上哨戒。白鷺隊は上空哨戒だ。
各員、各々の任務に専念してくれ!以上だ」
「「「「はっ!」」」」
09:06 蒼龍飛行甲板
「発艦準備急げぇ!後ろが詰まるぞぉ!モタモタしてる奴ぁ日本海叩き落すぞ!!」
天城班長の怒号が響く。
「隼7番機!いけます!」
「馬鹿者!!報告してる暇があったら他の機体の準備をしろ!」
「は、はい!」
天城 優菜 技術少尉
蒼龍の航空機の整備班長を担っている。
見た目は綺麗な女性だが、中身は整備に命を懸けた班長。まるで一昔前の職人の様。
十分後 蒼龍左舷デッキ
「航空参謀、隼・白鷺共に発艦準備完了しました」
「うむ、準備ご苦労」
長嶋航空参謀はそう言うと、手にメガホンを持ち……
「発艦用意!」
メガホンを使い、甲板上に機体に呼び掛ける。。
すると同時に飛行甲板上の機体が前から順に射出機へ進んでいく。
ガッチャン。
「射出機結合ヨシ!」
「耐熱板上げ!」
ウィィィィン。ガコン。
「隼7番機、発艦準備ヨシ!」
「白鷺5番機!発艦準備ヨシ!」
この蒼龍には射出機が2基搭載されている。
同時に2機発艦する事が出来る。
「発艦準備が完了した機から発艦始め!!」
航空参謀の号令と同時に射出機が稼働し、発艦を始める。
いつ見ても発艦は迫力がある。
「次の機へ移れぇ!」
天城の一声で甲板の整備班員が次の機の発艦準備に取り掛かる。
十二分後 蒼龍艦橋
「司令、隼・白鷺各隊発艦完了しました」
「うむ」
「さて、何も無ければよいがな」
「そうですね、司令」
「航空参謀、猫は好き?」
「い、いきなりですな。でも、好きですよ。私の実家で2匹飼っていますよ」
「へぇ~、名前は?」
「アキとトラですね」
「いい名前だねぇ」
「ほら、この2匹です」
航空参謀はスマホの写真をボクに見せてくれた。
茶トラと灰色の猫が映っていた。
「茶色のがトラで、灰色がアキです」
「へぇ~、可愛いなぁ」
「そうでしょう?可愛いんですよ~この2匹」
「へぇ~」
一時間八分後 蒼龍CIC
「隼三番機より報告!所属不明の艦隊を発見したとの報告が!」
「位置」
「座標、北緯37度58分56秒、東経136度05分19秒の地点です」
「国籍」
「国籍不明、旗を掲げていなかったらしいです」
「警告」
「既に、しかし応じる気配がありません」
「上に判断を仰ぐ」
「了解しました。無線手‼舞鶴と繋いでくれ!」
「はっ、直ちに」
無線手(一等兵)は無線の周波数を合わせる。
「完了しました、どうぞ」
「発、第二航空戦隊司令。宛、舞鶴基地
北緯37度58分56秒、東経136度05分19秒ノ地点ニテ国籍不明の艦隊を発見セリ
当該艦隊、警告ニ従ワズ。今後ノ指示ヲ求ム」
ボクは無線手にそう言った。
これをモールスに変換して舞鶴に伝えてくれる。
同時刻 舞鶴基地
「…との事です。どうしましょうか、司令」
「軍令部に持っていこう、もしここで攻撃指示を出してしまったら何を言われるか…」
「かといって傍観も出来ませんしね…」
二分後 軍令部会議室
「舞鶴の二航戦が国籍不明の艦隊を発見した様です。如何致しましょう?」
「国籍不明?国旗は掲げていないのか?」
「どうやら掲げてい無いみたいですね。それに何処の国の艦艇にも無い番号らしいです」
「ふむ……まさかとは思うが、テロリストか?」
「いやいや、テロリストと言えども軍艦は持てないと思いますが?」
「そうだと良いな」
「もし機体が撃墜されたら?」
「…………」
「その時は、その時だ。とにかく、攻撃は待て、偵察を続けさせろ」
蒼龍CIC
「攻撃はするな、動向を監視せよとのことです」
「監視……ねぇ」
ボクはあの謎の艦隊が何かやらかしそうな気がしてやまない。
……犠牲は少ない方が良い。
お読みいただき、ありがとうございます!
祝!三万文字達成!
ほんの少しでも「良いね」と思ったらブックマーク、評価の★の方を是非!
(付けると作者が凄い喜ぶよ)
よろしくお願いいたします!




