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truth〜始〜  作者: 樋山 蓮


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XⅡ.城を落とす方法

夏休みに入ってから、僕と凛さんはアルバイトの時もほとんど一緒だ。

帰りの電車も凛さんはしっかり手を握ってくる。


アルバイトを終えて、帰りに家電量販店に新しく発売された携帯を見に行きたいと凛さんが言い出したので、二人でアルバイト先の近所にある家電量販店に立ち寄った。

携帯電話コーナーの後ろには大小さまざまなテレビが並べてあり、いろんな番組がながれていたが、テレビのスクリーンで先ほどまでバラエテイ番組が放映されていたチャンネルがいきなり女子アナが険しい顔をし、ニュースを読み上げている。


「今入ったニュースです。警視庁特捜部は本日、野党・民国党幹事長、菅原一之議員の自宅及び事務所に家宅捜索を行いました。菅原幹事長は、秋本ユニバーサルエージェントからの多額の献金を受けていた事実が発覚し、家宅捜索が強行されました。」


他のチャンネルの画面上には〈ニュース速報〉になってその内容を伝えていた。


「これって…」

「多分、父さんが根回ししてくれたんだと思う」

「家宅捜索が入るなんて」

「収賄疑惑だから仕方ないですね…」

「これで安心できるかな…」

「もし仮に怜さんのお父様が取締役を辞任しても…凛さんへの想いが止まらなかったらまた直接会いに来るかもしれないですね。でも、ストーカー規制法で罰せられますし、警告も出してるので…」

「そっか…でも分からないよね…」

「凛さん…僕が絶対に守りますから。どんな手段を使っても…あなたを守り抜きます。」

そう言って、繋いでいた手を僕は強く握った。



家に戻ると、母が玄関まで駆けつけ、「お父さん、やったわね!!」と喜んでいた。


本当にこれでこの問題が終焉を迎えるのか…僕には見当もつかなかった。



翌日の新聞は一面に家宅捜索の内容や経緯…そして、ユカワホールディングスと秋本ユニバーサルエージェントの裏金問題を追及してる新聞もあった。


凛さんと怜さんの関係はオフレコにしているらしく特には書いてなかったが、凛さんのお父さんの事務所と秋本ユニバーサルエージェントとの関係が大っぴらになると、大変なことになると予想される。



「あ、優子!この前収録したっていうのはいつ放送なの?」

「あ、そうそう!今日の夜なの!でも今日は夜に信一郎に呼ばれててね」

「あ、そんなこと言ってたわね。」


大御所俳優・嵐山健の離婚は今日の夜のテレビで初告白されるらしい。

父が優子さんを呼んでいるということは、きっと…


「あら、もうこんな時間!これから取材と撮影が入ってるから行ってきます!」


元カリスマモデル・夕蘭の復帰は今日の放送以降、様々な雑誌が発売されることになっているらしい。


「ママ、今日の番組楽しみにしてるね。」

「凛、ママ頑張るから。あの人からもらった慰謝料でこれからの人生設計していかなきゃと思ってる。」

「うん…」

「だから、凛も負けないで。」


最近ずっと元気がなかった凛さんがやっと前の凛さんに戻りつつあり、優子さんも少し安心してるようだった。


「宗太郎くん。」

「はい。」

「凛のこと、頼むわね。あなたしか頼れる人いないから。」

「わかっています。」


優子さんはそう言って、迎えに来たマネージャーの運転する車に乗っていった。



優子さん…いや、夕蘭さんが18年ぶりに出るテレビは芸能人のマル秘告白という特番だった。


「あの元モデルが大御所俳優と離婚!」という予告から始まり、凛さんと母さんと3人でリビングのテレビで見ていた。


シルエットに照らし出されたカーテンの向こうにいるスタイルのいいモデル、夕蘭。

「1人目のゲストは18年ぶりのテレビ出演!カリスマモデルと称されていた夕蘭さんです!」という司会者の声と同時にカーテンが開き、いつもの優子さんとは違うモデル・夕蘭がいた。


夕蘭さんについての説明VTRが流され、凛さんから伺っていた話が赤裸々に告白されていた。

ー義父に仕組まれた強引な結婚

ー娘の彼氏の親からの融資

ー娘が彼氏と別れたことに対する態度


VTRの最後に、夕蘭は

「わたし一人が犠牲になるのなら、良かったんですけど…やはり、自分が腹を痛めて産んだ娘に同じ想いはして欲しくなくて、この18年間の偽りの結婚に終止符を打つために、今回離婚を決心しました。」…と涙ながらに語った。

凛さんは母の言葉に涙が止まらなかった。

「凛さん…」

「ママ…ずっと我慢してきたんだと思うと、わたしのために我慢してきてくれたのかなあって…」

「凛さんのことが大切だったんだよ…」

僕の胸で泣く凛さんは、明らかに自分のことを責めていた。


「凛ちゃん、宗太郎…今日実はね…」

と、母が口を開いた。


「お父さんが優子のこと誠人くんに会わせるつもりで呼んだのよ。」

「山邑さんと?」

「想い合ってた2人が結ばれないなんて…浮かばれないじゃない。嵐山さんとの離婚が成立したことだし、優子には幸せになってもらわないとね。」

「なるほど…」

「ま、いきなり2人で会うのは少しね…あの3人は中学からの親友だし、昔話で盛り上がってるかもね。なんだか、あなたたち見てると、優子と誠人くんのこと思い出すのよ。」

「お父さんと優子さんは小学生の頃からの幼なじみだって言ってたけど、きっと、優子さんのこと好きだったよね」

「中学から入ってきた誠人くんと優子が最初は水と油のような関係だったそうなの。でも、だんだんとお互い惹かれてきて、お互いの恋愛相談をお父さんが聞いてたんだって。で、高校の修学旅行に誠人くんが優子に告白したんだって」

「なんかベタだけど、ママはロマンチストだからきっと嬉しかったんだろうな」

「大学を卒業してからも、あの二人は続いてたんだけどね…いきなり嵐山健と結婚することになって。誠人くんは、政治家の秘書になりたてで、一人前になったら優子にプロポーズするつもりだったの。」

「山邑さんって、本当に一途な人なんだね」

「宗太郎もじゃない?凜ちゃんに対する気持ちが、誠人くんとそっくりよ。幼なじみっていいわよね。私なんてずっと女子校だったし、そんな人1人もいないのよね」


そんな話をしていると、玄関の方から「ただいまー!」と明るい声が響いた。


「優子、大丈夫か?」

「だいじょーぶ!」

「ママ!?」

「幼馴染3人で久しぶりに飲んでね…気を許してたくさん飲んでしまって。」

「山邑さんは?」

「明後日から総理の外遊だから、官房長官として、これから色々あるみたいでね。」

「あなたも明後日から総理と一緒ですものね。」

「とりあえず、優子のこと頼むよ。」

「ママ、着替えて化粧落とさないと!あ、マネージャーさんに明日のスケジュール聞いておかないと。」

「あ、僕が連絡しておきますよ。」

「宗太郎、お願いね!」


優子さんが酔っている姿は初めて見た。

どれほど、優子さんにとって山邑先生が大きな存在だったのか。

僕にとっての、凜さんと同じような存在なのではないかと思ったのだった。

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