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勇者の護り、ココロのお守り。  作者: サイトウ純蒼
最終章「そんな普通の世界を護りたい」

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73.誰がために。

「行くぞぉおお!! 深淵の熱線(ダークネス・レイ)!!」


 大魔王ルージュが叫びながら暗黒魔法を詠唱する。空一面に現れた漆黒の熱線。それが白亜の建物に集まった魔神たちの頭上へと一気に落とされる。


 ドオドドドオオオン!!!


 俺とルージュ、そしてバルクホルムと魔神たちとの全面決戦がついに始まった。ルージュは退屈な毎日を吹き飛ばすような状況に興奮。バルクホルムは積年の恨みを晴らすが如く評議会を守護する魔神たちへと殴り込む。



神の槍戟(ゴット・スピア)!!」


 一方の俺はサヤカとキャロルをシールドで守りながらの戦いを強いられている。ココロがいない以上、人族である二人にこの戦いへの参加は許可できない。

 大空に現れる数多の魔法陣。その中央より光る神の槍が顔を出し、真下にいる魔神どもに一気に光り輝く槍が降り注ぐ。


「ぐわああああ!!」

「なんだ!? この膨大な魔力は!!」


 魔神たちがルージュや俺の魔法の前に次々と悲鳴と共に倒れていく。奴らは知らない。混血と馬鹿にしていた俺の本当の力を。



「お前ら、全員ぶっ殺す!!!!」


 対照的にバルクホルムは、全身を超絶強化させ俺やルージュの魔法を逃れた魔神どもを見つけては物理で襲いかかる。


 ドン、ドドドドン!!!


 魔神たちは混乱に陥っていた。侮っていた混血。魔王。絶対的数の有利。油断があったのかもれない。緒戦は俺たちの圧倒的優勢で進められた。


 だが、やはり数の力は絶対。守護兵という基本能力が高い魔神たちの地力が徐々に鮮明となってくる。



 ドン!!!!


「ぐっ!!」


 まずやられたのがバルクホルム。漆黒の翼で自由に飛び回っていたのだが、的確に放たれる魔神どもの魔法を受け、翼が損傷。そのまま地面へと墜落する。


「はあ、はあ……、ちょっと数が多いな……」


 次にルージュに疲れが見え始める。同数なら圧倒していた。だが倒しても倒しても雲のように湧いてくる魔神どもに、さすがの大魔王も疲れが見え始める。



「バルクホルム、戻れ!! イシス、硬化を強めろ!!」


 俺は負傷し飛べなくなったバルクホルムに戻るよう指示。代わりに移動力は落ちるがイシスに防御力を上げるよう命じた。


(このままではジリ貧だな。さすがに奇襲を受けりゃ分が悪いか……)


 計画の甘さが露呈したようだ。魔神評議会を軽く見すぎていた。ココロを奪われ、戦力と考えていたニッカも不明。評議会の連中と、サヤカとキャロルを守りながら正面から戦うことになるとは全くの想定外であった。



魔法障壁シールド!!」


 後退してきたルージュを守るように新たなシールドを展開。優勢だった序盤が嘘のように俺たちは防戦一方となった。攻撃してダメージを与えても別の魔神が回復。殺さない限りは俺たちの勝利はないように思えた。



「さあ、どうする? エリート・ゴットラングウェイよ」


 魔神たちの後方、純白の白衣を纏った評議会の老長アーグレイが余裕の表情を浮かべ俺に言う。

 奴にしてみれば、はぐれ魔神に魔王、堕天使のパーティなどに最初から負けることなど考えてもいなかったようだ。それが魔神界の最高峰。刺客の敗北など微々たることであったに違いない。


「くそっ……」


 悔しいがすでに勝敗は決している。俺たちの敗北。圧倒的数の前にはなす術がなかった。


「エ、エリート。逃げた方がいいじゃない……?」


 俺の後方にいるキャロルが弱々しい声で言う。シールドで守られている二人。ただ絶え間なく放たれる魔法を前にその顔は恐怖の色に染まっている。


(確かにその通りだ……、ここで誰かが死んでしまったら意味がない)


 戦略的撤退。いや、違うな。敗北。そう、ただの負け。だがこのまま無様に逃げることだけはしたくねえ。俺が片腕を上げ魔法を詠唱。


「む!? 気をつけろ、何か来るぞ!!」


 アーグレイが咄嗟に叫ぶ。さすが老長。その危機察知能力は伊達じゃない。



神剣の剣戟(ゴッド・ソード)



 ゴオオオオオオオオオオ……


 神をも貫く剣戟の魔法。レザウェルにも放った神剣の魔法。ただそれは皆の常識を超えていた。


「ど、どうなっている!? あんな巨大な神剣、しかも複数召喚なんてあり得ない!!」


 そう、俺が発現した神剣。太く、金色に光る巨大な剣が五本、魔神たちの頭上に並ぶように現れる。通常は大きな剣が一本、または小剣が複数本が一般的。俺の神剣はまさに常識を超えていた。



 ドオオオオオオオオオン!!!!!


「ぎゃあああああ!!!!」


 魔神たちですら震え、動けなくなるほどの神々しい金色の神剣。唖然とする彼らの頭上へと一気に落とされる。



「小癪な……」


 砂塵舞い上がり悲鳴を上げる配下たち。それをアーグレイが渋い表情で見つめる。想像以上の力。この数の守備兵たちをここまで追い込むとは想定外。野良の刺客では勝てないはずだと理解した。


「だが、甘い」


 アーグレイが右指を俺の方へとむけ、小さくつぶやく。


神命の弾丸(ゴット・ライフル)


 ドン……



(え?)


 俺は一瞬何が起きたのか理解できなかった。

 異質。そう、そんな表現が相応しい妙な、感じたことのない神力の弾丸。小さく、この乱戦の中では消えてしまいそうな攻撃であったが、確実に、そして絶対の意思を持つかの如く俺の胸を貫いた。



「なっ、エリートっ!?」

「エリート様ぁあああ!!!!」


 キャロルとサヤカの悲鳴が辺りに響く。アーグレイの指から放たれた魔力の弾丸が、シールドを貫通し、俺の胸へと着弾。俺はそのまま力尽きるように後ろへと倒れた。


「馬鹿な!?」


 ルージュが驚く。それも当然。鉄壁を誇っていた俺のシールドが、こうも簡単に破られたのだから。



(やべ……、さすがにこれはまずい……)


 相手は人族や魔族でなく、同じ魔神。シールドで仲間を守りながらの戦い。奇襲を受けたとは言え、やはり端から勝てる戦いではなかったのだ。



神命の弾丸(ゴット・ライフル)


 アーグレイが追撃を行う。


「うおおおおおおお!!!!」


 ガン!!!!!


 俺は気合いと共に立ち上がり、アーグレイの弾丸を気合いで弾く。ジンジンと痺れる手。さすがの俺も限界が近いようだ。アーグレイが尋ねる。



「なぜ抗う? 負けを認めれば苦しまずに楽にしてやるのに」


 俺はどくどくと胸から流れる流血を感じながら答える。


「負けねえ、絶対に負けられねえ……」


「まだ抗うのか?」


 俺は胸の傷を押さえ、手についた鮮血を見てから答える。


「ああ、抗う。俺が諦めたらあいつが死んじまう……」


「あいつ?」


 アーグレイが首を傾げる。俺は口に溜まった血をぺっと吐き出して言う。


「てめえには関係ねえことだ。俺が護ると決めた女。それだけだ!! おい、ルージュ!!」


「な、何だ!!」


 俺は皆に背を向けながら言う。


「走って皆と逃げろ。いいな!!」



「え? お前、何を言って……!?


 俺が防御を捨て、両手を魔神どもに向けて叫ぶ。



「うおおおおお!! 神獄の噴炎(インフェルノ・ゴッド)!!!!」


 ドオオオオオオオオオオン!!!!


「ぎゃああああ!!!!」


 神域の爆炎魔法。その中でも特に上位の魔法は、魔神の中でも限られた者だけしか扱えないない。見るのも初めてだと言う者も多いだろう。俺は残った魔力を振り絞って()()()、神界最高峰の魔法を放った。


「に、逃げろ!!」

「あいつ、バケモンだぁあああ!!!」


 さすがの守護兵たちも、圧倒的魔力で襲いかかかる神域の上級魔法を前に皆が逃げ始める。



(今のうちに、皆逃げてくれ……)



 ドン……


「え……?」


 魔神たちの悲鳴の中で微かに聞こえた何かを放つ音。同時に俺の胸や腹、腕に足。至る所が燃え上がるように熱くなる。


(ぁあ……)


 熱さが激痛に変わる瞬間、離れた場所で右指を前にこちらを見つめるアーグレイの姿が見えた。



(まずい、このままじゃ……)


 アーグレイが再び指を俺に向け、何かをつぶやく。放たれる魔法の弾丸。一直線に俺の()へと飛んで来る。



(死ぬ……)


 さすがに俺でも、あれを頭に受ければ生きていられないだろう。死を覚悟した。そして不思議と、いや、やはりその顔が頭に浮かんだ。



 ――悪りぃ、ココロ。もう護ってやれなくて



「うおおおおおおおお!!!!」


 カン!!!!!!



「あっ」


 倒れそうになる俺が寸前で踏みとどまる。突如現れたピンク髪の少女が、持っていた青き剣でアーグレイの弾丸を粉砕。倒れそうな俺の体を支えて言った。



「ごめん、エリート。遅くなっちゃった!!」


「コ、ココロ……」


 ココロが俺の怪我を見て厳しい表情で言う。


「大丈夫? エリート、大丈夫??」


「あ、ああ、何とか。お前はどこに行って……」



「守るから!!」



「え?」


 聞き返した俺にココロが改めて言う。


「エリートは私が守るから!! 私の約束だから!!」


 ああ、思い出した。そうだった。そうだったよな。ココロも俺を守ってくれるんだと。

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