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truth〜始〜  作者: 樋山 蓮


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11/13

XⅠ.流星群の夜

流星群が見られる時間には、自由に好きな場所で天体観測をすることとなっていた。

僕ら3人は、諒太さんと僕の部屋のベランダからの観測をしていた。


「なかなか見えないですね。」

「少し雲が多いかなあ。」

「もう少し粘ってみよう。」

「飲み物持ってくるね。二人ともここで待ってて。」


そう言うと、凛さんは合宿所のベランダから部屋の中に入っていった。


「宗太郎、凛さんと付き合ってから変わったな。」

「そうかなあ。まだ3ヶ月も経ってないけど。」

「少し弱気なところがあったけど、今は凛さんを守ろうっていう強い気持ちが漲ってるというか。」

「それもある。最初はその気持ちが強すぎてしまって、凛さんに宗太郎は私の家来じゃないでしょ?って。」

「確かにそれまでの関係は会長の彼女と副会長だったしな…主従関係というか…。」

「まずは凛さんと対等になれるように努力してるんだ。小さい頃から凛さんって呼んでるから、いきなり呼び捨てなんか出来なくて。」

「凛、って呼ばれたいんだろうな。」

「想像がつかないというか…。」

「でも、近づいて行ってる気がするよ、俺は。あーあ、俺も同じキャンパスだったらな〜。凛さんのこと狙ってたのに。」

「諒太さんには簡単に奪われてしまいそうで怖いですが。」

「いや。凛さんが言ったように、俺には凛さんは似合わないと思うんだ。結局、怜さんと同じようになってしまいそうで、いつかは宗太郎みたいなやつに奪われる。やっぱり、凛さんを守れるのは宗太郎だけだと思うよ。小さい頃からの想いというのが強いんだろうな。俺には勝てっこない。」


男2人でそんな話をしていて長い間、凛さんが帰ってこないことに不安が募る

「諒太さん…凛さん遅くないですか?」

「ああ、5分は経ってるよな。」

「ちょっと、見てきます。」

「俺も心配だから行くよ。」


2人で合宿所を探し始めるが、なかなか凛さんが見当たらない。


「手分けして探すか。」

「わかりました。西宮くんにも頼んでみます。」

「何かあったら連絡し合おう。」


西宮くんに電話すると、すぐに出てくれた

「どうしました?流星みれました?」

「ごめん。凛が居なくなったんだ。」

「え!?凛さんがですか?」

「もしかしたら…また怜さんの仕業かもしれない…今、諒太さんも一緒に探してるので、西宮くんも協力してくれませんか?」

「…うん。わかった。」



「よし…とりあえず部屋から行くか。」

部屋に向かい、ノックしてみると渡辺さんが出てきた。

「あら、有名人の泉くんじゃないですか。どうかされました?」

「凛、どこにいるか知ってますか?」

「凛さんですか…?さっき給湯室にいらっしゃいましたけど。」

「給湯室…ありがとうございます。」



凛さんの部屋から出ると、ポケットに入れていた携帯のバイブが振動した。

「もしもし?」

「宗太郎、何かわかったか?」

「同室の渡辺さんが言うには、給湯室にいたって。」

「わかった。すぐ向かう。」


給湯室は一階の奥。一階に下がると、薄暗い中、給湯室だけ灯りがついていた。


「凛!」

僕は彼女の名前を呼びながら給湯室に走っていった。

彼女は、床にぐったりと倒れていた。

服はズタズタに刃物で切られ、両手を縛られていた。


「凛…!どうした!」

「そう…たろ…。」

「僕がついていながら…なんでこんなことに…。」

両手を結んでいる縄を解き、ぎゅっと彼女を抱きしめた

その時、遠くの方からこちらに走ってくる足音が聞こえた。

「凛さん!宗太郎!」

「諒太さん…凛が酷い目に…。」

「とりあえず、病院に運ぼう。管理人さんに車借りてくる。それと、父さんに連絡して近所の医者を紹介してもらうよ。」

「助かります。」

「宗太郎は、凛さんのそばにいてやってくれ。」

「諒太さん、お願いします!」



西宮くんに彼女が見つかったことを伝え、彼女の荷物を持ってきてもらった。


「西宮くん、ありがとうございます。」

「松風さん…大丈夫ですかね…。」

「少し意識が朦朧としてるみたいだ…凛…聞こえるか?」


「宗太郎!車貸してもらえたから、今から病院に。」

「ありがとう、諒太さん。あ、西宮くん…代表には凛が熱を出したって言っておいてくれないか?」

「わかりました!気をつけて病院に連れてってください!」



「宗太郎、車回してくるから玄関の前で待っててくれ。」

「わかった。」


諒太さんと二人で協力し、彼女を夜間の受け入れが可能な病院へと向かった。


「柳川先生。先ほどお電話した、加藤です!」

「ああ、君が!お父さんから電話をいただいたよ、早くこちらに患者さんを!」

「柳川先生、お願いします。」



待合室で処置が終わるのを二人で待っていた。

処置室の扉が開き、柳川先生が出てきた。


「柳川先生!」

「心配ない。面会できるがまだ眠っている。目を覚ましたら連れて帰って大丈夫だ…しかし、心的なダメージは酷いかもしれない。」

「誰があんなこと…。」

「当分は聞かないでおくのが一番だ。優しく包んであげることだ。」

「はい。ありがとうございました。」

「宗太郎、凛さんのそばにいてあげてくれ。俺は合宿所に戻って、俺らの荷物ここに運んでくる。合宿所は危ない。明け方にレンタカーでも借りて逃げよう。」

「車ならなんとかなる。父さんに連絡してみるよ。」

「それが一番いいかもな。頼んだよ。」




それから夜が明ける前に、病院へ迎えの車が来た。秘書の榎本修一さんが車から降りて、駆け寄る。

「宗太郎さん、大丈夫ですか?」

「榎本さん。わざわざありがとう。僕は大丈夫。凛さんを車に…。」

「私もお手伝いします。」

「宗太郎!俺、みんなの荷物をトランクに積んでおくよ!」

「諒太さん、お願いします!」


僕は凛さんを抱き抱え、車に向かった。


その時、凛さんが目を覚ました。

「宗太郎…。」

「凛。体調は?」

「うん、ありがとう。宗太郎が助けに来てくれて安心しちゃったみたい。」

「歩けそうですか?」

「うん。」

僕はゆっくり凛さんを地面に下ろした。

「東京に帰りましょう。諒太さんも一緒に。」

「2人に迷惑かけてごめんね…。」

「そんなことないですよ。凛さん。」

「せっかくの天体観測サークルの合宿が…わたしのせいで…。」

「凛、そんな事言わないでくれ。僕にとっては合宿よりも…凛が大事だから。」

「宗太郎…やっと、凛って呼んでくれたね。」

「あ…いや、その…。」

「宗太郎、ありがとう。いつも、心の中では凛って呼んでくれてるんだよね。嬉しかったよ。」

「なんか…恥ずかしいです。」

僕がそう言うと、凛さんは手を繋いできた。

「わたしの前では、ありのままの宗太郎でいいんだよ。お父さんやお母さんにも気を使ってるんだからさ。」

「ありがとう…。」



「よし、荷物積んだぞ。」

「加藤くんありがとう…。」

「凛さん、目を覚ましたのですね。安心しました。」

「心配かけてしまってごめんね。」

「大丈夫ですよ。あ、宗太郎!俺、管理人さんから借りてきた車返しに行ってくる。」

「そっか。じゃあ、後ろついて行ってもらうよ。榎本さん、彼が運転する車をついて行ってもらえますか?」

「はい、わかりました。」

車を管理人に返して、東京へ向かう車の中で3人は騒動から逃げ出した疲れからかいつの間にか寝ていた。


「宗太郎さん、もうそろそろ自宅に着きます。」

「あ…は、はい。」


諒太さんと凛さんはまだ寝ていた。

「凛…凛さん、家に着きましたよ。」

「ずっと眠ってたんだ、わたし。」

「僕もさっき起きたところです。諒太さんはまだ寝ています。」


家に着くと、優子さんと母が心配そうに玄関の外で待っていた。


「凛…!」

「ママ。」

「心配したのよ…。」

「凛ちゃん、早くお家に入りましょう。宗太郎、部屋まで付き添ってあげて。」

「はい。」

「宗太郎、こちらは?」

「G学園で一緒に副会長をやっていた加藤諒太さんです。」

「申し遅れました。K大の医学部なので、今はキャンパスが違うのですが…。」

「加藤くんって、あの加藤先生の?」

「優子のお知り合い?」

「心臓外科の名医の加藤諒一先生の息子さん。うちの旦那がお世話になったことがあって…。」

「さ、加藤くんも中に入って。疲れたでしょう?」



僕は、凛さんの背中を支えながら部屋にお連れした。

「凛さん、大丈夫ですか?」

「うん。心配かけてごめんね。」

「とりあえず、ゆっくり休んでください。お着替えの邪魔ですよね…僕は優子さんとお話ししてきます。」



僕は、部屋を出てリビングに向かった。

もちろん、諒太さんが同級生の母たちの弾丸トークの標的になっていた。


「で、諒太くんは彼女居るの?」

「いえ。凛さんは宗太郎に先に取られちゃいましたし、医学部って女子が少なくて出会いが全くないというか…。」

「凛のこと奪っちゃえばいいじゃない!」

「凛さんのお母さんって大胆な発言しますね!凛さんは医者の嫁よりも将来のファーストレディーが自分には似合うといってましたから。」

「ふふ。ファーストレディーねえ。凛らしいわ。」

「じゃあ、うちの宗太郎が総理大臣ってこと?あの子に務まるのかしら!」

「凛さんなら、宗太郎を総理大臣に育てられると思います。」


そんな話をしている3人の中にはなかなか入れなかった。とりあえず、お手洗いに行くことにした。

リビングに行くと、母が心配そうな顔で話しかけてきた。


「宗太郎、凛ちゃんは大丈夫そう?」

「あ、うん…それでさ…当分、凛が自分から話せるようになるまでは、事件のこと聞かないでおいてくれないかな…。」

「でも、犯人は凛しか知らないじゃない…。」

「PTSDの可能性があるから…今はそっとしておいて、自分の中で整理がついたらきっと話せるようになるから…。」

「PTSDって…。」

「精神障害です。事故に遭ったとかそう言う記憶が同じような状況に出くわした時に、フラッシュバックして過呼吸などの症状がでたりだとか…。」

「犯人の目星はついてます。」

「宗太郎も諒太くんも気をつけなさいよ?」

「大丈夫です。絶対に守ってみせます!」


どうすれば凛さんが傷つくことなく事件が解決するのか…正直なところわからなかった。




「凛さん?お着替えすみましたか?」

「うん。」

ドアを開けると、凛さんは着替えておらず、ベッドで横たわって涙を流していた


「凛さん!?」

「もう…嫌だ…宗太郎、2人でどこかに逃げよ。」

「誰から逃げるんですか…?」

「…怜から。」

「怜さんに襲われたんですか?」

「違う…わたなべ…さん。」

「渡辺さんって…同じ部屋だった?」

「そっか…怖かったな…。」

横たわっている凛さんの目を見て、凛さんの頭を撫でた。


「宗太郎…わたしは…どうすればいいのかな…。」

「怜さんのことは絶対許しません。」

「怜からは逃げられないのかな…。」

凛さんの顔はいつも僕を引っ張ってくれる時の表情は見えなかった。


「僕が…どうにかします。」

「宗太郎…。」





翌日、凛さんは家から出られずにいた。


「宗太郎…行かないで…。」

「凛さんの幸せな日々を取り戻すためにも、今手を打たないと…。」

「…そばにいてよ…。」

リビングには僕と凛さん二人。


今日は優子さんは芸能界復帰のため、打ち合わせのために事務所に向かった。

母は、今日は実家の祖父の家に出かけてしまった。


「宗太郎さま…。」

「榎本さん…。」

「今は凛さまの隣に居てあげられるのは宗太郎さまだけです。信一郎さまから、宗太郎さまの力になるようにと仰せつかりました。何でも仰ってください。」

「お願いがあるんだ…。」


凛さんをリビングに残し、榎本さんに詳しいことを話した。

「事実確認をした上、父さんに頼んでいただけませんか?」

「承知いたしました。」


榎本さんはメモをし、家を後にした。




「宗太郎…?」

「凛さん、今日はずっと一緒にいますよ。」

「よかった…。」

「どこかお出かけしますか?」

「今日は、家にいたい。」


一日中ずっと凛さんと一緒に居るのは初めてだった。

事件の前のような凛さんは目の前にはおらず、何かに怯えて僕に甘えてきた。


「凛さん…僕も男ですからね…。」

「今日…しちゃおっか…?」

「今日はダメです!」

「宗太郎…わたしのこと好きじゃないの?」

「好きに決まってるじゃないですか…もっとちゃんとした時まで…僕は凛さんを大切にしたいんです。」

「宗太郎…。」



その時、僕の携帯電話が鳴った。

榎本さんからだ。


「はい、宗太郎です。」

「宗太郎さま…調査したところ、やはり秋本ユニバーサルエージェントとユカワホールディングスは取引があり、秋本ユニバーサルエージェントからユカワホールディングスに裏金がいってるようです。」

「そっか…じゃあ、父さんに協力してもらえるよう頼んでもらえないかな…。」

「只今、信一郎様に電話変わります。」

「ありがとう。」

「宗太郎。榎本から報告を受けたよ。これは政治家にも関わってくる事件になりそうだ。」

「え…?」

「秋本ユニバーサルエージェントは、野党の菅原幹事長と癒着があるらしい。これで菅原も失脚だな。」

「父さん…。」

「任せなさい。手を回しておくから。」

「感謝します。」

「凛ちゃんのこと、頼んだぞ。山邑にも伝えておくから。」

「はい。」


電話を切ると、凛さんは不安そうな顔で僕を見つめていた。


「凛さん、もう大丈夫です。僕のお父さんが対処してくれるみたいだから。」

「本当…?」

「あとは、優子さんの離婚の件ですね…。」

「ママには幸せになってほしい…20年近く我慢してきたんだもの。」

「山邑官房長官も…未だ優子さんのこと忘れられていないみたいですし…。」

「ねえ、宗太郎!」

「凛さん…それはおせっかいですよ。」

「もう、言う前にそんなこと言わないでよ!」

「でも、優子さんも仕事に戻ると言ってるし、第二の人生を歩むことを決めたみたいですね。しかし…山邑官房長官もお忙しいですからね…。」

「ねえ、出かけない?」

「凛さん、すっかり元気になりましたね。」

「ふふ。」

「でも、念のため今日は2人での外出はやめておきましょう。」


凛さんは少し拗ねていたが、なんだかそんな彼女を見て少し恋人として距離が縮まった気がした。

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