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勇者の護り、ココロのお守り。  作者: サイトウ純蒼
第二章「案外、この世界も悪くないかもな。」

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14.突撃! 天空の塔

 紫髪で、ふわっとした良い香りのするポニーテール。品の良い白い鎧にマント。腰には装飾美しい柄の剣。キャシーと名乗る美少女が、塔にやって来たココロに言う。


「良かった! ひとりじゃちょっと心細かったし、それに入り口さえも見つからないんだよね。ここ」


 キャシーはそう言いながら空を貫く天空の塔を見上げる。ココロが言う。


「あ、あの、私、ココロって言います。Dランク冒険者です。キャシーさんも冒険者なんですか?」


「私? う~ん、まあなんていうか、野良冒険者ってとこかな?」


「野良冒険者? ぷっ、何それ? おもしろ~い!!」


 キャシーの冗談にココロが笑う。冒険者には正規か非正規しかない。野良冒険者なんて言う言葉は初めて聞いた。キャシーが尋ねる。



「それでココロはどうしてこの塔へ? 腕試し?」


「ううん、違うよ。ほら、ここって幻の薬草があるって話じゃん。それを採りに来たの」


「幻の薬草?」


 不思議そうな顔をするキャシーにココロが言う。


「そうだよ。知らないの? この塔の最上階に何の病気や呪いでも解くって言う薬草が生えているの」


「うっそ~! 何それ、本当なの!?」


 ココロは逆にそれを知らないキャシーに驚く。


「え、知らないの?」


「知らないよ! 有名な話なの?」


「有名かどうかは知らないけど、ブルック村の言い伝えだって聞いているよ」


「ふ~ん、なるほど。焼き菓子は聞いたことあるけど、そんな言い伝えは知らなかったわ」


「そうなんだ」


 真偽が分からないそんな村の伝承より、やはり美味しい焼き菓子の方が有名。考えてみれば当然のことだ。ココロが尋ねる。



「キャシーは腕試しなの? じゃあ、強いんだ」


「強いかどうかは分からないけど、うーん、剣の鍛錬をしなきゃいけないんだ。本気で極めたいと思っているよ!」


 そう言って腰に付けた高価そうな剣に手をやる。そして同じく剣を持つココロに尋ねる。


「いい剣ね。ココロも剣使い?」


「ええっと、まあ結果的にそうなるかな」


「頼りにしてるよ!」


 キャシーはそう言って笑みを浮かべ、ココロの肩を叩く。


「足手まといにならないようにするね。じゃあ、行こっか」


「うん、でも行きたいのはやまやまだけど、入り口が見つからなくって困っているの」


 そう言って塔を見上げるキャシーにココロが言う。



「入口? あれじゃないの?」


「え?」


 ココロはそう言うと、ひとり塔に向かって歩き始める。


「よいしょ……」


 そして塔の()に両手を当て、一気に押す。



 ギギッ……


「え? うそ!! 開いた!?」


 キャシーが驚いた声を上げる。彼女にしてみれば何の変哲もないただの壁。なぜあそこが入り口だと分かったのか。飄々とするココロにキャシーが尋ねる。


「ココロ、あなたってもしかしてすごい人……、とか?」


「ぷっ、すごくないよ! ただの勇者に憧れる底辺冒険者。さ、行くよ!」


「あ、うん!」


 キャシーは開かれたドアをくぐり、ココロと共に塔内部へと足を踏み入れた。






 魔神界。そこは外敵のいない安全で平和な場所。人族の祈りを受け、神々が暮らす特別な世界。ただ、様々な思惑は蠢いていた。


「シュガルツ地区の勇者候補、ココロ・ホワンシュガーはどうなっている?」


 巨大な白亜の神殿。その中央で大理石のテーブルを囲み、純白の衣を着た老人が言う。それを囲むように座った者たちが答える。


「まだ発現はしておりません。ただゴブリンの魔王を討伐し、勇者の剣を入手したようでございます。アーグレイ様」


 アーグレイと呼ばれた老人が言う。


「担当はエリートか?」


 銀髪に銀縁メガネのイケメン、エリートの幼馴染であるレザウェルが答える。


「はい、エリート・ゴットラングウェイでございます」


「混血児か」


 一瞬、場を嘲笑するような空気が流れる。人族との混血。人材不足の魔神界ゆえ、エリートのような異端児でもその任務に就かされる。アーグレイが静かに言う。



「監視は怠るな。人族の血が混ざった者にどこまで使命が務まるか不明。しかと注意せよ」


「かしこまりました」


 神殿に集まった老いた魔神たちが一斉に頭を下げる。高貴な景観とは別に、ここには澱んだ空気に満ちていた。






「うおおおおおお!!!!」


 天空の塔に入ったココロとキャシー。襲いかかる魔物相手に剣を振り回していた。


 ザン!!!!


「ギャアアアア!!」


 ココロはキャシーの剣を見ながら思う。


(剣が燃えている? どういうこと??)


 キャシーが振るう剣、オレンジ色の刀身をしており、振るうたびに火の粉が舞う美しい剣。塔内は窓も多く明るいのだが、彼女の剣はそれ以上に朱色に輝いていた。




「キャシー、その剣って何なの? すごく綺麗」


 あらかた魔物を倒したふたり。剣を鞘に収めるキャシーにココロが尋ねる。


「これ? 綺麗でしょ? 宝刀フレイムソード。超レアアイテムなんだよ!!」


 そう嬉しそうに話すキャシーを見てココロも自然と笑みになる。本当に剣が好き。そんな気持ちがビシビシ伝わる。キャシーが言う。


「でもさあ、ココロの持っている剣もかなりやばくない? 柄に三つの星って私が知る限り『勇者の剣』しかないよ」


 ココロが嬉しそうに答える。


「へへ〜、分かる? 分かっちゃう?? そうなの、これ、勇者の剣なんだ!」


「やっぱり! すごいよ、それ! ねえ、どこで手に入れたの??」


「ええっとねえ、ゴブリン魔王倒して貰った」


 キャシーの顔が唖然とする。


「ええ? ゴブリン魔王を倒した!? うそぉ!! ココロってもしかしてめちゃくちゃ強いとか??」


 ココロがドヤ顔で答える。


「強いよ、強いよ。うんうん、もっと褒めて」


「これは驚いた。魔王倒す強さなのに、冒険者ランクDって、これまた驚き! ギルドに抗議しなきゃ!!」


 驚いたココロがややトーンダウンして言う。


「いや、私まだ駆け出しで……、ついさっきDランクになったばかりだし、それにゴブリン魔王もなぜか死にかけていたのを斬っただけで……」


「そんなに謙遜しなくていいよ! 魔王を倒したのは事実だし、勇者の剣って誰でも使えるわけじゃないんだよ! やっぱすごいよ、ココロ!!」


「そ、そうかな……? 私って、やっぱりすごいのかな……??」


 褒められ、満更でもないココロ。確かに最近頑張っているし、それに対する成果や評価も出て来ている。本当に勇者も夢ではない。

 そう思っていたココロたちの前に、その招かざる客が現れた。



「ウグルルルル……、汝らは塔を荒らす侵入者か……?」


 振り返るふたり。そこにはいつ現れたのか、巨大な角を生やした牛の魔物ミノタウルスがこちらを睨んでいた。手には巨大な斧。身体中には多くの傷跡。片目も潰れてしまっている。キャシーが青い顔で言う。


「うそ、ミノタウルスって、マジ……」


 その巨体、威圧感からして間違いなく隊を組んで討伐するレベル。フレイムソードを構えたキャシーが汗を流しながら言う。


「どうする、ココロ? このまま退却って選択肢も決して悪くはないと思うけど……」


 想定外の魔物の出現に戸惑うキャシー。だがココロは勇者の剣を向け、それに答える。


「勇者は逃げない。ルキアと約束したんだよ。絶対この塔を登り詰めるって!!」


 同時に解放されるココロの強い覇気。スキル【高速移動】発動。勇者の剣を振り上げたと同時に、その姿が消えた。






(!!)


 馬車に揺られていたサヤカが顔を上げる。そして見つめる地平線の向こう。異変に気付いた俺が尋ねる。


「察知したのか?」


 サヤカのスキル【索敵感知】発動。遠く離れた場所のココロの覇気を掴み取る。赤い髪を風に揺らしながらサヤカが答える。


「はい! ようやく引っかかりました!! 場所は、ええっと……」


 サヤカが一度目を閉じ、すぐに地図を開けて位置を確認。俺に報告する。



「場所は、ここ! ブルック村の郊外、天空の塔。ここに、ここにココロはいます!!」


 腕組みをしながらその報告を聞いていた俺が答える。


「上々だ。では、ゆくぞ! 目標、天空の塔っ!!」


「はいっ!!」


 サヤカもそれに敬礼して答えた。

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