気の置けない仲間
僕はなんでこんなことをしているのだろう。最近自分でもわからないうちに余計な行動をすることが多くなった気がする。
相棒の女性捜査官がいたら、『普人、あなたつかれているのよ』と言われているところだ。
目の前のごっつい先輩は、信じられないといった目でこちらを見ている。
だが、生粋のイイ人だったようですぐに我に返り、怒りも嫌な顔もせず、大人な対応をしてくれた。
「ああ、僕もちょうど手持無沙汰だったんでね。同席してくれるなら助かるよ。
そういえばまだ君の名前を聞いていなかったね。僕は3年の堀田っていうんだ。よかったらでいいんだが、きみの名前をおしえてもらえないかな?」
大きな体を小さくして、先輩はやさしい口調ではにかみながら尋ねる。
「これはすみませんでした、堀田先輩。僕は1年の小林 普人っていいます。1年に小林は2人いるんですけど、僕は普通の人って書いて普人です。よろしければ覚えてやってください」
コロッケバーガーの袋を破りながら、僕は自己紹介した。
「ああ、君がウワサの小林君か。あ、いや、これは失礼。3年生の間では君は結構有名人でね。僕も実はどんな人間かすこし興味があったんだよ。なるほど、君がねー」
堀田先輩は妙に納得しながらホットドッグにかぶりつく。
どういうことだ? 僕が3年の間で有名? これはイヤな予感しかしない。また生意気な1年とでもゆー根も葉もない悪評が広がっているのだろうか。
「あのー、もしよろしければ、なんで僕が3年生の間で有名なのか教えていただけませんかね、堀田先輩」
「いや、判定試験で2年の節家君を倒したって言うし、このあいだも1年で最強っていわれてる万屋さんに、試合では負けたものの実際は圧倒したってはなしだしね。
それに、火田君がよく君のことをはなしているよ。『普ちゃんは僕より強くなるかも』ってね」
火のないところに何とやらと言うが、火の元が養ちゃんだったとは……
養ちゃんはやさしいし何かと助けてくれるが、昔から僕を買いかぶり過ぎる傾向がある。悪気はないんだろうけどそれがまた厄介だ。
模擬戦トップの人間が強いと言えば、周りは本当に僕が強いと思い込む。当然それをおもしろくないと感じる人間も出てくるし、腕に覚えのある先輩たちは僕と対戦を希望するだろう。
めんどくさいことにならなきゃいいけどな〜。ムリだろうな〜。
「堀田先輩は火田先輩と仲いいんですか? ……あ、べつに火田先輩にチクろうとかそーゆうつもりは全然ないですから。オフレコですし、べつに答えなくても大丈夫ですからっ」
これで仲悪いとかいわれた日にゃ、死ぬほど気まずい時間を過ごすことになるなぁ。後先考えずに余計な質問をしてしまった。ボッチが慣れないことするもんじゃない。
「ああ、火田君とは仲良くさせてもらってるよ、安心してくれ。唯一の親友と言ってもいいくらいだ。まあ、実際友達が少ないからこうやって1人で食事してるんだがね」
セーフ。しかし堀田さんはけっこうやさしそうだから友達多いんじゃないかと思ってたんだが。まあ謙遜してるだけかもしれないけど。
「いやいや、それをいったら僕や向こうのカウンターにいる人たちも同じですよ。よっぽど人付き合いの上手い人間じゃなけりゃ、誰とでも仲良くなるなんて無理な話です。
……まあ、僕が言ってもボッチの負け惜しみにしかなりませんけどね」
苦笑いを浮かべながら1人グチる僕に、先輩がフォローを入れる。
「まあ確かに、この学園の全校生徒は40人にも満たない小さな集団だ。普段顔を合わせるクラスメイトならその半分。毎日少人数で生活していれば、それぞれのイイところもヤなところも見えてくる。
そんな小さな集落のなかで、気の置けない仲間が1人でもいればそれはかなりラッキーさ。友達が多い人でも、それは多く見えるだけかもしれないね。
おっと、これは火田君からの受け売りだけどね、ははっ」
さすが養ちゃん、いいこと言うな。それにそんなことを堀田先輩に言うってことは、養ちゃんがかなりこの人を信頼している証拠でもある。
「そうそう、1つ君に聞いてみたいことがあったんだ。君は入学して間もないのに既に2度も強敵と戦っている。しかもどちらも噂になるくらいの活躍だ。
きみは人と戦うことが『楽しい』と思えるのかな? それとも強い相手とはやりたくないと思ってる方なのかな?
あ、もちろんこれはオフレコだし、答えたくないなら別にかまわないよ」
コロッケバーガーを丁度食べ終わった僕は当たり障りのない回答をすべきかとも一瞬考えたが、ここは正直に答えることにした。
養ちゃんの友人ということもあったが、なにより堀田さんが『いい人』だと自分で感じたからというのが大きかった。




