悪意に負けずに頑張ります(3)
疾風は今直ぐにでも行きたかったが逃げられてまったく手掛かりが無くなり苦しみ続けるよりはと我慢した。
話も終わり小屋に戻ると何時も元気にしているティアが精霊達に囲まれ俯き小さくなっている。その腕には小さな瑠璃を抱いている。何時もとあまりに違うその様子に外から戻ってきた三人は胸を痛めた。
誰が、何故、こんな小さな子に呪いをかけたのか。
遣る瀬ない思いが暁と疾風をおそう。
必ず助けてみせるからね、ティア。疾風はそう心に誓った。
夜も更け瑠璃や精霊達は眠りについた。ティアは相変わらず隅で小さくなったままだ。暁はどうしたものかと思ったが何時も通りに接することにした。
何時ものように眠ろうとティアを抱っこしに近寄ればビクッと怯えられてしまった。
「ごめんなさい。わたしひどい子なの!暁にやさしくしてもらうしかくなんてないの!」
そう叫んで取り乱し始めた。
それでも暁は何時もと変わらずティアを抱っこし、背中をポンポンとしながら 誰もそんなこと思ってないから気にしなくていいと言い慰めた。
疾風の傍に行き三人で集まる。疾風も何時もと同じようにティアに話し掛けた。そんな二人に優しくされると嬉しさと申し訳なさで涙が出てきた。
「ごめんね。どんなことがあっても二人のこと大すきだから。わすれないでね」
自分に何が起こっているのか分からないけど これだけは言っておかないと嫌われてしまうかもしれないという思いに負けてしまいそうだったのだ。
「そんなこと心配しなくても知ってるよ」
『僕も大好きだよ』
二人の返事はティアを安心させてくれた。
安心したのか泣き疲れたのかティアはやっと眠ったようだ。このまま何事もなく眠れるようにと願いながら暁と疾風も眠りについた。
だが二人の願いもむなしくティアは夢に魘された。
一緒に居るみんなに置いてきぼりにされ追いかけようとしてもどんどん距離が開いていき完全に取り残されてしまう。泣き崩れていれば何故か底なし沼に居て徐々に体が沈んでいく。もがいてもそれは止まらず沈んでいく恐怖に泣き叫んだ。周りには誰も居ないので助けてもらえない。助かる術もなくただ絶望だけが待っていた。怖くて怖くてただ必死にもがき続ける。無理だと分かっていても助かりたい一心で。
『ティア。ティア!ティア、起きて!』
そこで目が覚めたティアは疾風に抱きついた。息を荒くし、必死にしがみつく。そんなティアを疾風は大丈夫だよと何度も言いながら抱き締める。それに気付いた暁が水を持ってきてティアに渡した。水を飲み一息ついたティア煩くしてごめんねと謝った。
暁は気にせず寝るように言いかけてやめた。嫌な夢を見るのに寝るように言うのはどうなんだろう。このまま起こしておいた方がいいのだろうか。
暁はどちらがいいのか答えが出せなかった。
代わりに疾風が大丈夫だからこっちにおいでとティアを甘やかした。
このままという訳にいかず気分を変えようと三人で外に出てみたが、先程の時とは違い既に落ち着いているようで星が綺麗だねと笑っていた。大丈夫そうなのでどんな夢だったのかと聞けば みんなに置いていかれて何故か底なし沼に沈んでいった。沼に沈むのは怖かったが独りぼっちになった方がもっと怖くて悲しかったのだと。
『例えどんなことがあっても僕がティアから離れることはないよ』
疾風がティアを抱き締め、暁が頭をポンポンとする。安心しろと言うかのように。
そんな二人と他愛のない話をしているうちにティアはまた眠りについた。夜が明けるまでまだ時間がある。今度は嫌な夢を見ずに眠れればいいのだけれど。暁がティアを抱き上げ小屋に戻った。
暁と疾風は横になったが眠ることができずにいた。ただボーっと一点を見つめて考える。カラスを捕まえたとしてどうすればいいのか。呪いをかけた相手が此処から近い所に居てるのか。移動に何れだけの日にちを要するのか。考え出したら切りがないが考えずにはいられない。
その後もティアは魘されたが疾風が優しく声をかけ続けると落ち着きを取り戻すということを繰り返していた。
朝早くまだ空も白み始めない時間に暁と疾風はティア以外の全員を起こした。雷牙からみんなに今起こっていることを説明させこれからのことについて話し合った。
ティアが気にするといけないので呪いをかけられていることは内緒にしておき 此処を離れるいい言い訳を考えなければならないが 簡単には思いつかない。仕方ないので後回しにしてカラスを先に捕まえることにした。丁度空が白み始めた頃で朝も早く相手がまだ寝ているであろう隙をついて行動に出た。予想通り眠っていたカラスは簡単に捕まえることができたが 入れておく籠がないので雷牙の結界で閉じ込めておくことにした。
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