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勇者の護り、ココロのお守り。  作者: サイトウ純蒼
第三章「敗北が約束されたクエスト」

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34.さあ、飛竜を捕まえようか!!

 今回のクエスト【騎士団長救出作戦】には、当初Aランク以上の冒険者でないと参加が許可されていなかった。

 ただあまりの人の集まりの悪さに、途中からBランク以上と変更されている。その理由はもちろん騎士団長ウィルソンが敗れた魔王案件と言うのが一番なのだが、それ以前にある程度の強者でないとその場所にすら辿り着けないためであった。ガンダス大隊長が皆に言う。



「よし、飛竜の谷に到着したぞ!! お前ら、今日はここで野営だ。そして明日の朝までに自分の飛竜を捕まえておけ!!」


 そう、この谷を渡るにはここに棲みつく飛竜と戦い服従させなければならない。渓谷の至る所を飛び回る飛竜たち。時刻は夕方。まだ日は高いがもたもたしていると彼らが狂暴化する夜になる。



「うわー、すごいたくさん飛んでる!! それに、なにこれ!? ちょー深い谷じゃん!!」


 馬から降りたココロが飛竜の谷を見て声を上げる。空を自由に飛び回る飛竜。底は漆黒の闇に包まれる巨大な渓谷。初めて訪れる者はその圧巻の光景に言葉を失う。サヤカが言う。


「ココロ。あまり谷に近付いちゃダメですよ。飛竜が襲ってきますから」


「うん、分かってるよ!」


 飛竜はこの深い渓谷に卵を産み、子育てを行っている。断崖絶壁、谷底から吹き上げる強風。敵から身を守るには最高の条件。故に、不用意に彼らのテリトリーに近づくと容赦なく攻撃を受ける。副騎士団長ミスランドが腕を組み皆に言う。



「おい、キン〇マ野郎ども!! いいか、明日の朝この谷を越える。それまでに飛竜と戦い手懐けろ! いいか? それができなければとっとと泣きべそかいて帰りやがれ、イカレチ〇ポ野郎どもが!!」


 俺は相変わらず口が悪く品のないミスランドを見てため息をつく。この先もしばらく一緒だと思うと頭が痛くなる。

 物資班が慣れた手つきで皆の為に簡易テントの設営を始めた。ただし彼らが同行できるのはここまで。飛竜に乗れないので当然だ。俺がサヤカに尋ねる。


「サヤカ、あいつはどうするんだ?」


 その先にはひょろっとしたくせ毛のガンダス大隊長。渓谷手前にある簡易駐留所の小屋に入っていく。とてもあいつが飛竜を倒せるとは思えない。


「うーん、どうでしょう? ガンダス大隊長が遠征に参加されるのは聞いたことがないので……」


 ならばここで待機か。俺はそんなふうに思った。



「ねえ、エリート。大丈夫……?」


 隣にいたココロが心配そうに俺に尋ねる。飛竜は自分を倒した者以外その背に乗せない。だから誰かと一緒移動することは不可能。まさに強者のみこの先に進める。


「まあ、何とかなるだろう」


「うーん、あっ、あの大きいの倒したら一緒に乗れるかな??」


 ココロが上空を優雅に舞う一体の白い飛竜を指さして言う。確かに普通の飛竜は人ひとりが乗れるほど大きさしかないが、その白い個体はその三倍はある大きさ。サヤカが慌てて言う。


「あ、あれは無理です!! リーダーの飛竜王と言って、群れの危機のみに動く上位種なんです……」


 なるほど、確かにあいつだけは全く別のオーラを放っている。ココロが残念そうな顔で言う。


「そっか、残念だな。あれならエリートも一緒に行けるかと思ったんだけど……」


「そうね! あれはちょっと無理っぽいかな~」


 いつの間にか隣に来ていたキャロルが頷いて言う。救護班の制服、腰には朱色のフレイムソード。腕組みをして飛竜を見つめる。


「お前、姫だとバレるぞ」


「大丈夫だよ~、これ、超絶効くんだから!!」


 そう言って耳にあるイヤリングを指でちょんと弾く。



「やあやあ、下等冒険者君」


 俺はまたその聞き覚えのある声を聞いて眩暈がした。銀髪のSランク冒険者ジェイル。パーティの女魔導士と共に笑顔で現れる。空を飛び回る飛竜を指さして笑顔で言う。


「飛竜どお?? ビビっちゃった?? ねえ、怖いでしょ~??」


「ジェイル、やめなさいよ。行くわよ」


 女魔導士の声も聞かず、ジェイルがココロに言う。



「ココロちゃんもどうかな~? 怖かったりする?? あいつはまぐれじゃ乗れないよ~」


「問題ないよ。私は実力で従えるから!!」


 強気なココロ。ジェイルが笑いながら言う。


「まあ、食われないように頑張ってね~。どうしてもって言うなら僕が協力してあげてもいいよ」


「え、普通に要らないけど」


 その言葉を聞いてジェイルの笑みが消える。



「あのさー、そっちの救護班の子もそうだけど、マジで舐めてんの? このクエスト」


 キャロルが答える。


「みんな真剣よ。あなたこそちゃらちゃらと人の節介ばかり焼いていないで、早く倒して来たら?」


「はあ? てめえ、たかが救護班風情が、このSランク冒険者ジェイル様になんて口きくんだ??」


 そう言いながらキャロルに近付くジェイル。微動だにしないキャロル。


「てめえ、このアマ!!!」


 ジェイルの右手が振り上げられる。俺は咄嗟に彼の前に立ち、その拳を片手で受け止めた。



 ドン!!


「ぐっ……」


 瞬時に発動させたイシスの石化。前回ほどの痛みはないが、それでも体はただの村人。衝撃を完全に消すことはできない。


「……痛ってえな、この野郎。何しやがった!!」


 石を殴った彼。多分理解できない痛み。怒りを表すジェイルに俺が言う。


「お前は一体ここに何しに来ている? 女と遊ぶためか?」


「き、貴様……」


 ジェイルがその両腰に付けた剣に手を掛ける。女魔導士が慌てて何かを言おうとした時、騎士団の方で大きな声が発せられた。



「全員、突撃!!! 飛竜を捕獲せよ!!!!」


 ついに始まった飛竜との戦い。ジェイルはちっと舌打ちし、文句を言いながら谷へと歩いて行く。キャロルが言う。


「本当に冒険者ってあんなのばかりね! 今度ランク昇格試験に『人格』の項目も追加するよう言っておこうかな?」


「そりゃいいかもな」


 俺も笑ってそれに答える。ココロが青き勇者の剣を抜き、皆に言う。



「さあ、行こっか、みんな! 怪我しないように!!」


 その言葉と共にキャロルとサヤカが谷へと駆け出す。


「エリートはまだここに居てね。私が終わったら一緒に手伝ってあげるから!」


 俺はそれに適当に返事をして谷へと駆け出すココロを見送る。悪いが俺は俺で何とかする。護る俺が、守られていては笑い話にもならない。俺はゆっくりと鉄の剣に手をかけた。

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