王都にて(4)
「それを聞いてどうする」
セドリックの質問に暁が聞き返した。
「どうとは?」
「もし魔族と対峙したと言えば捕まえるのか」
「ああ。その様なことは決してしません。ただ人探しをしているのです」
セドリックは穏やかに返事する。
ティアと暁はどうしたものかと考えたが危害を加えられることはなさそうだと判断し素直に答えた。
「あなたが聞いている件のことかどうか判りませんが魔族と対峙したことはあります」
「お名前を伺っても」
「ティアです」
セドリックは名前を聞いて落胆した。やっと凛を見付けられたと思ったのに欲しい答えではなかったから。だがセドリックは失念していた。凛とは前世の名前であって今世の名前ではない。レオンがずっとそう呼んでいたから凛だと思い込んでしまっているのだ。レオンがため息をつきセドリックの前へと進む。
「ティア。君は凛と言う名に覚えはあるかい」
流石にこれだけ人が居るなかで前世について言うべきではないと判断したレオンは覚えがあるかという質問に留めた。
だがそれだけでもティアにとっては驚きでしかない。何故目の前の人物が自分の前世の名前を知っているのか。何故それを聞いてくるのか。そしてそれは一体何を意味しているのか。考えるだけの判断材料があまりにもなさすぎて答えることができない。しかしそれは聞いている側からすれば肯定しているのと同じであった。
ほぼ間違いないであろうと確信したレオンは嬉しいのを隠し平常心で話し掛け続ける。
「よければ少し話す時間を貰えないだろうか」
ティアは断ろうかとも考えたが前世の名前を知っていたことが引っ掛かり話をすることに。ただ人を待たしているので今日は無理だと告げると明日はどうかと誘われた。明日の昼以降都合のついたとき何時でも来てくれと言われ承諾する。
ティアは城を発つ前に兵士達に詫び怪我を治す。
「許してもらえるとは思わないけど酷いことしてごめんなさい」
そう言って疾風に乗り飛び去った。
レオンは今日のことを他言しないように兵士達に厳命する。そしてティアが何時来てもいいようにとやらなくてはならないことを片付けるためその場を去る。その後をいつもの二人が付いて行く。執務室に着くなりセドリックが口を開いた。
「すみません、レオン。ずっとリンと思っていたので現世の名前ではないことを失念していました」
「いいや、それくらい焦っていたんだろう。それよりやっとだ。やっと見つけた」
「はい。きっと彼女で間違いないでしょう」
「ああ。明日の昼からは予定を空けておいてくれ」
「かしこまりました」
エドワードを放ったらかし二人で話を進めていく。エドワードも途中から凛のことに気付いたが口を挟まず聞くだけに。三人は早く明日になればいいと喜んでいた。
瑠璃達の下に戻ったティア達は疾風を小さくして急いでその場を去る。悠翔もティア達に気付かれずに戻ってきていた。一先ず人目につかない場所へと逃げ込む。そこでやっとひと息つけた。その時漸くティアと暁の瞳の色が本来の色になっていることに気付き慌てて色を変える。今後のことも考えて取り敢えず宿を取ることに。
部屋に入り暁が捕らえられた理由を説明するとみんな納得したようで仕方ないねと言われた。
ティアは明日城に呼び出されたことを告げみんなに付いてきて欲しいとお願いする。みんなはもちろんと返事した。
「付いて行くのはいいがさっき彼奴らが言っていたリンとか言うのと何か関係があるのか」
「ハッキリとは分からないけど関係あるのかも」
「そのリンって言うのは何だ」
「・・・わたしの前世での名前なの」
暁の疑問にティアが答える。だがまさか前世なんて言葉が出てくると思っていなかったので前世から一緒にいる精霊達以外は驚いた。
ティアは生まれて直ぐに前世の記憶を取り戻したこと、そして前世の頃から見守っていてくれた精霊達のことを話した。他の人と違うとしたらその事と瞳の色くらいだと。
みんな何も聞いてくることはなく明日どうするかと言う話しになった。捕らえたりしないとは言われたがどうなるか分からないので何時でも逃げれるようにしておく。明日朝のうちに要るものを買い足すことにした。
次の日の昼過ぎレオンは未だかと落ち着きをなくし部屋でウロウロする。セドリックとエドワードも今か今かと待っていた。
そんな当の本人であるティアはと言うと城門前で悩んでいた。本当に会っても大丈夫なのかと。しかし何時まで悩んでいても仕方がないので覚悟を決めて進み出た。門兵に王子への取り次ぎをお願いする。本来なら取り次いではもらえないが事前に告げられていたので本人確認のためその場で待たされることに。暫くするとセドリックが慌てた様子でやって来て中へと案内してくれる。廊下を進み応接室へと案内されると中に居たレオンに嬉しそうに招き入れられた。
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