握手
空が茜色に変わり始めたころ、4人と5匹のたのしいティーパーティは惜しまれつつもお開きとなった。
まあまたいつでもできる訳だし、あまり長居しても万屋さんに迷惑がかかってしまう。
宮ノ本は残って後片付けを手伝うというので、僕とサックで先にお暇することとなった。
「万屋さん、今日はごちそうさまー。宮ノ本さんと握徒もまたねー」
玄関口でサックが2人と1匹に手を振る。
ザックとバランはあんまりうるさいんで宮ノ本が帰還させてしまった。
「今日はほんとありがとう万屋さん。宮ノ本もありがとう。楽しかったよ。ああ、もちろん握徒もな」
「おう。また遊んでやってもいいぞ、普人」
主に抱えられたチビ握徒がふんぞり返って僕に答える。
「こら握徒、お行儀よくって言ってるのに。ごめんね、私こそありがとう普人君。あの……普人君って呼んでもいいかな」
はにかみながら万屋さんが言う。
「ああ、もちろん。クラスに小林が2人いるんだ。名前のほうがなにかと便利だしね」
「うん。ありがとう普人くん。エヘヘ」
握徒を抱いた万屋さんが照れ笑いする。
宮ノ本は無言で手を振るだけだが、機嫌はよさそうだった。
「じゃあ、また学校で」
僕がサックと一緒に家路につこうとすると、
「あっ、普人くん!」
万屋さんが慌てて呼び止める。
「握手してもらってもいいですか?」
差し出された手に、彼女とはじめて出会ったときのことを思い出す。
あのときは僕から同じこと言って断られたっけ。
差し出された右手に自分の右手をやさしく重ね、彼女の手をしっかりと握り締める。
あたたかく、やわらかいその手の感触を、もう遮るものは何もなかった。
夕焼けにかがやく万屋さんの笑顔を、僕は忘れることはないだろう。




