2枚目のバリア
6/16 (金) 午後 第2室内模擬戦場
「じゃあ柵平君、落としてくれ」
これは意外だった。てっきりダガーで僕を攻撃してくると思ってたんだけどな。
でもなんで呼刀くんはギブアップしないんだろう? まさか死ぬつもり……は無いよね。
表情を見ればわかる。諦めではなく、何かを決意した表情。
自分の覚悟を確かめようってことかな? そういうことなら僕が止めるわけにもいかないだろう。ご要望どうり落ちてもらおうか。
「いいんだね、呼刀くん」
「ああ、やってくれ」
どうやら本気のようだ。
「じゃあいくよ」
言って、彼の足場のバリアを消し去る。
四つん這いの呼刀くんが重力に従って自由落下をはじめる。
観客席からは女生徒の悲鳴が聞こえてきた。
呼刀くんは途中で上体を起こし、立った状態で足から地面へと落ちていく。
地上まであと1メートルのところで”ぐにゅんっ”とバウンドし、再び上空へとわずかに押し戻されてからドサッと地面に尻もちをつく。
ビィーーーッ
と、試合終了のブザーが鳴る。
どうやら霧真者先生はボクの2枚目のバリアに気付いていたようだ。
ピースのバリアは複数枚同時に張ることができる。呼刀くんが落ちたのは外側のバリアだ。
あらかじめ地上から1メートルほどの位置に、2枚目のお皿状のバリアを張っておいた。理由は2つ。
1つは何かの拍子で呼刀くんが落ちたときの為。彼が相打ち狙いでボクを攻撃したり、内側のバリアから足を踏み外したときのためにクッション代わりに張っておいた。
膜状の柔らかいバリアの特性が活かせる我ながらナイスなアイデアだ。とはいえ呼刀くんが自分の意志で落ちるのは予想外だったが。
もう1つは内側のバリアが消えてしまってもボクが浮いていられるようにだ。ピースの浮遊能力はバリアの予備能力だから、バリアがすべて消えてしまえばボク自身も浮いていられなくなる。
まあこの高さなら落ちている間に新たにバリアを張ることも可能だが、念には念を入れてってやつだ。
ゆっくりと地上へ降りて行き、尻もちをついたままの呼刀くんに手を差しだす。
「呼刀くん、怪我しなかった?」
バリアをクッション代わりに使うのはこれが初めてだったため、結構ドキドキものだった。
「あ、ああ……ありがとう……」
ボクの手を取り、立ち上がった呼刀くんはまだ状況を理解してないようだった。
2枚目のバリアに落ちたことを説明すると、納得しながらも少し複雑な表情を見せた。
さすがに悪いことしたかなと思ったが、あのまま地面に落下させて彼を怪我させることはしたくなかった。
観覧席に視線を移すと、普人くんとみんなが笑顔でこちらに手を振っていた。
普人くん、ボクのこと褒めてくれるかな? もしかして頭なでなでしてくれちゃうかも。
ヤバい、想像しただけでニヤけてきてしまう。




