真夏の光線
クルマのクラクションが聞こえた。部屋の窓から下を覗くと、ライアンが大きく手を振っている。樹里は急いでバックと、そして用意していた紙袋を抱え、ドアにロックをかける。すると、ライアンが現れ、樹里のバッグをヒョイっと持ち上げた。そして、クルマに戻ると、今度はシャーロットの家へ。クルマで15分ほどの距離だ。クルマを路肩に停車させ、ライアンがインターホンを押す。樹里もクルマを降りて、シャーロットのお迎えに行ったのだが、玄関に出てきた彼女は浮かない顔をしていた。
「アレックが熱を出しちゃって…」
驚いたライアンは、急いで部屋の中に入ろうとしたが、シャーロットがそれを阻 (はば)んだ。
「あの子なら大丈夫。それより、ジュリをお願い。郊外で、おいしい空気を吸ってもらわなきゃ」
シャーロットは、準備していた食材の入ったバッグをライアンに渡した。
「そうだな…。それじゃ、何かあったら、すぐ連絡して」
そう言って、ライアンはシャーロットの頬にキスをした―。
「残念だわ。アレックに会うの楽しみにしてたんだけど…」
樹里はアレックに渡そうと思っていた手作りクッキーをパクッと一口食べた。今朝、急いで焼いたクッキーだ。
「まぁ、僕だけじゃ物足りないだろけど」
と、ライアンは苦笑した。
「そんなこと…。あ、これ食べる?」
樹里はライアンの視線に入るように、クッキーを差し出した。
「あぁ、ありがとう」
ライアンは手に取ると、運転しながらパクパクとほうばった。
街を抜け、クルマを走らせること2時間。森の中のキャンプ場に到着した。バンガローがいくつも並んでいて、広場には大勢の人が集まっていた。樹里が周囲を見渡していると、マットの姿を見つけた。そして、マットのとなりには、綺麗な女の子が寄り添っていた。きっとセシルだ。シャーロットの妹・ジェシカも一緒のようだった。樹里は視線を逸らすと、ライアンの方を見て「何が始まるの?」と尋ねた。すると、
「僕たちはサマーキャンプでボランティアをするんだ」
「ボランティア?」
樹里は不安そうにしている。
「大丈夫だよ。相手は子供だ。きっと楽しくなるさ―」
参加者は各国から集まった6歳から16歳の子供たち。そして、ライアンが担当するのは、8歳から10歳のグループ。その中には日本から参加している女の子の姿もあった。午前中はハイキングコースを散策して、ランチタイム。そして、午後はみんなでウェルカムパーティーの準備する…らしい。
まずは、自己紹介から。みんな、元気に挨拶をしている。そして、日本人の女の子。「…私の名前は梨奈 (りな)。8歳です」と、上手に英語で挨拶をしていたので、樹里は驚いた。
ハイキングでは子供たちの監視役。子供たちは、とにかく元気がいい。目を離すと、どこに行くかわからない。ライアンは大きな声を出して男の子を追いかけていた。森の奥に進むと川が流れていて、川遊びも出来るようだ。これには、みんな大喜びしている。樹里は川岸にちょうどいい大きさの岩を見つけて腰を下ろした。そして、目をつぶり森林浴を楽しんだ―。




