楽しいイチャイチャ終了
6/21 (水) 放課後 喫茶店
「うん、うまいっ!
この濃厚なチョコソースが生クリームとアイスの単調さにアクセントを加え、コーンフレークの層も柔らかな食感と甘さに飽きたところに丁度出てくるジャストタイミング。
底にもチョコソースの層がたっぷり詰まっていて、最後にきてコク深い濃厚なチョコも楽しめるつくり。まさにパーフェクト!」
ふと前を見ると、宮ノ本が呆れ顔でこちらを眺めている。
「は〜。あんたみんなといるときは静かなのに、2人になると結構おしゃべりよね」
「なんだ、静かなほうがよかったか? 俺は別にどっちでも構わんぞ」
「……」
「……」
「……」
「……なんかしゃべんなさいよ」
「ほれ見たことか。無口同士が無口になった結果、気まずい空気が流れるだけだろうに。
じゃあこんどはお前がなんかしゃべって、この重苦しい場を盛り上げてみせろ! 見せてみろ! 貴様のトーク力を!」
「……え?」
焦った表情の宮ノ本。
クックックッ、わかっているぞ、貴様のコミュ力の無さを。さー困った困った、みるみる顔が赤くなってゆくぞ。デュフフッ、たまらんなー。
普段はクールにお高くとまっているが、所詮きさまもボッチ属性。こちら側の人間なのだよ。そう、貴様の弱点は手に取る様にわかるぞ。
さあ、俺の前でその困り果てた涙目で悶える姿をたっぷりと晒してみろ。泣きながら『もうゆるしてぇ〜』と最高にエロい表情でお願いしてみせろ!
「……あ、雨……ふ、振ってるわね……」
「ああ、梅雨だからな」
「……あ、あなたこないだもチョコレートパフェ……頼んだでしょ……」
「ああ、好きだからな」
「えーと……えーと、他にはー……」
こちらのそっけない返事に困った宮ノ本は完全にスプーンを置き、目を泳がせながら耳まで真っ赤にしている。
なぜ、いつものように俺につっかかってこないのか。それはこいつが『超』の付くまじめ人間だからに他ならない。
『お前が何か喋って盛り上げろ』と言われたことで、自分1人でやらなければとゆう変な義務感に駆られ、しかも普段の何気ない会話なんて緊張で吹っ飛んでいる頭では意識してできるはずもない。
それでもコイツは一生懸命考え、場を盛り上げなければと必死だ。そーゆう健気な女子は超カワイイ!
いつもの自信に満ちたメガネの奥の切れ長の目は涙をこぼれ落ちそうなくらい溜め、どうしようどうしようと今にも泣きそうだ。
「困った顔もかわいいぞ、宮ノ本」
素直な感想と共に、さすがに可愛そうになったので助け舟を出してやる。
「なっ……ば、ばかっ! ふざけないでよぉ」
困りきった表情が、途端に安堵のものへと変わる。
本当に泣く寸前だったのか、メガネを外し、ポケットからハンカチを出して目頭に当てる。
これには今度はこちらが焦る。
「わっわっ、ゴメンゴメン宮ノ本。ただの冗談だって。まじめにやるこたーないんだよ」
「だって……あんたがトーク力見せろって激おこぷんぷん丸だったからぁ……」
「そ、そこまでは言ってないですよー。つーか、宮ノ本なんでそんなギャル語使ってるの?
ま、まあお前が口下手なのはよくわかったから。もうトーク力見せろもぷんぷん丸も今後一切なしだから、なっ、なっ」
「……ホント?」
赤くなった目でこちらを伺ってくる。メガネを外した顔も美しく、普段見たことのないその不安そうな表情も思わず抱きしめたくなるほどに可愛い。
「ほんとだって。ほーら、両子ちゃんかわいいからオジサンのチョコ味のやつ一口あげるよー。はい、あーんして」
チョコレートパフェのチョコソースをたっぷり載せたアイスとクリーム部分をスプーンですくって、彼女の口元へ差し出す。
「あーん」
宮ノ本もこの流れに素直に乗り、おちょぼ口を開けて僕のスプーンを咥え込む。
「あむうぅ、んっ……うん、おいしー」
ご機嫌両子ちゃんがサイコーの笑顔を見せる。
ぐぉおおっ! 宮ノ本がこんなにカワイイ子だったとは! 卑怯! ギャップ萌え卑怯っ!
メガネを掛け直した宮ノ本が、今度は自分のイチゴパフェをすくって僕に差し出す。
「じゃあ、次はあんたの番よ。ほら、口あけて」
言葉はぶっきら棒ながら、そのうれしそうな声と笑顔はまんざらでもないようだ。
目の前に出されたスプーンの上にはストロベリーソースたっぷりのアイスが盛られ、なによりもそのスプーンは先程まで宮ノ本が口に入れていたものだ。
メガネの巨乳美女と間接キッスとゆう最高のスイーツに、一気にかぶりつく。
「あむっ。んむむっ……うんまい! イチゴもなかなかだな」
傍から見たらまんまバカップルの言動も、貸し切り状態の店内では気兼ねなくできる。
「でしょでしょ。ほら、もう一口」
「じゃあ、宮ノ本もいっしょに」
テンションが上がった僕らはお互いにパフェを『あーん』し合うとゆうドいちゃいちゃをやらかすが、こんなかわいい子とこんな楽しいことを止められるハズがない。
「はむぅ」
「あむぅ」
2人が互いのスプーンを咥えた瞬間、”カランカラン”と店の扉が開く音がし、僕と宮ノ本はビクッと驚く。
店の奥側の席に座っていた僕は、入り口から入ってきたお客には丸見えだった。
やばい、見られた。知ってる人だったらどうしよう。この状況は誤魔化せるか? 正直キツいぞ。
いや、この人気のない店でそんな知り合いと鉢合わせるなんてかなり確率の低いことだ。それにここは学園関係者だけじゃなく、ここで働く作業員や商店区の従業員も来るんだ。そんな知り合いにばったり会うなんて奇跡はないない、ありっこない。
……ないよね? ぜったいないよね?
目の前の宮ノ本も僕のスプーンを咥えたまま、冷や汗を流している。そのままお互いゆっくりとスプーンから口を引き離し、何事もなかったように見つめあったままモグモグする。
それとなく扉のほうをチラッとみると、そこには笑顔で右手を振る養ちゃんと、その左腕にしがみつく見たことのない制服姿の美人が立っていた。
「やあ、普ちゃん」
「あぁ、養……ちゃん……」
引きつった愛想笑いで答えた声は、消え入りそうなほど声量のないものだった。




