王都にて(7)
「どうしたの」
「うん、魔族が居てるね。それもかなり高位の」
「そんなの分かるの」
「精霊達が噂してたから見に来たんだけどね。ここまでとは思ってなかったよ」
ティアと悠翔が話している横から声が割り込んできた。
「それは誉め言葉だと思っていいのかな」
「お前は!」
声のする方へ顔を向けると悠翔は叫んだ。仲良しという感じはしないがどうやら知り合いのようだ。
魔族は此処に転生した王子を見に来たらしい。王子と知り合いかと思えば先祖同士が会ったことがある程度だそうだ。それともう一つ用が有りある人物を探しているらしい。
何でも人間から王子を陥れるように契約をしていた魔族が配下に弱味を探らせていた。すると弱点自体は割りと直ぐに分かったが肝心の弱点となる人物が見付からず、痺れを切らし人を使って王子を襲わせることに。しかしそれを失敗するも運良く探していた弱点を発見できた。直接自分で襲いに行くも返り討ちに遭い 呪いをかけると倒されてしまったらしい。その魔族は強かったらしく倒した相手を是非見てみたいのだそうだ。
暁と疾風は途中から覚えのある話をしているのに気が付いた。悠翔も呪いという言葉が引っ掛かった。
見付けて敵討ちでもしたいのかと思えばその気はないらしい。魔族だからといって悪人な訳ではないし、仕掛けたのは魔族なのだから言わば自業自得だと。ただ弱点となる人物の特徴が本当か見てみたいと思っただけだそうだ。わざわざご苦労なことだ。
ティアと暁は先に孤児院に入ることに。悠翔は残って魔族と話している。誰にも聞かれていないと話しているが今日はポケットに疾風を入れていたのを忘れていた。
「王子の弱点とは何だ」
「何だ。気になるのか。まあ、弱点というか伴侶だな。紫の瞳の娘だ」
「(やっぱり)見付けてどうする。本当に見に来ただけなのか」
「紫の瞳だぞ。今まで人間には王の生まれ代わりにしか存在しなかった。なのにいきなり現れた。それは俺達にとって脅威となるのかを見極めないとな」
悠翔はハーっと息を吐いた。
「お前達から何もしなければ何の問題も起こることはない」
「知っているのか」
「ああ。知っているし大切にしている。あの子に何かしたら許さない」
「へぇ。お前がそんな風に言うなんてな」
凍えるような冷たさを醸し出しながら悠翔が魔族を睨み付ける。それに対し魔族は面白そうにニヤリと笑いながら悠翔を見ていた。一触即発しそうな状況の中少し離れたところからご飯の用意ができたと声が掛かった。悠翔は魔族を置いて孤児院に向かい歩き出す。
孤児院には先日突然の雨に困っていた時 親切にしてもらったうえ泊めてもらったお礼に来たのだ。昨日の夜会の料理で貰い物のうえ残り物でごめんねと謝りながら食べるように促す。みんな普段食べたことのない料理もあり喜んで食べてくれている。泊めてもらった時自分達の食事を減らしてまでティア達に分けてくれた事に対して少しでも恩返しできた気がして嬉しかった。
みんなが喜んで食べている様子を見ていると疾風がやって来て先程の二人の会話の内容を掻い摘んで教えてくれる。探しているのは恐らく自分に間違いないと思ったティアはどうするか考える。既に悠翔が釘を刺してくれたようだがこのまま放っておいていいのか。後々面倒がないように言ってしまった方がいいのか。暫く悩んで決断した。
孤児院から城に戻るとき先程魔族が居た木々の方へ歩いていく。悠翔に呼び掛けられるもニコッと笑って進んでいく。しかし魔族の姿は見当たらず取り敢えず呼び掛けてみることに。すると意外にも姿を現してくれた。
「何か用か」
「おじさん、王子の弱点探してるんだよね。それってわたしの事かもしれないよ」
「ティア!」
悠翔が声を低くし咎める様に呼ぶが相手にすることもなく ティアはゆっくりと目を閉じ再び目を開ける。瞳の色を本来の紫に戻して。魔族は驚いて目を見開くもいきなり笑い始めた。
「ククク。わざわざ自分から教えてくれるとはどういう意図だ」
「意図なんてないよ。ただ悠翔が牽制してくれたみたいだからわたしからも警告しておこうと思っただけ」
「ほお」
「貴方と悠翔がどんな関係か知らないけど悠翔に何かしたらわたしは貴方に報復するから」
ティアはニッコリと笑いながら魔族に告げた。魔族はニィっと口を歪めながら悠翔に目を遣る。
「悠翔とはそいつの事か?別に俺はそいつに何かしたい訳じゃない。これからのお前次第だ」
ティアは言いたい事は言ったのでじゃあねと帰っていった。魔族は笑いながらその後ろ姿を見ていた。どうしてやろうかと考えながら。
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