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悪意に負けずに頑張ります(5)

 

  みんなが寝静まってもティアはまだ眠らずにいた。このまま寝てしまえばまた疾風や暁を起こしてしまうからだ。こんなに悪夢を見続けるのは何か不吉なことの前触れなのだろうかと不安になる。気分を変えたくて一人湖畔を歩き出す。灯りは持っていないが月の明かりで十分歩けた。

  何か楽しいことを考えないとまた嫌なことを考えてしまう。自分の粗探しをするのなら別にいい。でも大好きな人達のことを悪く言うのは嫌だ。どうしてこんな子になっちゃったんだろう。

  泣きそうになっていると誰かが話し掛けてきた。


「辛いことでもあった」


  顔をあげると初めて見る精霊が居た。此処は精霊達の故郷だから精霊が居ることはおかしくないが 流石にこんな夜遅くにいきなり現れるのには驚いた。その精霊は中性的な顔をしていた。雷牙と同じく身長が高いので上位精霊なのだろうか。黙ったまま立っていたらもう一度同じことを聞かれた。

  初対面でいきなり相談してもいいものだろうかと思ったが、よければ聞くよと言われたので もう会うこともないだろうし知らない人の方が話しやすいかもしれないと思い聞いてもらうことにした。

  十日位前から悪夢を見るようになり 何故か人の嫌な部分を探してしまうようになった。自分ではそんなことしようとは思っていないがいきなり頭に浮かんできてしまう。こんなことしてしまう自分が嫌で堪らない。どうすれば止められるのか分からない。

  それを聞いた精霊はそれは辛いねとティアの頭を撫でてくれた。


「さあ、もうみんなの所に戻って寝なさい。今日は嫌な夢を見ないから。大丈夫だよ」


  そう言うと精霊の姿は消えていた。

  もし誰かが目を覚ましたとき 自分が居ないと心配するだろうと思いティアはみんなの所に戻った。

  さっきまでそうしていたように疾風の隣で横になりぼんやり空を眺める。直ぐに睡魔に襲われ眠りについた。




  次の日の朝早くみんなは目を覚ました。直ぐに準備をし出発する。疾風はティアに待っててねと言って飛び立った。

  残った三人はみんなの無事を祈る。ティアの顔を覗き込みながら今日は魘されてないねと呟き安心した。

  ティアはそのままお昼近く迄昏々と眠りにつづけた。久し振りによく眠ったせいか頭がすっきりしていた。嬉しくて疾風に言おうと思い辺りを見回したが瑠璃、ソル、ステラしか居ない。みんなはどうしたのか聞くと折角惑いの森に来たのだからと出掛けたそうだ。

  三人はわたしが起きないから出掛けられなかったんだねと謝ろうとするティアより先にわたし達も出掛けようと誘ってきた。ティアは元気にうんと返事し行きたい所があるのと 昨日精霊と出会った場所に向かった。

  昨日出会った辺りに着いたが其処には誰も居ない。近くに小屋があるわけでもなく特に何もない。偶々出会っただけなのでまた出会える可能性も低い。それでも今日よく眠れたのはあの精霊のお蔭なのでお礼を言いたかった。


「おーい。昨日のせいれいさんいませんかぁ?」


  呼びかけて暫く待っても返事はない。何度呼びかけも同じだった。諦めようと立ち去ろうとした時 昨日の精霊は現れた。ティアは嬉しくて思いきり抱きついた。


「出てきてくれてありがとう。昨日のおれいがどうしても言いたくて。本当にたすかりました。ありがとうございました」


「ふふ、元気な子だね。お役に立てて良かったよ」


  暫く二人は会話を楽しんでいた。

  ふと精霊に此処に何をしに来たのか聞かれたので、みんなの里帰りに付いて来たと言うと羨ましいと言われた。精霊はずっと此処に居るので里帰りという響きがよかったらしい。自分も何処かに行きたいと言うので、何時ものように軽い気持ちで行ってみればいいのにと言った。

  精霊は誰も誘ってくれないし 今迄行ってもいいと言ってくれなかったとちょっと寂しそうな顔で言うので、じゃあわたしでよければ一緒に行こうと誘ってみた。


(精霊って自分で勝手に出て行っちゃいけないのかな?好き勝手にやってるもんだと思ってたよ)


  精霊はもし叶うなら連れていっておくれと小声で言うので、もちろんだよと大きな声で返事した。




  その頃暁達は呪いをかけた相手と対峙していた。相手が前に襲ってきた魔族だと分かりみんなは更に怒りを強くした。あの時逃がすんじゃなかったと。この魔族が呪いを解いてくれるわけがないと いきなり攻撃を仕掛けた。魔族は魔獣を従えていたので先に倒さないといけない。熊の様な魔獣、鹿の様な魔獣、牛の様な魔獣と体の大きな魔獣が十体程。体の小さな精霊達は暁、疾風、雷牙の援護にまわった。

  三人に対して相手は十体と数は多いが時間をかけて確実に倒していった。一体、二体と減っていき漸く十体倒し終わった頃には三人共疲れきっていた。琥珀が癒しの力を使ったが三人と人数も多く時間もあまりなかったので大して回復できず疲れを残したまま戦わなければならなかった。





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