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勇者の護り、ココロのお守り。  作者: サイトウ純蒼
第三章「敗北が約束されたクエスト」

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39.灼熱の砲弾

(私がここを通った時、サンドワームなんていなかったわ。魔王!? これは……、嵌められた……)


 滴る汗。激しく脈打つ鼓動。サヤカは魔銃を放ちながら、最悪の事態へと進んでしまうことに体を震わせた。

 その先頭、崩壊の序章が始まった最前線。見上げるような巨大なサンドワームに乗った緑髪の美しい女性、魔王ヒュカリスが笑いながら言う。



「ここであなた達は全滅するのよ。私の可愛い子供たちに丸飲みにされてね」


「黙れ、このイカレチ〇ポ野郎!! このミスランドがいる限り好きにはさせねえぞ!!」


「イ、イカレ……、まあ、なんてお下品な。こんな美しい私に向かって。……心から同情しますわ」


 ミスランドの口撃に首を振って悲しみの表情を浮かべるヒュカリス。遠くで聞こえるその会話を聞きながら、俺はその点だけは女魔王に深く同意した。ミスランドが後ろを振り返り、大声で言う。



「おい、クソ大隊長!! 指揮を執れ……、って、おい……!?」


 その光景に皆が目を疑った。

 今回の遠征の発起人。この大部隊を率いここまでやって来たガンダス大隊長が、ひとり馬車を降り、あろうことかサンドワーム蠢く女魔王の元へと駆け出している。

『危ないぞ!』と叫ぼうとしたミスランドが、思わずその言葉を飲み込む。


「ま、()()ヒュカリス様、手筈通り猛者どもを連れて参りました。後はよろしくお願い致します」


 双角を生やし、緑髪の美しい魔王ヒュカリス。その目の前でガンダスが片膝をつき頭を下げている。

 騎士団、そして冒険者たちはようやく理解した。彼が内通者であり、目の前の女魔族が本当に魔王だと言うことを。ヒュカリスが言う。


「まあまあ、ですかね。副騎士団長がたったひとりですけど、ま、いいかな。及第点をあげましょう」


「あ、ありがとうございます!!」


 深く頭を下げ感謝を述べるガンダスに、ミスランドが怒鳴りつける。



「貴様、クズイ〇ポ野郎!! よくも私たちを騙したな……」


 ガンダスが立ち上がってミスランドに怒鳴り返す。


「まだ分からんのか、このバカ者が!! これからは大魔王様の時代。この俺が馬鹿なお前らの上に立って導いてやる!! まあ、お前はここで死ぬけどな、この下品女っ!!」


 うむ、やはり最後の言葉だけは俺も同意する。今後あの女と行動を共にすることは極力遠慮願いたい。ミスランドが額に青筋を立て怒声を上げる。



「ぶっ殺してやる、ゲスイ〇ポ野郎っ!!!! おい、てめら!! ここから指揮は私が執る!! Sランクはデカ物、それ以外は周りの雑魚を仕留めろ!! いいな!!!」


「「はいっ!!」」


 王国副騎士団長の即断。どんな状況でも的確に判断し、適応する。先頭にいたSランク冒険者とミスランド、そして騎士団の精鋭が魔王ヒュカリスに対峙。それ以外の者は周りに蠢く通常のサンドワーム退治を開始する。



「行くよ、サヤ姉!!!」


「分かったわ!!」


 ココロが青き勇者の剣を振り上げ再度サンドワームに突撃。サヤカも魔弾を装填してそれを援護。キャロルもフレイムソードを持って突進していく。

 魔王登場に、大隊長の裏切り。まあ、下賤な人族ではよくあることだ。ここからはあの下品女のお手並み拝見と言ったところか。今の俺ではやれることは限られているし。まあ、もしココロに危害が及ぶようなら黙っているつもりはないが。


「エリートは待機よ、待機! いい? 分かった??」


「う~い」


 俺はココロの言葉通り中古の剣を手に中隊で待機。イシスの力を借りてもあれは倒せない。


(無理はするなよ)


 俺はサンドワーム相手に暴れまくるココロを後ろから見てそう願った。





「いきなり魔王か。まあ、いずれ叩かなきゃならない相手。僕も本気を出すよ」


 魔王ヒュカリスに対峙する最前線。Sランク冒険者ジェイルが双剣を構え、そう口にする。周りには数名の同じSランク冒険者。腕組みをしたままヒュカリスが答える。


「人族ごときがこの私に勝てるとでも? まあ、まずは可愛いナナちゃんがお相手するわ。じゃあね~」


 ヒュカリスはそう言うとぴょんと巨大サンドワームから飛び降りる。同時に響く不気味な唸り声。


「ギュゴオオオオオオオオ!!!!」


 巨大な口。堅固な皮膚。雑魚サンドワームとは一線を画す凶悪な魔物が冒険者たちに襲い掛かる。ジェイルの相棒の女魔導士が空に向かって叫ぶ。



「天に御座し召す数多の神々よ。その偉大なお力を持って我らをお守り導き給え。全能力向上魔法オールステータスアップ!!!」


 詠唱と同時にジェイルの体が緑色に光り始める。身体強化魔法。ただでさえ強いSランク冒険者に、さらに全能力を上げるバフをかける。


「うおおおお!! くたばれ、双剣そうけん重戟斬じゅうげきざんっ!!!!」


 ジェイルが単騎突撃。手にした双剣で強力な斬撃を巨大サンドワームに叩き込む。



 ドオオオン!!!!


 もはや剣戟とは思えない爆音。これがSランク冒険者の神髄。



「ギュゴオオオオオオオオ!!!!」


 だが、その巨大な悪魔はそんな攻撃を嘲笑うかのようにその固い装甲で防御。同時に長い体をくねらせ体当たり。ジェイルを襲う。



 ドン!!!


「ぐがっ!!!」


 瞬時に双剣で防いだジェイル。だがその小さな体はまるで玩具のように吹き飛ばされる。


「ジェイル!!!」


 女魔導士が叫ぶ。相手は想像以上。彼の最も強い一撃でもその固い皮膚に少し傷がついただけ。



「突撃だ!!!」

「うおおおお!!」


 同じくSランク冒険者たちや騎士団の精鋭が巨大サンドワームに突進する。だが彼らには壮絶な地獄が待ち構えていた。


「ぎゃあああああ!!!」

「ぐわああああ!!」


 サンドワームの巨体に潰される者。そして攻撃しながらその巨大な口に飲み込まれる者。魔王討伐の命を受けていた猛者たちが、どんどん力尽きていく。ヒュカリスが笑いながら言う。


「きゃはははっ! ナナちゃんはね、その強さだけなら魔王クラスよ。簡単には負けないから」


「さ、さすがヒュカリス様です」


 隣に立つガンダスが引きつった顔で頷く。



 パアアアン!!!


「下がれ、雑魚どもっ!!!」


 空中で赤い鞭を鳴らし、真っ赤な三角帽に赤い衣装を着たミスランドが叫ぶ。同時に四方に散る冒険者たち。ミスランドの目がその巨大なサンドワームに向けられる。


「開門っ!!!」


 パン、パパパパアアン!!!


 空中で音を立て撥ねる赤い鞭。同時に宙に現れる幾つかのマグマの塊。どくどくとまるで生きているかのような灼熱の炎。ミスランドが鞭を真横に構え、大声で叫ぶ。



砲撃ファイエル!!!!」


 パアアアン!!!!


 空中で大きく振り鳴らす赤き鞭。マグマの塊がまるで砲身のように変化し、そこから灼熱の砲弾が発射される。



 ドン、ドドオオオオオオオン!!!!!


 シュガルツ王国、副騎士団長ミスランド。炎を操る彼女の最高の攻撃『灼熱の砲弾』。すべてを溶かし灰にするマグマを砲弾のように発射するスキル。魔力消費は激しいが、三名いる副騎士団長の中でもその攻撃力は群を抜いている。


「ギュゴオオオオオオオオ……」


 全弾命中。砂煙共に、巨大サンドワームから炎が舞い上がる。



「すごい、さすがミスランド副騎士団長……」


 同じ射撃を得意とするサヤカが、あまりに桁が違う砲撃を前に思わず見惚れる。シュガルツ王国最大級のアタッカー。ミスランド副騎士団長がここに送り込まれたのも、騎士団長を取り戻したいと言う国の本気度がうかがえる。

 ただ俺は、その砂煙の後ろで微動だにせず微笑む女魔王の顔にその答えがすべてあると思った。


「さあ、クソ野郎ども!! 残りは雑魚と、あの女魔王……、!!」


 大声をあげたミスランドの動きが止まる。仕留めたはずの巨大サンドワーム。だが砂煙の中から、その不気味な巨体が姿を現す。



「ギュゴオオオオオオオオ……」


 装甲のように固めた皮膚は一部が破壊され、ぼろぼろと落ちている。ただそれと同時に物凄い速さで再生が始まっている。ミスランドが信じられない顔で言う。



「馬鹿な……、私の砲撃を食らって、まだ生きているだと……」


 過去には魔王すら追い詰めた自慢の砲撃。瞬間的破壊力ではシュガルツ最強を自負する。ミスランドが赤い鞭を空でパアンと鳴らし、叫ぶ。



「これで終いだ!! 開門!!!!」


 パン、パパパパアアン!!!


 連射など経験がない。魔力消費が激しく、恐らく次が最後の一撃。ただここで自分が退けば敗北が決まる。



砲撃ファイエル!!!!」


 灼熱のマグマの砲弾。ゴオゴオと唸り声をあげて巨大サンドワームへと放たれた。

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