第十一話 2隻の駆逐艦
前回のあらすじ:三沢は伊吹が昔の頃から何故変わってしまったと不思議思う中、そんな事は他所に接近を続ける漁船群や海警局艦艇……。
それらが魚釣島近海で我が物顔で航行している。
伊吹はそれらに対してどのような対処を行うのか……!
「それで、艦隊に突っ込んでった駆逐艦の反応は?」
「え?昨日お伝えしましたが?」
「えっ?」
「はい、司令が忘れられているだけかと」
「そう……」
「忘れられている様ですので、もう一度お伝えしますね」
「うむ」
「前衛の駆逐艦、浦風と綾波が突入しましたが効果は見られませんでした」
「効果なし……か」
「はい、相変わらず海警の巡視船は退去を促してましたね」
「そう……」
「司令?」
「どうしたら出て言ってくれるのかなぁ」
「私には分かりかねます」
「そう、報告ご苦労様」
「はっ、では失礼します」
「ん」
バタン。
反応無しか、どうしようか。
駆逐艦2隻を突入させても意味無し。
巡視船や艦艇はまだしも漁船でさえも逃げないか。
ふむ、それほど我が海軍は舐められているのか。
よし、少し脅してやるか。
蒼龍CIC
「浦風と綾波を突入させろ」
「またですか?」
「あぁ、だが今回は少し違う」
「は、はぁ」
「漁船に対し威嚇射撃を行え」
「い、威嚇射撃ですか……了解しました」
威嚇射撃を行う。
哨戒機の報告によれば、海警と人民軍艦艇は漁船を守る様子はない。
どうやら領土を守る事に必死で漁船を守る暇が無い様だ。
魚釣島近海
綾波CIC
「艦長、蒼龍から漁船に対し威嚇射撃を行えとの事です」
「そうか、分かった、威嚇射撃だな?」
艦長が聞き返す。
「うむ、分かった。戦闘用意!」
「戦闘用意!右砲戦、279度3マイルの目標。船体に当てるなよ!海面に当てるんだ!」
着々と主砲の射撃用意が進んでいく。
「撃ち方始め!」
「撃ち方始め」
トリガーが引かれ、射撃が始まる。
CICは艦の奥深かくにあるので射撃音は聞こえない。
水上……
バン!バン!バン!バン!
凄まじい射撃音が鳴り響く。
主砲弾は中国漁船群の前方5~10mの間に次々着弾する。
逃げ惑う中国漁船群。普通なら海警や人民軍艦艇が防衛に来る。流石に来てもらわねば。
そして綾波の射撃に呼応して浦風を射撃を開始した。
浦風の主砲弾は船団後方10m~15mの間に着弾し続ける。
さぁ、中国艦艇は来るのだろうか?
蒼龍CIC
「綾波、浦風共に威嚇射撃を開始しました」
「漁船群は?」
「目標群α、全ての船が北に逃走を開始、こちらに迫ってきます」
「了解、綾波と浦風には、こちらに漁船群を向かわせるようにと」
「はっ、了解しました」
さぁ、ここに『機動艦隊』が居る事を知らしめてやる。
日本海軍を舐めてもらっては困る。
「電探に感アリ!漁船群です!」
「司令!来ましたよ!」
「距離、方位、速力」
「距離6マイル、方位197、速力12knot」
「蒼龍を中心に輪形陣」
「はっ、了解しました」
艦隊は綾波と浦風が抜けてガタガタになった陣を組み直し始める。
第二航空戦隊に所属する艦艇は7隻。今そのうちの2隻が抜けて5隻。
その残りの5隻が輪形陣を組み始める。
我々の目的は『攻撃』ではない『威嚇』だ。
ここに日本の機動艦隊が居る、お前らをいつでも監視していると中国に教えてやるんだ。
そう言えば海警局とかの艦艇は来るのかな?
「方位199!新たな目標群!」
「船籍は?」
「……人民軍艦艇ですね」
「海警では無いのか」
「はい、人民軍ですね」
「ふむ、このままこちらに誘導せよ」
「攻撃してきませんか?」
「中国側も攻撃してしまうと戦争になる事は分かっているはずだ、そこら辺は流石の中国でも理解しているはずだ」
「そ、そうだと良いんですが……」
理解してると良いが……いや、そうで無ければならない。
そうで無ければ戦争になってしまう。なんとしてでも回避しなければならない。
「距離4マイル!」
「漁船は集団行動が得意なのか?」
「ど、どうなんでしょう?」
「もしかしたら工作船の群れかもしれないな」
工作船があんな集団で侵入してくるか?
普通なら目立たずに侵入してくるはず……
「え?本当に漁船なの?」
「綾波と浦風に報告させましょう。彼らなら目視で船を確認出来ますから」
「そうね、そうしましょう」
綾波CIC
「艦長、『漁船ハ工作船デアル可能性アリ、確認セヨ』との事です」
「了解、船を漁船群に近づけろ」
「取り舵12度!漁船に近づけろ!」
「取り舵12度!」
「見張り員に確認急がせろ!」
綾波左舷デッキ
左舷のデッキから漁船か工作船かを判断する。
見張り員が目を皿にして漁船を1隻1隻確認する。
「目標群αは全て漁船!目標群αは全て漁船!」
蒼龍CIC
「工作船ではなかった様ですね」
「そう……」
どうにも腑に落ちない。
仮に全て漁船だとしたらあんな集団行動が出来るとは到底思えない。
「……」
「司令?」
「あ、いや、何でもない」
ボクは胸の内にある不安をもみ消した。
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