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勇者の護り、ココロのお守り。  作者: サイトウ純蒼
最終章「そんな普通の世界を護りたい」

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65.いざ、魔神界へ!!

「魔神? 神様!?」


 星が瞬く夜空の下、俺の告白にココロとサヤカが驚きの表情を見せる。



「神様って、あの神様??」


 どの神様だよと思っていると、ココロが笑いながら言う。


「もー、変な冗談言わないでよ! エリートが神様だなんて……、くくっ」


「サヤカ、笑ってはいけません。エリート様が仰るのならばきっと神様なのでしょう。信じるべきです」


 何だかその会話だけ聞いていると酷く滑稽に思える。神と告白されて笑うココロ。それを聞いて盲目的に信用するサヤカ。まるで王都の一部で流行っている怪しげな宗教のようだ。



「何を笑っているんだ。こいつは本当に神だぞ」


 それをルージュが真面目な顔で肯定する。


「勇者以外で大魔王の私を圧倒できる奴がどこにいる?」


「そ、そうだけど……」


 それでもココロはやはり俺が神だと信じられないようだ。当然だろう。彼女の前では俺はただの村人。基本、超絶弱い。



「ちなみにこいつ、ニッカも魔神だ」


「え? そ、そうなの!?」


 立て続けの告白に二人が驚く。


「神様ってそんなにたくさんいるの? ひとりじゃないの??」



「うーん、まあ魔神界にはいっぱいいるがな……」


 そうか人族の価値観では神はひとりか。それだったらどんな圧政が起きることか想像がつかない。


「いっぱいいるんだ……」


 意外そうな顔で俺の言葉を聞くココロに次の目的を言う。



「その神がたくさん住んでいる魔神界ってのがあるんだが、次はそこに行ってそいつらをぶん殴る」


「……はあ?」


 もうココロの顔がますます意味が分からないって顔になる。さすがのサヤカもこればかりはフォローのしようもないようだ。



「神様ぶん殴るって……、エリート、喧嘩でもしたの?」


 そう尋ねるココロに俺が笑って答える。


「喧嘩はまあ、してねえよ。あいつら悪い奴だからぶん殴るだけだ」


「あー、それ絶対喧嘩したやつじゃん! そうでしょ? 本当にエリートは素直じゃないんだから!」


(どうしてそうなる……)


 何か勘違いをされているようだが、それでも『魔神界の決まりで、勇者を発現したお前を殺さなきゃいけない』とは言えない。俺は黙り込むサヤカに気付き尋ねる。



「どうした、サヤカ? お前も信じられないか?」


 俺にそう尋ねられたサヤカが顔を上げて首を振って答える。


「い、いえ、そういう訳ではないのですが……、本当に神様の所へ行って、戦うのでしょうか……?」


 一般の人族からすればその感覚が正しいだろうな。信仰として崇めていた神。その存在が本当にあり、さらにそれらを制圧に行く。いきなり言われて信じろと言う方が難しいだろう。ただきちんと伝えておかなければならないことがある。



「その通りだ。俺は魔神界の神と戦う。クソみたいな不条理をぶっ壊すために俺はあいつらをぶん殴る。そしてココロ。それにはお前が必要なんだ」


 名指しされたココロ。ぽかんと口を開いて言う。


「わ、私? なんで私が必要なの??」


 神同士の戦いになぜ自分のような存在が必要なのか。どきどきするココロに俺が言う。


「隠さずに言う。お前がいると魔神の力が無効化される。つまりおまえは魔神界制圧の切り札になる」


「魔神の力が無効化? ……え、なにそれ??」


 知らん。はっきり言ってこっちが聞きたい。なぜそんな出鱈目なスキルがあるのか。俺たち魔神からしたら恐怖以外の何物でもない。


「詳しいことは俺も分からん。ただお前が目覚めている間は、俺たち魔神はなぜか力を封じられる」


「あ、だから、これね!」


 ココロはそう言いながらスリープ弾の入った魔銃を取り出す。


「そうだ。お前が眠れば俺たちは魔神としての力を発揮できる。そう言う意味だ」


「え、でも、それなら私はいない方がいいってこと??」


 純粋に神同士の戦いをするならそうなる。ただ今回は魔神界の中枢である評議会制圧が目的。魔神界の猛者が集う場所。そんな奴らを一度に相手にすることは、さすがの俺でもできない。


「いや、それは違う。お前がいることで強力な力を持つ魔神たちをすべて()()()()()に変えることができる。そうなれば……」


 俺は、俺の中に眠る二人に声を掛ける。


(出て来い)



 ドン……


「え?」


 俺の頭上に現れる黒く大きな影。一気に漆黒の翼を広げると、そこには黒い目隠しをした筋肉質男が現れる。


「こいつはバルクホルム。堕天使。元天使だ。そして……」


 俺は音もなく俺の隣に現れた白い肌、銀髪の少女を紹介する。


「こいつはイシス。御影石の精霊だ。この二人の力を借りて魔神どもをぶっ飛ばす」


 バルクホルムが翼をゆっくり羽ばたかせ地上に降りて来て言う。



「俺の望みは魔神どもをぶっ殺すこと! 言われなくても勝手にやる」


 イシスが横目でそれを見つつ、俺の腕に手を絡めて言う。


「私は御影石の精霊イシスと申します。主様と寝食を共にし、運命、将来を一緒に歩く者。よろしくね、ココロさん」


 なぜかココロだけをじっと睨むように見つめるイシス。


「おい、なんか紹介がおかしくないか?」


「いえ、全く問題ありません。主様」


 少し戸惑いながらもココロが答える。


「あ、うん。よろしくね。ふたりとも……」


 ぎこちない空気。そんなものに全く気付かない俺が言う。



「と言う訳で、魔神の力が抑えられてもこいつらが居れば多分無双できる。何せ相手はただの村人になる訳だからな」


「は、はい。分かりました。エリート様」


 神かどうかは別として、もはや俺をただの人族であるとはもう誰も思っていない。サヤカに至っては俺の正体が分かり、ずっと喉に痞えていた物がとれたような顔をしている。



「以上だ。これよりここに居るメンバーで魔神界に殴り込みをかける。ココロが起きている間は俺とニッカ以外の者に活躍して欲しい。ココロに何かあれば俺とニッカが代わりに出る。まあ、そうなる前に制圧したいけどな」


「分かったわ!」


 そう答えるココロやサヤカ。俺がルージュに言う。


「特に大魔王のお前にはしっかり働いてもらわなきゃならん。頼むぞ」


「問題ない。魔神界制圧、何とも楽しそうで甘美な言葉よ……」


 こいつは基本、楽しければそれでいいようだ。魔神と大魔王。微妙な関係ではあるが、ルージュにしてみればそれはどうでもいいことなのかもしれない。ココロが尋ねる。



「ねえ、エリート。それでその魔神界ってところにはどうやって行くの?」


 その言葉に俺はポケットにあったひとつの石を取り出し皆に見せる。


「これは転移石と言って魔神界に行くための石。これが数少ない移動法だ」


 ニッカも同じく転移石を取り出す。魔神界ではそれほど珍しいものではないが、魔神の魔力を動力源とするため他の者では使うことはできない。


「二つあればここに居る者ぐらいは転移できるだろう。それじゃあ、準備はいいか?」


「え? 今から行くの??」


 驚くココロに俺が答える。


「そうだ。必要なものは向こうでも揃えられるし、それに短期決戦で終わらせるつもりだ」


 長引けばどんな不測の事態が起こるか想像できない。急襲にて制圧。これがベスト。



「じゃあ、行くぞ。みんな俺とニッカに……」



「ちょっと待って!!」


 魔神界に乗り込もうとした俺たち。そこへひとりの少女が闇夜から駆け付ける。ふわっとした紫髪のポニーテール。腰に付けた朱色の剣。それを見たココロが笑顔で言う。


「あっ! キャシー!!」


 シュガルツ王国の姫キャロル・シュガルツ。ゼイゼイと息をしながら俺の前に立つと、笑顔で言う。


「どこへ行くの? 私も行くよ!!」


 サヤカが尋ねる。


「ひ、姫様。よろしいのでしょうか??」


「大丈夫! 国王パパも無事だったし、お城が壊れただけ。だからもう大丈夫!」


「キャシー、嬉しいよ! また一緒に戦える!!」


 喜ぶココロ。キャシーが答える。


「うん、またココロと一緒だね! それで、どこに行くの??」


 そう尋ねるキャロルに俺が答える。



「魔神界だ。さ、行くぞ」


「え? えええええ!?」


 驚くキャロル。そして俺たちはいよいよあの魔神界へ殴り込みをかける。

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