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勇者の護り、ココロのお守り。  作者: サイトウ純蒼
第一章「魔神エリート、降臨」

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6.勇者候補、ココロは負けない!

「はあはあ……、ここがゴブリンの根城ね。村のみんなもここに居るはず!!」


 俺達が村を出るよりずっと前。単騎、ゴブリンの巣窟に辿り着いたココロは、その不気味に口を開ける洞窟を見て言った。洞窟から流れる生暖かい風が、彼女のピンク髪を揺らす。単騎突入はこの上なく危険な行為。ただ彼女の気持ちはブレなかった。


「ゴブリンごときに勇者を目指す私は恐れない!! いくぞーーーーっ!!!」


 そう口にすると、両腰につけた短剣を手に洞窟内へと突入する。



「はっ、はあ!!!」


 ココロが持っていた【高速移動】のスキル。実際戦闘でも大いに役立っていた。


「ウギャガアア!!」

「ギャ!? ギャガアアア!!!」


 松明の明かりしかない暗い洞窟内。そこを高速で移動する小柄な少女。Eランクとは言え、最弱に分類されるゴブリン程度ではとても太刀打ちできない。



「はあ、はあ……、でもさすがに数が多いわね……」


 とは言えここはゴブリンの根城。次から次へと沸くように現れる敵を前にココロの息も上がる。


「ココロちゃん!!」


 そんな彼女の耳に、村の若い女性の声が響いた。


「あ、みんな!!」


 洞窟の奥に縄で縛られた村の女性たちがいる。ゴブリンは女性を犯し、そして食う。狙われるのはいつも若い女性たち。ココロは疲れた体にムチ打ち、気合を入れる。


「みんな、今助けるから!!!」


 人助け。勇者に憧れる彼女にとって、これはある意味最高の舞台であった。


「ギャガアアア!!」

「ブギョガアアア!!!」


 雑魚ゴブリンたちから次々と血しぶきが上がる。救助の出現に声を上げ喜ぶ村の女たち。だがその光景が、それの登場で一変した。



(え?)


 ゴブリンを斬りつけていたココロ。その真横から突如、黒く大きな何かが自分目がけて襲い掛かってきた。



 ドン!!!!


「きゃああああ!!!」


 ココロは体に強い衝撃を受け、洞窟の壁まで吹き飛ばされた。【高速移動】のスキルを持つ彼女ですら避けきれない攻撃。壁にもたれぐったりするココロは、初めてその凶悪な存在に気付き声を上げる。



「う、うそ? ギガゴブリン……」


 真っ赤な巨躯に鋭い牙。下をべろべろ出しながら、肩に巨大な棍棒を担いでこちらを睨みつけている。こいつが親玉か。ココロは口から流れ出た血を袖で拭きながら思った。


「ココロちゃん、ひとりで来たの!?」

「サヤカさんは? サヤカさんは来ていないの!?」


 皆、ココロが村に帰って来たサヤカとパーティを組んでいることは知っている。ココロはまだ駆け出しの冒険者。それに対してサヤカは訳アリだが、それでも元王国騎士団員。まさかココロが単騎救助に来たとは思ってもみなかった。


「うるさい、うるさいの!! サヤ姉なんか知らない!!!」


 ココロがムキになってギガゴブリンに突撃する。自分よりぽっと出の訳の分からない男を選んだサヤカ。もう思い出したくもなかった。



「はああ!!!」


 シュン、シュンシュンシュン!!!!


 ココロがギガゴブリンに肉薄し、両手に持つ短剣を雨の如く振り下ろす。暗がりでの高速攻撃。ココロの短剣はギガゴブリンに的確にヒットしていた。だが()()()はなかった。


「女、ニゲタか!!!」


 ギガゴブリンが巨大な棍棒を振り回す。ギルドの仕事を終え村へ帰還。そのままこの根城まで全力で駆け、単騎ゴブリン相手に戦ったココロ。疲れ切った彼女の攻撃は、もうその分厚い赤い皮膚に傷をつけるのが精一杯であった。


 ブオン!!!!


「くっ!」


 ギガゴブリンの反撃。紙一重でその棍棒を避けたココロ。だがその先に数体のゴブリンが待ち構えていた。



 ガブ!!!!


「ぎゃああ!!!!」


 ゴブリンに体を押さえられ噛みつかれたココロ。その悲痛な悲鳴が洞窟内に響く。


「ココロちゃん!!」

「ううっ……」


 村の女たちが襲われるココロを見て声を上げる。何度も目にしたゴブリンの非道。彼女までその犠牲になるのか。村の女たちはココロを襲うゴブリンの群れを見て涙を流す。



「うあああああああああああ!!!!!」


 突然の大声。だがそれは悲鳴ではない。生きる為の雄叫び。諦めない心の叫び。ココロに群がっていたゴブリンたちが、一斉に舞うように飛ばされていく。



「ココロちゃん!!」


 その中央、血を流しながら仁王立ちするピンク髪のココロを見て、村の女たちが再び涙する。



「私は負けない!! 何が起ころうと、勇者は諦めない!!!!」


 駆け出しの冒険者。子供だと思っていた村の幼い女の子。だがそこに立つその姿は、まるで皆の希望、勇者のそれであった。



「女、コロス!!!!!」


 ドオオオオオオオン!!!!


 だが、残念だがココロにその強敵に抗う力はもう残っていなかった。背後に現れたギガゴブリンの棍棒を体に受け、そのまま壁へと吹き飛ばされる。



「ココロちゃん!!!!」

「逃げて!! もう無理だから!!!」


 村の女たちの悲痛な叫び。倒れ、意識朦朧とするココロの目に歩み寄るギガゴブリンの姿が映る。



(こんなところで……、私は、諦めたくない……)


 勇者になると言う夢。それがこんなゴブリン程度に潰されるのか。涙が溢れるココロに、ギガゴブリンの巨大な棍棒が振り下ろされようとしていた。



「無限弓っ!!!!」


 ドン、ドドドオオン!!!!


 ギガゴブリンに撃ち込まれる光り輝く無数の弓矢。倒れながらもココロはその声をはっきりと聞いた。



「わらわはシュガルツ王国・王国副騎士団長がひとりラーズリー・ランドール!! 皆の者、もう安心しろ!!」


 意識朦朧の中、ココロの顔に少しだけ笑みが浮かんだ。

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