サラレティア編〈3〉
次の日の朝 リューイが剣の訓練に出掛け部屋に一人で居たサラレティアは小型化通信機を作るため頭を悩ませていた。何時でもリューイと連絡が取れるようにと思い前世で友達に教えてもらった技術を生かして何とか作れないものかと試行錯誤しているがなかなか上手くいかない。この世界に電波が飛んでいる訳ではないので最終的に魔道具として使えるようになることを目指しているが其処までの道程が遠すぎた。一人でうんうんと考えていると廊下の方が騒がしいことに気付いた。
何事かと思い扉を少し開けて覗いてみるとサラレティアを除く公爵令嬢達が王子達を追い回していた。他の家でも同じ目にあっていたのかもしれないと思うと何だか不憫に思える。王子様には護衛も付いていが別に危害を加える訳でもないので静観している様だ。
因みに王子達の歳は王太子が十四歳、第二王子が十二歳、サラレティアの長姉が十五歳、次姉が十三歳、三姉が十一歳、四姉が十歳。王太子には長姉と次姉が第二王子には三姉と四姉が纏わりついている。サラレティアはそれを見ながら静かに扉を閉め ベッドに倒れ込むように寝転がりため息をついた。
コンコンコンと扉を叩く音がするが何の反応もない。そっと扉を開けて部屋に入るとサラレティアが両腕で目元を隠してベッドに寝ているのが見受けられた。
「お嬢、眠ってるの?」
剣の訓練が終わって部屋に戻ってきたリューイが声を掛けるが返事がない。このままだと風邪をひくと思い布団に入れる為に抱えようと触れたらうっすらと目を開けぼんやりとリューイを見た。
「あれリューイ? どうしたの?」
「お嬢が眠ってるから布団に入れようと思って」
「私眠ってた? もう訓練は終わったの?」
「うん、終わったよ。僕の居ない間に何かあった?」
サラレティアは目を大きく見開きリューイを見る。そして息を一つ吐いて苦笑いした。
「リューイは何でもお見通しね。大したことじゃないけれど姉達が殿下達を追い掛けていたのを見ていたら他人にはあんなにくっつき回っているのにって思って何だか・・・」
「お嬢」
「もう家族に優しくしてもらう事なんて諦めたはずなのに・・・」
「お嬢。僕が居るでしょう。僕とお嬢は家族になったんだってお嬢が言ってくれたんだよ。家族に甘えたいときは僕に甘えたらいいんだよ。うんと甘やかしてあげるから。おいで」
ベッドの上に座ったリューイはサラレティアを膝の上に抱えて頭を優しく撫でている。サラレティアは恥ずかしそうにしながらも気持ち良さそうに そして嬉しそうにしながら撫でられ続けた。
暫くそうしているとクゥーっと小さな音が聞こえてきた。どうやらサラレティアのお腹が鳴ったようだ。クスッと笑ったリューイがお昼ご飯を貰ってくると部屋を出ていった。リューイに甘えていたサラレティアは悲しかった気持ちが落ち着き優しくしてもらったことに感謝していた。少し前までは一人で耐えているしかなかったが今ではリューイと言う大きな存在に癒してもらっているのが当たり前になりつつあった。
お昼ご飯を持ったリューイが戻ってきて準備をしてくれる。本来なら公爵家の令嬢と護衛が一緒の席に着いてご飯を食べる事はしないがリューイがこの家に来た日からサラレティアが望んだのて二人で食べる様になった。その事に家族が気付いているかどうかは知らないが料理人や使用人達は気付いていて何時も二人分の用意をしておいてくれる。みんな表立って二人に接することはないがちゃんと気に掛けて優しくしてくれていた。
「お嬢。今日の午後はどうする?」
「何時も通り忍者の特訓するよ」
「殿下達が居る間はやめるんじゃなかったっけ」
「あっ。忘れてた」
笑って答えるサラレティアを見て安心しリューイも笑顔で会話を続ける。自分のやりたいことだけを言ってくるサラレティアに苦笑しながら今日の勉強をちゃんと終わらすようにと釘を刺しておいた。
王子達の滞在も半分を過ぎた日の午後サラレティアの部屋の扉が粋なり開かれたかと思うと誰かが侵入してきて扉を閉めた。リューイは咄嗟にサラレティアを背に庇った。
「誰だ!?」
「す、すまない。少しの間匿ってもらいたい」
見るとそれは第二王子だった。何事かと思えば追いかけ回されているので逃げてきたらしい。その気持ちも解るのでサラレティアは此方にどうぞと王子をソファへと誘った。
「お水しかないですがよければどうぞ」
直ぐに出せるものが水しかなく 王子も逃げ回っていたので喉が乾いていたのか水を飲み干した。
「ありがとう。一息つけたよ」
「いいえ。殿下も大変ですね」
王子は暫く他愛ない話をし お礼を告げてサラレティアの部屋を出ていった。他の娘もこれ位大人しく接してもらいたいものだと考えながら。
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